逃避行の夜
カクヨムにも連載しています。
跳躍時計の長針を2回まわし秒針を3回まわしてからダイヤルを4時43分にした。秒針が27秒の時リューズを回した。
その瞬間視界は瞬く間に暗闇に包まれる。
体は宙に浮いた感覚無重力に近い。
少しして小さな光が無数に現れる。まるで星のように光り輝く。
すると無数にある光の中からとてつもない光が放たれる。視界は真っ白で何も見えない。
気づくと、住宅街が広がっていた。あたりは暗く深夜であった。
(誰もいないよね…?)
辺りをキョロキョロ見渡す。周囲は暗く人の気配を一切感じさせない雰囲気だった。
(深夜だからって住宅街に飛ぶのはあまりにリスクがありすぎる…。どうしたんだろう私…)
いつもなら理を破るのを恐れて誰もいない森に飛ぶはずだった。
(そんなことより…トーヤはどこにいるの?早く見つけないと。)
深夜の住宅街を照らす星、静かに頬を冷たく吹き抜ける風に肌寒さを感じながら当てもなくただ歩いた。
しばらく歩くと大通りに出た。
ブゥーン!ブゥーン!
クラックション?エンジン音?が深夜の街に爆音で響き渡る。
暴走族だ。
音が大きくなってくる。
(こっちにきてる……??)
すぐさま目の前の角に曲がる。
(変に絡まれても困るだけ……)
面倒だから避けた……本音は少し怖かったから。
しばらく歩いた。
狐面に飛ばされたあの地下街ならもしかしたら…!って思い地下街へと歩き続けた。
街には不気味な程人と会わない。
駅周辺に来た。何やら人影が沢山ある。
(警察…?)
辺りを回す。
見覚えがある。
(ここは…私達が逃げてた場所だ…)
奥には警察が大量にいる。
何やら制限をかけて周りを取り囲んでいる。
(あれは…私のせいで死んじゃった人……。)
(私が街中に逃げたせいで巻き込んだ…。)
体中が重くなってくる。
あの時は冷静だった。逃げるのに必死だったそれに1人じゃなかった。でも今は……独りだ
心が重い、足が動かない。
壁に寄っかかる。
気持ち悪くなる。
けど、足を一歩前に出す。
(このまま…じゃダメ。悩んでなんかいられない…!私にできることをやらないと!)
おそらく死体があった場所に通り際に手を合わせて私は歩いた。
(ごめんなさい…)
もう少しで警察がいるところから抜け出せそうな時に前から人が現れた。
「君。今1人?」
目の前に警察が歩いてきた。
「子供がこんな時間に出歩いちゃいけないでしょ。とりあえず保護者と学校名を教えて」
(まずい…すごくまずい。)
答えられる訳がないこの世界に私と言う人間は存在しないのだから。
「え…あっ…いえ私は刑事です…」
またこの嘘をついてしまった。
「スーツ着てるとはいえどう見たって子供だよ」ね。嘘をつくのは良くないよね。」
(やっぱこの嘘絶対通じないよね……。)
……沈黙することしかできない。
ビビ。ノイズ音が警察の腰から鳴る。
トランシーバーの音だ。
「もしもし聞こえるか。殺人容疑者である破斬りトーヤと思われる人物が病院近くの道路で目撃された、」
(トーヤが殺人…!?)
「なに!」
警察がやり取りに夢中になっている。
逃げるなら今しかない。
シュタ。
即座に腰を落とし目の前の警官の死角に右足を出し瞬時に左足を出す。警官は反応できていない。全力で目の前を駆け抜けた。
「おい!待て!」
振り返る。
警官が気づいた時にはもう距離があった。
警官は追ってくる気配はない。
目の前の補導より指名手配犯の方がよっぽど重要だ。
しばらく走る。
警官は見えなくなった。
(さっきの話……おそらくトーヤは濡れ衣…。それよりも病院付近で見かけたの…?)
立ち止まる。
トーヤの行動を振り返る。
八百屋でりんごを買った。その後、病院に向かった。入院している妹に届ける為だったから。
トーヤの性格なら妹に会いにいくはずだ!
(そうか……!妹に会いにいったんだ……!)
(急ごう……警察より先に行かないと!)
◇
病院付近の道路にて。
ウーウー。
(サイレン音が近いな….通行人に顔見られたから?クソっ。)
(てか殺人容疑ってなんだよ。殺ったのは篠原だろ!)
(ていうかルナはどうなった?俺が狐面に飛ばされて平気なように無事なのか…?)
俯いて早歩きをする。
目的地は妹がいる病院だ。
(どうせ捕まるならせめて最後にサヤに会うんだ!)
(…いや何弱気になってんだ。俺に濡れ衣を着せた篠原をぶちのめす。それだけだ。)
目に決意がみなぎる。
(だが、サヤからやる気をもらう。負ける気はねぇが)
病院が見えてくる。
ウーウー。
がサイレンも大きくなる。
走る。
冷や汗が出る
とにかく走った。
反対方向に警察らしき人物がいる。
鼓動が早くなる。
冷や汗も出てくる。
入り口が見えてくる。
自動ドアだ。
(クソっ。この時間じゃ開かない!!)
ウイーン。
開いた深夜なのに。
(……??ラッキーってことにしとくか。)
警察に見られてはいなかったが付近にいるのは確実にバレている。
急ぐほかない。
深夜の病院は真っ暗だった。
(誰もいない…当たり前か。)
スタスタ。
足音をできる限り消し妹の病室に向かった。
(8階か…少し遠いな。景色を見てほしいと思って選んだが…。)
足音を極力立てずに僅かな灯りを頼りに駆け抜ける。
非常用階段を見つける。
中は非常用出口の緑の灯りが不気味に照らしていた。
階段を駆け上がる。
何事もなく無事8階に着いたが流石に息が荒くなる。
(流石に8階ノンストップは疲れるわ)
幽霊が出てきてもおかしくなさそうな廊下だ。(ここを右に曲がってすぐそこだ。)
妹の病室である8014の部屋の前に着く。
ガラガラ
扉をゆっくり開ける。
中には奥のベットでぐっすり眠っている赤毛の少女がいる。
起こさないようにゆっくり近づく。
ベットの隣にある椅子に腰をかけてる。
「ごめんな…何もしてやれなくて」
寝ているサヤに呟く。
ガタ。
不意に後ろから気配を感じて振り向く。
「ここに来ると思った…」
「誰だ。」
暗くて顔が良く見えない。
トコトコ
近寄ってくる。
月の光でその姿を表す。
黒髪で肩まで伸びた髪の毛先クルンとはねている。そして年齢不相応なスーツ姿。
「…ルナ無事だったか。」
「う、うん。トーヤこそ」
ルナが寝むっているサヤを見る。
「そこで寝ているのは妹…だよね?」
「ああ。妹のサヤだ。」
ルナが俺の顔とサヤの顔を交互に見る。
「…似てるね。」
「似てるか?」
「うん。」
少し赤がかった髪と鋭い眉が似ていると言えば似ているがそこまでではない。
「サヤ…さんは病気なの…?」
間が空く。
「治らないの…?」
「治療法は…………ない」
トーヤは拳に力を込めて握った。
「……ごめん。」
「諦めたわけじゃないサヤは毎日必死に頑張っていて見舞いをするたびに勇気がもらえる。いつかサヤが病気に必ず勝つ。」
「絶対勝てるよ…!」
ピーポーピーポー!
(パトカーの音か…‼︎)
慌てて外を見る。
病院の入り口を囲うようにパトカーが止まっている。
(自動ドアが開いたのは俺を閉じ込めるためか?…意味がわからなねぇ。)
ルナが少し取り乱している。
「そうだ…トーヤは指名手配されてた…。」
「どうする…トーヤ…?」
「どうするって一緒に逃げるのか??」
「そうだけど…?」
さも当然のように言うな。
「…それでいいのかよ」
ルナは指名手配されているわけでもない。俺といるメリットなど存在しない。
何を考えている。
「トーヤはあの狙撃手を倒そうと考えているでしょ…?」
「なら、私がいた方が絶対いい。」
「そりゃそうだが…」
ルナは見た目に反して”篠原”と戦えていた。
それに心強い。
言葉に詰まっているとルナが補足するように続けた。
「それに私…あの狙撃手を許せない!!」
月光によって照らされたルナの空色の瞳に覚悟が宿っていた。
「俺もだ。」
(正直ルナが何者かは知らないが信用できるそれだけは確かだ。)
2人が病室を去ろうとした時ギィギィ、
ベットが軋む音が静寂を切り裂いた。
「待って、にぃ。全部聞いてたよ」
眠っていたはずのサヤが話しかけられた。
「…聞いてたのかサヤ。」
「もちろんだよ。最初からぜーんぶね。
にぃが指名手配されてんの笑えてくる。
何したの?」
サヤは小馬鹿にするように笑った。
「いや、それは…」
「別に言わなくていいよ。アーシはできる妹ですから」
「引き留めてごめんよ。警察が来てるんでしょ?早く逃げないとでしょ。」
「ああ。悪いサヤ俺たちは行く。全て終わったらまた会いに行く。」
「行ってらっしゃいー」
サヤに背中を見守られながら病室を去った。
サヤは外を見る。
(にぃが来なくなったら本当に暇になっちゃうじゃん。クソ親は入院費払ってくれない上に見舞いすら来ないし…)
星々に手を伸ばす。
(…………寂しいよ。)
ガタガタドタドタ。
非常用階段を勢いよく降りる。
「正面入り口は無理だ。裏口を探す。」
「わかった。」
1階に着く。
ドアを開ける。
静かに廊下を走る。
角を曲がると正面入り口が見える。
案の定、正面入り口は警察が見張っている。
「迂回するぞ。」
「うん。」
迂回して裏口を探す。
(あれか!!)
裏口が見えてくる。
音を立てずに歩く。
正面に裏口の前に左へと続く道がある。
そこに警察と看護師が話している。
後ろを通らなければならない。
幸い警察が後ろを向いて看護師がこちらを向いている状態だ。
(あれならいける。)
シューー。
俺がスライディングで死角まで行った。
(今だルナ。)
アイコンタクトで伝えた。
シューー。
ルナもスライディングをする。
「行こう。」
ルナがそう言い裏口に向かって静かに歩く。
ドアに手をかける。
「この扉を守っておけば閉じ込められるのに…誘導されてるの…?」
ルナ急にそんな事を言い出した。
ドアを直前にそんなこと言うとそうとしか思えなくなってくるだろ。
キィ。
少し扉を開け外を見る。
(マジかよ…)
警察が数人待機していた。
扉をゆっくり閉める。
が一瞬1人の警官の目が合う。
「先輩あそこにいます。」
バタン!
「逃げるぞ。」
思いっきり扉を閉めて全力で廊下駆け抜ける。
「いたぞ!!」
続くように警察達も追ってきた。
距離は15m程度。
走る。
壁が見てくる。
「そこ曲がれ。」
曲がった先の廊下は扉が何個もある。
ドタドタ。
足音が大きくなる。
「こっち!」
ルナの声で数ある扉の一つに入る。
幸い入る瞬間を見られていない。
がバレるのも時間の問題だ。
「はぁはぁ。まずいな…」
「完全に閉じ込められたね…早く隠れないと。」
扉に寄っかかる。
「てかなんで電気つけんだ。」
「え…元からついていた。」
(おいおい嘘だろ。元から人がいたってことになるぞ。)
「あなた達誰?」
(最悪だ。)
奥から20代後半ぐらいの看護師が現れた。
鼓動が早くなる。
指名手配の人間ってバレ叫ばれて終わりだ。
「…トーヤくん?」
看護師が俺の名前を呼んだ。
「アンタは…サヤの担当のか?」
見舞いに行った時に顔を何度も合わせてきた看護師だ。
「ええ。そうよそんなことより早く隠れなさい。追われてんでしょ」
看護師が部屋の奥に俺達を誘導した。
隠れる。
部屋の奥から声が聞こえてくる。
「3、2、1、ゴー」
ドン!
