決意
カクヨムにも連載しています。
第3話 決意
ガチャガチャ ガタガタ ジュー。
生活音というより、料理をしている音が響く。
その音で目を覚ました。
「ここは……?」
見慣れた天井に見慣れた部屋、確信した。
「私の家……」
(どうしてここに……?私は任務で普通世界に渡っていたはず……あれ……その後どうしたんだっけ?何も思い出せない…モヤが掛かった感じがして不快…)
ガタガタ
キッチンの方から物音が聞こえる。
(誰かいる。)
寝起きで体が上手く動かせない。
それでも恐る恐る一歩また一歩と踏み出す。
するとキッチンには人が立っていた。
目が霞んでよく見えない。
「だれ…?」
目を凝らす。
特徴的なオレンジ色の髪で茶色の瞳を持つ人物。それはよく知っている人物であった。
「おはよー!ルナちゃん!」
彼女はニッコリ笑った。
「ツバキちゃんどうしてここにいるの?」
「他局の前に倒れてたから私と友達で運んだんだよー!」
「てかなんで倒れてたの!大丈夫?」
「…わからない。任務で普通世界に行った後のことが思い出せないの…」
「そっか、大変だね。一応ナオトさん(上司)に報告しといたから!」
「ううん平気。」
「…ありがとう」
「いいよー!だって親友じゃん困ってたらお互いさまでしょ!」
「そうだね。」
「うん!」
その間もツバキは手を動かして何かを作っていた。
「そろそろできるよー!」
「何作ってるの?」
「ハンバーグだよ!ルナちゃん好きでしょー?」
「うん、やった。」
「材料はワタシが買ってきたやつだから気にしないでー」
「出来きたよー!」
手際よく皿にハンバーグを乗せる。
皿にはハンバーグとほうれん草とにんじんがバランスよく配置されている。
食卓に並べる。
ライスとハンバーグの皿が2つ並ぶ。
「いただきますー!」
「いただきます。」
モグモグ。パクパク
「そういえば、ナオトさんが目覚めたらすぐ来るように言ってたよー」
もっと早く言って欲しかった。
「えっ…早く行かないと。」
「ルナちゃんはまだ寝てる。寝てるからまだ行かなくていいよー!」
食べかけのハンバーグに目が行く。
まだ食べたい。
「そうだね。私はまだ寝てる寝てる。」
「そうそう!ズル賢く生きないとね!」
自信満々に親指をグーっと立てる。
「ごちそうさまー!
「ご馳走様ー。」
最低限の洗い物を2人で済ませた。
「そろそろ行かないと」
「ワタシもついてくねー!」
ガチャ。玄関を開けた。
夕日が差し込んでくる。
「うわ!まぶし!」
「雪、久しぶりに止んだんだね。」
「ほんと久々だよねー!」
2人は他局に向かうため、道路から発せられる熱で雪が溶けた道をぼんやり歩いて行った。
しばらくして地下鉄に着いた。
(そうだ私は……あれ?)
一瞬頭のモヤが晴れた気がした。
(……?地下鉄……ではないけど最近地下に来た気がする。)
少し考えたがまた曇り出した。
「どうかしたー?」
「一瞬何か思い出したけど忘れた。」
「ありゃ」
ガタン!ゴトン!
ちょうど電車が来た。
車内は席がぼちぼち空いている。
「そういえばツバキちゃん仕事は大丈夫なの?」
「平気だよー!本当に感謝だよ!」
「ルナちゃんがG級になるのを手伝ってくれたからだよ!」
「頑張ったのはツバキちゃんだから。」
「もうー。そんなこと言わないでー!」
ムニムニ。ツンツン
ホッペで遊んでくる。
「間もなく他世界統制局前御出口は左側です。」
アナウンスが流れた。
駅に着いた。
しばらく地下を歩き、体が寒さに嫌がるのを抑えて外に出た。
前方には黒で縫い固められた鋼鉄の要塞と言うべきか他局の本部がある。
「た、助けてくれー!殺される!」
男の人の叫びだ。
ドタッドタッ!
