24.見ない方がいい
開いてくださり、ありがとうございます!
いよいよ、ルイと晴の試合が始まりました。
この試合の行方、当事者たちの心情、帰りを待つ仲間の想い、それぞれの葛藤をお楽しみください。
※この作品には、残酷・暴力描写が含まれます
あれから、2時間半が経とうとしていた。
晦はベッドの横に座り、なにも考えずにぼうっとしていた。
あー、そろそろ2時だ。
もうすