第13話 【略奪】
長期休暇も明け、私達は最終学年の2年に進級した。
2年からは各専攻での授業がより専門的かつ実戦的になる。
剣術や体術では現役の騎士団との模擬戦などを交え、魔術や錬金術では中上級魔術やより具体的な付与魔法などの講義や訓練が行われる。
そして戦術では帝国重鎮の幹部らによる戦況などを想定したディスカッションなどが行われる。
そんな中ミューの実家から1通の手紙が届いたという。
なんでも、ミューの実家の商会で見習いで働いていた、元ミューの使用人の獣人族の女の子が何やら大きな失敗をしてしまい、商会に居場所がなくなってしまったとの事だ。
それで、商会のイスニアまでの荷物を運ぶついでにこちらに行かせるので、ミューに面倒を見るように、との事だそうだ。
その荷物の売買で得た資金を当面の生活費に充てるようにとの指示も併せて指示されていた。
しかし、予定の日になっても到着しない事からミューが心配そうにしている。
「護衛の冒険者も付いているらしいので心配ないとは思うのですが、あまりにも遅い気がします…」
「ミュー、明日の休日は迷宮探索は中止にして、行けるところまで探しに行ってみよう」
みんなも同意してくれた。
私達は翌日、ルートを反対側から探しに出発した。
特に変わった様子もなく森の中に入ったところで、カイが
「アルファ様、ルートから外れたところに探索に何やら当たりがあります。敵意…ではないようですが、場所的にもおかしな場所です」
悪い予感がした。
「すぐに行ってみよう」
そこには壊れた馬車と馬の死骸が…
「こ…これは…この馬車は私の実家の商会の馬車です…」
ミューが青ざめる。
「けど誰もいない…荷物もないが…カイ!どう見る?」
私はカイに指示したところ
「そこに川があります。なんらかの理由で川に流されたのかもしれません。この馬車はおそらく盗賊に襲われたと思われます…」
「よし!すぐ川下を捜索開始だ!」
ほどなくして少し開けた川辺に倒れている獣人族の女の子を見つけた。
「アモル!アモル!大丈夫??」
「ミュー!落ち着け!息はある。すぐに君の回復魔法で助けるんだ!」
落ち着きを取り戻したミューの回復魔法で、アモルと呼ばれるその子は目を覚ました。
「ミ…ミュー様…」
「何があったのアモル?」
「あぁ…助かったんですね…私は…」
「とりあえずイスニアまで戻って宿で休ませるんだ。急ごう!」
私達は転移で街に戻った。
体力も戻りつつあったアモルの話では…
あと少しでイスニアまで到着する時に突然盗賊が襲ってきたそうだ。
しかし護衛についていた冒険者の4人の態度が急変し、アモルは驚きつつも命の危機を感じ付近の川へ飛び込んだのだそうだ。
つまり、盗賊と護衛がグルになって彼女を殺害し商品を頂く算段だったのだろう。
「すみません、すみません。私本当はこの商品の利益でこちらで生活の足しにするはずだったのに…」
アモルは泣きじゃくりながら話した。
彼女の命を救ったのは、彼女が獣人族の猫科であった事から危機察知能力と身軽さがあったからであろう。
私はみんなの顔を見た。みんな頷く。
「アモル、僕はこのパーティーのリーダーのアルファだ。ミューの元使用人という縁もあるけど君の面倒は僕らがみるよ。当面の生活費はパーティーの資金から援助するから心配しなくていい」
「でも、私には返せるアテがないし…」
「君は見習いとはいえ商人なんだろ?じゃあ初期資金は僕らが投資するから、このイスニアで商売をして稼いで返してくれ。どうだい?無償の援助じゃない投資だ」
アモルはまた大粒の涙を浮かべ泣きじゃくった。
「カイ、この事件…至急調べてくれ」
「かしこまりました。生け取りにしますか?…処分しますか?」
「とりあえず、商品の現在地が知りたいから、それが優先だ。犯人グループの素性さえ分かればどう対処するかはそれからでも遅くない」
「はっ!」
カイは早速夕暮れの街中に消えた。
私はアモルに商会での失敗の内容と略奪された商品について尋ねた。
事の発端はなんとミューであった。
ミュー達の祖国、プラディア王国のとある貴族の息子がミューに惚れていたものの、ミューが国を離れた事から事件は始まった。
その貴族の息子はミューの元使用人だったアモルに近づき、ありもしない大取引を持ちかけた。
そしていざ納品日になった際、商品が違うと言い出し、大損害を負ったと抗議してきたのだ。
さらには、この補填としてミューの嫁入りを商会側に要求してきたというから驚きである。
ミューの父親は元々取引があった貴族だったため、多額の損害賠償金とアモルの国外追放という形でなんとか収めてもらったらしい。
詳しい内容が手紙に記載されていなかったのは、どこかで手紙の内容が漏れることを恐れてのことと思われた。
そしてアモルが積んでいた荷物は、かなり高価なガラス細工の品々や貴金属で、イスニアの貴族に販売する予定だったらしい。
いよいよ早急に商品を回収しなければ、イスニア貴族への信用も失ってしまう。
とりあえずカイからの報告待ちとして、私達はアモルに飲食できるだけの金銭を渡して宿を後にし寮へと戻った。
やはりどう生きるにしても力は必要だと痛烈に感じるとともに、これまで感じたことのない怒りの感情が私を包んでいた。