必死に何かから逃げている。
2人の前を横切った。
「殺されるって!?まさか異能犯罪者!?」
ツバキがあたふたしている。
「違う。他局が目の前にあるのにわざわざそんなことするのはリスクが高すぎる……」
「なるほど!確かに!じゃあ追ってるのは…」
ドタッドタッ!
もう1人走ってくる者が現れた。
「はぁはぁ。マジでおかしい。なんで誰もいないんだ」
黒と金髪の2トーンをしたいかにもチャラそうなスーツの男が走ってきた。
「おっ!ラッキー♪人いんじゃん。しかも女の子2人ぃ」
チャラそうではなくチャラかった。
男は2人の前で止まった。
(……?こんな感じの人に最近あった気がするような……)
咳払いをする。
「やぁ、そこの麗しゅうお嬢さんたち。」
「良かったら今からこの僕ソルト”様とお食事にでもどうですか。」
キラン!
そんな音がした。
(気のせいか…)
「嬉しいなー!でもいいんですかあれ放っといても?」
必死で男が逃げている。
「そうだ!そうだった!忘れるところだった」
「お嬢さん達あの人の方を見てくれないか?」
2人は逃げてる男の方に視線を向けた。
ソルトはじっくり目を見つめる。
まるで”視界の中に映っている男”を見るように。
シュン!
(瞬間移動?……やっぱり既視感がある。)
「はぁ!?なんでだよ!」
ソルトは男の前方に立っていた。
だが男は構わず走り続ける。
バタン。
流れるように足を出し転ばした。
「おおー!」
ツバキはパチパチと感心している。
「ねぇルナちゃんあれって…?」
「うん。異能だね。」
「街中で異能を使えるってことはA級かB級のエージェントってこと?」
「そうなるね。」
「そっかー」
ツバキは一瞬引きずった。
それもそのはず主な任務は、どちらとも異能犯罪者の取り締まり。
それに加えて、B級は他世界の人間の暗殺。
A級は”裏切ったエージェントの抹殺”。
まともな人間なら務まらない階級である。
A級は精神異常者の集まりと巷では囁かれてたりもする。
「頼む助けてくれ!殺さないでくれ!」
ソルトは出際よく男を地面に拘束し両手を押さえている。
「殺す?そんなことはしないさ。君を他局に”無申告異能者”として送るだけだからさ♪」
「他局になんて行ったらもう俺の人生終わったも同然じゃないか!!」
「それは違うさ。」
「君がいつかエージェントになるのを楽しみにしてる。このAK8のソルト様が♪」
「そうだ。お嬢さんたちのおかげさ!今度お食事に行こう!」
男を地面に拘束し応援を待ちながら無邪気に手を振っている。
2人は小さく手を振りその場を去った。
他局の入り口に立つ。
自動ドアがゆっくり開いた。中から暖かい空気が漏れる。
「到着ー!!」
「うん。」
「ルナちゃん。ワタシやることあるから行くねー!」
「わかった。またね」
タッタッタと廊下を駆け抜けていった。
ルナは自分の部署に向かうためエレベーターに乗った。すでに先客が2人おり彼らは親しい様子で少し気まずさを覚えた。
そんな中2人は気にせず会話を始めた。
「あのクソ上司なんなの!?ダメ出しするくせに改善策教えないの何なの!」
女が密室で声を荒げている。
「わかるぜーそれ。てか知ってるか?」
男は上手く会話を逸らしていた。
「D級のほとんどが消息不明らしいぞ。」
「やばくないー?D級ってサイバー世界の担当だったわよね。」
「そうそう。あとサイバー世界に”裏切った高ランクのエージェント”がいるって聞いたぞ。」
(裏切ったエージェントはA級によって抹殺されるはずじゃ…?)