警察が扉を勢いよく開ける音だ。
「きゃぁ!」
看護師がまるで本当に驚いたような演技をした。
「脅かしてすみません。ここに逃亡中の破斬りトーヤは逃げ込みませんでしたか?」
「ここには誰も来ていません。」
「そうですか。ご協力感謝いたします。」
バタン。
扉が閉まる。
「もういいわよ出てきて。」
「ありがとう。助かった。」
「助かりました。」
俺たちは礼を述べた。
「気にしないで。」
「けどいいのかよ?」
仮にも指名手配犯を手助けしているんだ。
「私はトーヤくんが人殺しなんてしないと知ってるもの。」
「よくサヤちゃんの見舞いにきてその上治療費も払ってる人がそんなことするはずはないって」
「俺を信じてくれてありがとう…」
こんな状況でも第三者が信じてくれるって嬉しいんだな。
「2人ともついて来てこっちに職員用の出入り口がある。この部屋から行ける。」
看護師の手引きのもと俺たちは警察の目に入ることなく職員用出口の前についた。
警察も看護師が協力するのは予想外だったらしくそれまで警察と鉢合わせすることはなかった。
「ここまで本当にありがとうございました。」
俺は深く頭を下げる。
「いいわよ私が勝手にやったことだから。それじゃ気をつけてね。」
ガチャ。
扉を開ける。
外には警察はいない。
俺は先に出る。
「あなたは待って。」
看護師はルナを引き留めた。
耳打ちで何かを話している。
「実は私この世界の人間じゃないのよ。
あなたと同じエージェント。」
(この人はエージェントだったの…?)
(普通世界で一般人として生活してるならE級エージェント…?)
忘れていた。エージェントは他世界に数多く潜伏している。その辺の一般人がエージェントであってもおかしくない。
「そうだったんですね…どうして私のことを?」
「他局に定例報告に行った時にあなたを見かけたからよ。」
「なるほど…」
(私はこの人を覚えてない…)
「そんなことはどうでもいいわ。」
「あなたがどんな任務でトーヤくんと一緒にいるか知らないけど、トーヤくんは凄くいい子なのだから絶対に守ってあげて。」
「これは私からの任務よ。エージェントなら遂行できるわよね?」
肩をポンと叩かれる。
「了解です…」
頼まれなくても多分その任務はやっていたと思う。
「いい返事ね。それじゃ早く行きなさい。」
背中を押され外に出させる。
「何を話してたんだ?」
「う、うん何も…」
「まぁいいけど」
そうして2人は病院から出れた。
「あとは敷地内を出るだけ…」
「そうだな。」
物陰に隠れながら出入り口に向かう。
しかし門にはパトカーが数台止まっている。
「門は無理だ…迂回して柵を越えるぞ」
「うん。」
警察は主要な出入り口にしかおらずざる警備だった。
私達は1.5mぐらいの柵をよじ登った。
そして警察からバレずに敷地内を後にする。
「出れた…!」
一安心だ。
「安心するの早い。俺達の目的は篠原を殺…倒すことだ。」
「そうだった…」
◇
その様子を病院の屋上から見ているものが居た。
「おいおい。余裕で逃げられてるじゃねえか。
どうなってんだよ警察は!」
「まぁすぐ捕まったらつまんねぇか。」
「殺すなら遊ぶしかねぇよな。さっきは遊び過ぎて逃げられたが」
「今度は逃さねぇよ!。」
男はトランシーバーを取った。
「あーあー聞こえるか俺だ俺。はぁ?わかんね?。俺だ篠原だ。〇〇道路に奴が居たすぐに迎え。」
◇
公道にて
「はぁはぁ。撒いた…?」
「なんとかな。」
「どうして逃げても警察が来るの…まるで誰かに見られているみたい…。」
「わからねぇ。」
近くにあった建物で身を隠す。
ピーポーピーポー。
音が止む。
停車したからだ。
警察が降りてくる。
「またかよ!!」
「逃げるよ」
数十メートル後ろには警察が追ってきている。
走る。
呼吸が苦しい。
血の味がする。
それでも走るしかなかった。
ブウーン!ブゥーン!
