28.ただ悲しんで
開いてくださり、ありがとうございます!
晴の死を受け、いろんな人の感情が今動いています。
前回は、晦と芯でしたね。
今回は、紫陽と紫愛の双子の葛藤です。
お楽しみください
※この作品には、残酷・暴力描写が含まれます
晴の死体が、乱暴に引きずられていく。
紫愛は、目を逸らさずに、それを見ていた。
透明な箱の中には、施設の子達全員が押し寄せていた。
おそらく、ルイくんの試合だったからだろう。
他の子の試合には、ほとんど顔を出さなかったくせに。
「あー…ほんとによかった…ルイくんが無事で」
「まあ私は、晴が死ぬと思ってたよ。」
「まあ最期だし、ルイくんに迫られてたことは許してあげるよ」
ルイくん信者たちは、そう言って笑っている。
なんで、そんなふうに言えるんだろう。
俺はルイくんの戦い方、だいっきらいだ。
あんな風に期待させて、好意を使って絶望に叩き落とす。
ルイくんはもう、この世界の住民だ。
「ふざけんな!!」
突然、箱の中に甲高い叫びが響き、箱が小さく振動した。
「なんで…なんで死んだ後もそんな風に言われなきゃいけないのよ!!」
叫んでいたのは、俺の双子の妹、紫陽だった。
紫陽はそう言って、ルイくん信者の女の子1人の胸ぐらを掴み、壁に叩きつけた。
「ぃった……なにすんだよ!!」
透明な箱が、大きく揺れる。
「はなせよ!ブス!!」
信者女はそう言って、紫陽の頭や腕を殴っている。それに対抗するように、紫陽も拳を振り上げた。
「なんでよ!!あんなに優しい人が、なんであんな殺され方して、死んだ後もこんな風に言われなきゃいけないの?!」
泣きながら訴える紫陽を見て、俺は黙ってられなくなった。
紫陽の振り上げた拳が、信者女に当たる直前、紫愛は紫陽の拳を手で包むように止めていた。
「しあ…まって」
絞り出したような声で、紫愛は紫陽を諭した。
「…は?なんで止めんの、しお。」
紫陽は、怒りを通り越した笑みで、俺を見つめた。
「そんなやつ、ほっとこうよ…。しあの手が怪我するから」
紫愛はそう言って、紫陽の拳を強く握った。
「そんなやつってなに?!」
信者女は、そう言って喚いた。
はぁ、もう無理。
俺は我慢できなくなって、紫陽を無理やり押し除けた。
「っ…ちょっと…!」
紫陽は何か言おうとしたけど、俺は構わず信者女の方に向かって歩いた。
「は…なに?土下座でもしてくれるわけ?w」
信者女はそう言って笑った。
「このブス、あんたの妹だっけ?妹の代わりに兄が謝んの?うわーえらいでちゅねぇw」
女はそう言って、腕を組んだ。
俺は、思わず笑ってしまった。
「…ばかだな」
紫愛はそう言うと、信者女の頭を掴み、動けないよう壁に押し当てた。
箱が、さっきよりも明らかに揺れ、ミシッと鈍い音を出した。
「ゔぁっ…」
女は、気持ち悪い鳴き声を上げた。
そんな女に、紫愛は顔を近づけ、体の芯にまで響くような、低い声で言った。
「二度とこの箱の中に来るな」
その言葉を聞いた女は、目を見開いて、体を硬直させた。
紫愛は吐き捨てるようにそう言うと、女から手を離し、紫陽の手を握って箱を出た。
透明な通路を抜け、廊下を抜け、殺風景なホールに出た。
ホールには今、俺と紫陽しかいない。
ホールにつくと、紫陽は紫愛の手を乱暴に振り払った。
「なんで止めるんだよ!!怪我とか、どうせ無理やり治されるんだからどうでもいいじゃん!!なんで晴ちゃんがあんな風に言われてるのに、なにもさせてくれなかったの?!」
紫陽はそう言って、絶え間なく俺に怒鳴った。
「聞いてんの?!ねえ!!」
紫陽は俺の胸ぐらを掴み、壁に押し付けた。
「怖いからなにもさせてくれなかったの?!ねえ!なにかいいなさいよ!!!」
紫陽は、多分もう冷静じゃない。
感情のままに、泣き叫んでいる。
俺は、紫陽の目をまっすぐに見た。
「なによ…見てないで答えなさいよ!」
紫陽の顔には、ところどころ赤くなっているところがある。
腕にも、あざになったところがある。
さっきの女が、殴ったところだ。
紫愛は、紫陽の背中に腕を回し、自分の方に引き寄せた。
「は?!ちょっとなにすんの!離してよ…!」
紫陽は、怒鳴りながら暴れている。
紫陽の腕や手が、紫愛の体に当たる。
「しあ…もういないから…。」
紫愛は、紫陽に話しかけながら強く抱きしめた。
「あいつらは今、ここにいないから。晴ちゃんを悪く言う人は…誰もいないよ。」
2人だけだから。
「だから…」
自然と、涙が溢れる。
「だから、ただ悲しんでいいんだよ…」
あぁ結局、俺も堪えられなかったな。
紫愛の言葉を聞いた紫陽は、一瞬驚いたような顔をした。
そして、ゆっくりと紫愛に身を委ねた。
ホールには、今は俺たち2人だけ。
紫愛と紫陽は抱き合いながら、静かに晴を想った。
読んでくださり、ありがとうございました!
晴の死を受け、双子の行動は違いましたね。
でも、ただ悲しいという気持ちは、一緒でした。
自分の死を悲しんで、怒ってくれる人がいるというのは、皮肉でも、幸せですね。
次回もお楽しみに!
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いつも見ていただき、ありがとうございます!




