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28/32

28.ただ悲しんで

開いてくださり、ありがとうございます!


晴の死を受け、いろんな人の感情が今動いています。

前回は、晦と芯でしたね。

今回は、紫陽と紫愛の双子の葛藤です。


お楽しみください


※この作品には、残酷・暴力描写が含まれます

晴の死体が、乱暴に引きずられていく。


紫愛は、目を逸らさずに、それを見ていた。


透明な箱の中には、施設の子達全員が押し寄せていた。


おそらく、ルイくんの試合だったからだろう。


他の子の試合には、ほとんど顔を出さなかったくせに。


「あー…ほんとによかった…ルイくんが無事で」

「まあ私は、晴が死ぬと思ってたよ。」

「まあ最期だし、ルイくんに迫られてたことは許してあげるよ」


ルイくん信者たちは、そう言って笑っている。


なんで、そんなふうに言えるんだろう。


俺はルイくんの戦い方、だいっきらいだ。


あんな風に期待させて、好意を使って絶望に叩き落とす。


ルイくんはもう、この世界の住民だ。


「ふざけんな!!」


突然、箱の中に甲高い叫びが響き、箱が小さく振動した。


「なんで…なんで死んだ後もそんな風に言われなきゃいけないのよ!!」


叫んでいたのは、俺の双子の妹、紫陽だった。


紫陽はそう言って、ルイくん信者の女の子1人の胸ぐらを掴み、壁に叩きつけた。


「ぃった……なにすんだよ!!」


透明な箱が、大きく揺れる。


「はなせよ!ブス!!」


信者女はそう言って、紫陽の頭や腕を殴っている。それに対抗するように、紫陽も拳を振り上げた。


「なんでよ!!あんなに優しい人が、なんであんな殺され方して、死んだ後もこんな風に言われなきゃいけないの?!」


泣きながら訴える紫陽を見て、俺は黙ってられなくなった。


紫陽の振り上げた拳が、信者女に当たる直前、紫愛は紫陽の拳を手で包むように止めていた。


「しあ…まって」


絞り出したような声で、紫愛は紫陽を諭した。


「…は?なんで止めんの、しお。」


紫陽は、怒りを通り越した笑みで、俺を見つめた。


「そんなやつ、ほっとこうよ…。しあの手が怪我するから」


紫愛はそう言って、紫陽の拳を強く握った。


「そんなやつってなに?!」


信者女は、そう言って喚いた。


はぁ、もう無理。


俺は我慢できなくなって、紫陽を無理やり押し除けた。


「っ…ちょっと…!」


紫陽は何か言おうとしたけど、俺は構わず信者女の方に向かって歩いた。


「は…なに?土下座でもしてくれるわけ?w」


信者女はそう言って笑った。


「このブス、あんたの妹だっけ?妹の代わりに兄が謝んの?うわーえらいでちゅねぇw」


女はそう言って、腕を組んだ。


俺は、思わず笑ってしまった。


「…ばかだな」


紫愛はそう言うと、信者女の頭を掴み、動けないよう壁に押し当てた。


箱が、さっきよりも明らかに揺れ、ミシッと鈍い音を出した。


「ゔぁっ…」


女は、気持ち悪い鳴き声を上げた。


そんな女に、紫愛は顔を近づけ、体の芯にまで響くような、低い声で言った。


「二度とこの箱の中に来るな」


その言葉を聞いた女は、目を見開いて、体を硬直させた。


紫愛は吐き捨てるようにそう言うと、女から手を離し、紫陽の手を握って箱を出た。


透明な通路を抜け、廊下を抜け、殺風景なホールに出た。


ホールには今、俺と紫陽しかいない。


ホールにつくと、紫陽は紫愛の手を乱暴に振り払った。


「なんで止めるんだよ!!怪我とか、どうせ無理やり治されるんだからどうでもいいじゃん!!なんで晴ちゃんがあんな風に言われてるのに、なにもさせてくれなかったの?!」


紫陽はそう言って、絶え間なく俺に怒鳴った。


「聞いてんの?!ねえ!!」


紫陽は俺の胸ぐらを掴み、壁に押し付けた。


「怖いからなにもさせてくれなかったの?!ねえ!なにかいいなさいよ!!!」


紫陽は、多分もう冷静じゃない。

感情のままに、泣き叫んでいる。


俺は、紫陽の目をまっすぐに見た。


「なによ…見てないで答えなさいよ!」


紫陽の顔には、ところどころ赤くなっているところがある。


腕にも、あざになったところがある。


さっきの女が、殴ったところだ。


紫愛は、紫陽の背中に腕を回し、自分の方に引き寄せた。


「は?!ちょっとなにすんの!離してよ…!」


紫陽は、怒鳴りながら暴れている。


紫陽の腕や手が、紫愛の体に当たる。


「しあ…もういないから…。」


紫愛は、紫陽に話しかけながら強く抱きしめた。


「あいつらは今、ここにいないから。晴ちゃんを悪く言う人は…誰もいないよ。」


2人だけだから。


「だから…」


自然と、涙が溢れる。


「だから、ただ悲しんでいいんだよ…」


あぁ結局、俺も堪えられなかったな。


紫愛の言葉を聞いた紫陽は、一瞬驚いたような顔をした。


そして、ゆっくりと紫愛に身を委ねた。


ホールには、今は俺たち2人だけ。


紫愛と紫陽は抱き合いながら、静かに晴を想った。

読んでくださり、ありがとうございました!


晴の死を受け、双子の行動は違いましたね。

でも、ただ悲しいという気持ちは、一緒でした。

自分の死を悲しんで、怒ってくれる人がいるというのは、皮肉でも、幸せですね。


次回もお楽しみに!

気軽にコメント、評価してくださると、とても嬉しいです!

いつも見ていただき、ありがとうございます!

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