(この音は…?)
警察とは違った異質な音だ。
ただ、少し前に聞いた記憶がある。
「はぁはぁ…何…この音…暴走族…?」
トーヤの顔を見る。
ニヤッと笑っていた。
ずっと走って相当疲れているのに。
「こっちだ!」
トーヤがギアを上げる。
道を曲がり通り音の方へ走って行く。
先回りだ。
ブゥーン!ブゥーン!
音が近づいてくる。
音の正体がわかった。
先ほど暴走族だ。
一直線の道路に彼らの姿が見えてくる。
「トーヤ…??何してるの…!!」
トーヤは道路の真ん中に立つ。邪魔な位置におり暴走族達が怒るだろう。
ブゥーン!ブゥーン!音が大きくなる。
彼らが迫ってくる。
「ドケ!!死ね!!」
「殺すぞ!!!!」
(怖い……)
とんでもないヤジがトーヤに飛ばされる。
そして暴走族は停車した。
続々とイカつい人達が降りてくる。
腕や肩を回している。
トーヤをボコすためだろうか。
数十人はいる。トーヤは絶対勝てない!
「逃げて!トーヤ!」
私は歩道から言うことしかできなかった。
先頭にいた金髪オールバックの男が近づいてきている。
「ヨォお兄さんちゃん。よくも俺達の楽しみを邪魔してくれたなぁ!!」
「前から思ってたんだがそのチンピラみたいなのやめたらどうだ?お前の内面が台無しだぞ。」
「あぁ!?なんだお前俺の何を知って…お前トーヤか!!」
「ああそうだぜオウガ。」
「うおぉぉぉ!!」
「久しぶりじゃねぇか!トーヤ元気だったか!!」
オウガがトーヤの肩に手をかける。
後ろにいた連中に向けてトーヤの手を上に上げる。
「コイツは俺の親友のトーヤだ!俺たちはの仲間だ!!!」
歓声が上がる。
「サヤは元気か!!」
「……ああ元気だ。」
「また会いたいぜ!!」
「悪いがオウガ。実は俺今警察に追われてるんだ助けてくれ。」
即答だった。
「おういいぜ!早く乗ってけよ!」
「待った。コイツも乗せて欲しい。」
私の方を見る。
「彼女か??」
「いや違う。友達だ。」
(友達…友達…ツバキちゃん以外に初めて言われた!!)
こんな状況なのに嬉しかった。
「なら2人で乗ってけ!」
オウガが乗っていたバイクをトーヤに渡す。
「サンキュー!な。オウガ」
「へへ!」
オウガは仲間のバイク借りていた。
ピーポーピーポー!
パトカーが前から数台現れる。
「早く乗れ。」
トーヤ手を取り背中に乗る。
「行くぞ!!お前ら!!」
オウガの叫びで一斉に走り出した。
ブゥーン!
前からパトカーが来ている。
「恐れるな!!」
先頭にいるオウガがアクセルを思いっきり踏む。
120キロは出ている。
パトカーに向かって全速力で駆け抜ける。
「オウガさんに続け!!」
後ろにいた連中もスピードを上げる。
同じくトーヤも。
「え…嘘」
プゥー!