「何それ怖ーい。やっぱ他世界に行かないG級が1番ね。」
「マジそれ。」
少しして目的の階に着き降りた。
トコトコ。
自分のデスクに着いたがイマイチ何しに来たのか覚えていない。
「遅かったな。FS24」
後ろから声がした。
普段から私を階級識別ネームで呼ぶのは私の上司であるナオトさんしかいない。
振り向く。背後には、
薄い緑色の髪で襟足が金髪のウルフカットをしたキリッとしたの黒紫の瞳をした高身長の男がいた。
「すみません。ナオトさん」
「気にするな。それより本題だあっちで何があった?職員がFS24が本部の前で倒れていると聞いた。」
ナオトは淡々と言葉を発する。
「…わからないんです。普通世界で渡った以降の記憶がないんです…」
「そうか。なぜあっちに渡ったか覚えてるか?」
「任務です。」
「何の任務かわかるか?」
「わかりません……。」
「”破斬りトーヤ”聞き覚えはあるか?」
「破斬りトーヤ…?」
ビリっ!
頭に電撃が走った感触だ。
頭に色んな場面がフラッシュバックした。
(そうだ私は……!!)
「全て…思い出しました!」
思わず大声を出してしまった。
「そうか。」
それでもナオトは表情ひとつ変えない。
「破斬りトーヤは殺したか?」
「申し訳ございません。失敗してしまいました。」
「そうか……」
一瞬表情が柔らかくなった気がした。
ナオトさんに限ってそんなはずはない。
「しかしなぜ失敗した。理由を聞かせてくれ。」
私は今まで普通世界で起きたことを一通り話した。
トーヤを暗殺しようとしたが彼が銃を持っていたこと、狙撃手に襲われたことなど。
「それで私は狙撃手の男と戦っている最中に現れた狐面の攻撃を受け、”この世界”に飛ばされ意識を失っていたみたいです。」
「災難だったな。その狐面を我々B級、A級は”刹那”と呼んでいる。」
「刹那……」
「奴らは1人ではない複数名いることが確認されている。目的が不明であり神出鬼没で現れる。」
「上からは刹那を見つけ次第、即刻殺すように命じられている。すでに我々は刹那を3人殺している。」
(……そうだ私は納得できないことがある……ちゃんと聞かなきゃ!)
「なぜ破斬りトーヤを暗殺しなれけばならないのですか…….?」
「破斬りトーヤは危険人物ではありません。暗殺理由である他世界の存在を知ってしまったという理由だけでは私は……納得できません。」
「資料には書いてありませんが時空間跳躍時計を持ってしまったからなのでしょうか?ですがあれは”エージェントしか”使えないはずです…!!どうして…ですか?」
「そこまで気づいていたのか。」
ナオトのおでこにシワがよっている。
「この任務は闇が深いFS24には早過ぎた。本来これは僕の任務だ。任せてすまなかった。」
「答えになってませんよ…」
「僕に”あの人の子供”を殺す勇気はなかった…。」
ボソッ
「後は引き継ぐ。明日は休暇にしていい。」
「あっ……」
言葉が出なかった。
ナオトはその場を去ろうと踏み出そうとしている。
(本当……このままでいいの?)
トーヤの顔が思い浮かぶ。
(彼は私を殺さなかった。私は殺そうとしていたのに……その恩を返すべきじゃない?)
スタスタ。ナオトの背中は遠ざかっていく。
(ダメ……このままこの人を行かせたらトーヤが……が死ぬ!!それは嫌だ!)
「待ってください!!」
室内に響き渡る。思わず叫んでしまい視線が集まる。
だがそんなのはどうでもいい。
「どうした。FS24が叫ぶのは珍しいな。」
「ダメです……その任務は私のです!!貴方は私に預けた。その時点で私の任務です!」
「そうか。」
声のトーンに感情が乗っていた。その時はいつもの上司ではないように感じた。
「分かった。FS24にその任務はすべて任せた。」
「はい!」
(あっさりいけた……。)
「最後に一つ聞きたい。破斬りトーヤを殺せるか?」
「はい。私は破斬りトーヤを絶対に殺せます!」
(助けます!)
自信満々で答えてしまった。
私がやろうとしていることはナオトさんに気づかれていたと思う。
「そうか期待している。」
◇
普通世界にて
「続いてのニュースです。本日5時ごろ川崎市にて銃撃事件が発生しました。警察は「破斬りトーヤ」を容疑者として認定し現在も逃亡中です。
ここまで読んでくださり本当にありがとうございます!
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