パトカーはクラクションを鳴らす。
止まらない。
パトカーは4台横一列に並ぶ。
隙間はほとんどない。
「ハハ!!面白いことするぜ!」
オウガは前輪を浮かせる。
ウィーリーだ。
ドン!
スピードを保ったままパトカーにぶつかる。
しかし、オウガは前輪を車体に乗せそのままパトカーの上を走った。
車体でアクセルを踏む。
ヒュン!
オウガはバイクに乗ったまま空を飛んだ。
着地。そのまま走る。
「すげぇ!!このままオウガさんに続け!!」
次々とオウガ同じことをする。
「ヒャッハ!!」
(この人達は壊れてる….!!)
パトカーは4台横一列にしていたが彼らのおかげで隙間ができた。
「掴まれルナ!。」
トーヤがアクセルを全力で踏む。
時速100キロは出ている。
風で髪が乱れる。
「待って待って!」
トーヤがパトカーの隙間を抜けようとしている。
隙間は80cmもない。
エンジン音が大きくなる。
パトカーが迫ってくる。
トーヤの背中をギュッと掴む。
シュン!!
ミラーが顔数センチを横切った。
(助かった…)
パトカーのスレスレを駆け抜けた。
オウガ達の集団に戻る。
「最高だったな!!」
オウガが乗ったバイクが横に並走している。
「無茶しすぎだろ」
「たまには良いもんだぜ!」
「いつか死ぬぞ。」
「最高な気分で死ねて良いじゃねぇか!」
「かわんねぇな。」
2人は楽しそうだった。
後ろを見る。
パトカーはUターンしてきている。
「まだまだ終わらなぇみたいだ!」
オウガ達はスピード保ったまま公道を駆け抜ける。
ブゥーン!ブンブン!!
クラクションやエンジン音を町中に響きわたらせながら。
(最初は怖かったけど味方になったらすごい安心…)
ピーポーピーポー!
パトカーはものすごいスピードでこちらへ迫ってきている。
まるで法律を無視しても良くなったみたいな。
ブゥーン!
気がつくとすぐそこにパトカーがいた。
「上げるぞ!!」
一斉にスピードを上げる。
交差点が見えてくる。
前方に赤い光が見える。パトカーが前方の道を塞いでいる。
「警察のやることかよ」
二手に別れるしかない。
「トーヤ右にいくぞ!」
「了解だ。」
キュイーン。
地面がスレスレになりながら曲がることに成功した。
しかし、120キロ以上出しているバイクで曲がるのは至難の技だった。
ドン!
何人かは曲がりきれず事故ってしまった。
幸い大事故ではなかった。
別れ道ということあり数十人いた暴走族は今10人程度になってしまった。
パトカーは二手に分かれていた。
3台がこちらに曲がってきている。
「ごめんな。俺がオウガを頼ったばかりに」
「何言ってるんだトーヤ!お前らしくないぞ!
俺達は楽しいからやってるんだ!」
「それより今はお前を逃すことが最優先だ!!」
ブーン!
信号など無視して走り続けた。
警察はずっと張り付いてくるが何もしてこない。
こう着状態。
「どうなってるんだ!!」
黒い車が逆走してくる。
止まらない。
さっきのパトカーはこういう気持ちだったのかもしれない。
お互いスピードは落とさない。
「避けろ!!」
キュイーン!
黒い車は急ブレーキをかけ車体を横向きにした。
ドン!!
暴走族は何名かは避けきれずにぶつかり吹き飛ぶ。
「ソウタ!!カズヤ!!」
オウガが叫ぶ。
「なに…あの車…!!」
私達は後ろを走っていたから間一髪回避した。
黒い車はこっちに戻ってきている。
パトカーはそれ以上は追ってきていない。
黒い車は猛スピードでこちらに戻ってきている。
「あの車はやばい!お前ら逃げろ!!」
皆アクセル全開だ。
何キロでているのかもわからない。
建物が一瞬で通り過ぎる。
「嘘でしょ…」
黒い車はすぐそばにいた。
バコン!
隣を走っていた暴走族の1人を後ろから轢いた。
私たちを除いて5人しか走っていない。
黒い車は並走してきている。
ウイーン。
突然窓が開いた。
「やぁ!愛しのMy honey」
「お前は……殺す!!」
トーヤは運転しながら叫んだ。
運転手は篠原だった。
「危ない!!」
バン!!
篠原は運転しながら銃を撃った。
運転中のトーヤを手を握りブレーキを踏ませてなんとか回避した。
「大丈夫か!?トーヤ!!」
「俺はいい!自分の命を守れ!」
オウガは篠原より前を走っている危険だ。
バン!
篠原が撃った弾は前方を走っていたバイクのタイヤに当たった。
バランスを崩したバイクは転倒した。
ガシャン!
そのまま篠原に轢かれた。
「ルナ!!」
トーヤは篠原の車と並走した。
窓から篠原が見える。
(ッ!!)
篠原が銃を構えていた。
バン!!
トーヤの背中と私の鼻先をスレスレを通った。
篠原が撃った隙に銃を構える。
(ここで撃たなかったらみんな死ぬ!!)
(前に私が撃てなかったから…….)
(また……私のせいで。いやそんな事考えなくてただいい引き金を引くだけ!)
指先に力を込める。
バン!!
篠原の鼻先を掠った。
「まるで別人だ!何があった….おっと!」
バン!!バン!!
続けて撃つ。
キュイーン。
篠原急ブレーキを踏んだ。
当たらない。
追い討ちを掛けようと弾を撃つ。
カチカチ。
弾切れだった。
ブーン!
私たちは猛スピードで篠原と距離をとった。
しかし篠原も追いかけてくる。
「お前らあれを使え!!」
先頭を走っていたオウガが叫ぶ。
数百メートル先を走っているキャリアカーだ。
幸い車は乗っていない。
「あれを使ってガードレールを飛び越えるつもりなの…?」
(でも反対車線は車が多い….)
オウガが乗ったバイクのエンジンが響く。
ブーンブーン。
オウガが猛スピードでキャリアカーの上を走る。
そして空中を飛び反対車線に辿り着く。
オウガは車を避けUターンして走った。
前に走っていた暴走族のメンバーはオウガに着いて行かずそのまま走り抜けていった。
普通の感性なら当然だ。
篠原が乗った車が近づいてくる。
距離は20mもない。
鼓動が早くなる。
「掴まってろ!」
猛スピードで突っ込む。
ガタン。
キャリアカーの上に乗る。
ハンドルバーを右に大きく振り反対車線に飛ぶ。ガードレールを飛び越える。
宙に数秒間浮いていた。
ガタン。
地面に着地した。
ブッ!ブッ!
クラクションだ。
前から車が来る。
「避けて!!」
間一髪右に避け。左に避ける。
避けれたのは奇跡だった。
篠原の乗った車はこちらに来ていない。
車が少なくなったタイミングでUターンしてオウガに追いつく。
「トーヤ!!生きてたか!」
「あの車はなんだよ!お前は何に追われてんだよ!」
「わからなぇよ。」
「それより俺はアイツぶち殺す!!お前もそう言うだろ。」
「ああ。俺とルナはアイツを殺すことが目的だ。」
(……私も殺すのが目的と思われるの…?トーヤを助ける為に来たのに…)
「なら殺ることは一つだ!!」
「ああ。奴は俺が狙いだ。誰も巻き込まない山へ行こう。」
「山なら車を降りほかない。」
私達3人は森へと走っていった。
「はは!面白いねあの2人は!依頼なんてどうでもいい。どちらかを殺した時の反応が楽しみだ!」
篠原が乗った車は山へと入って行く。
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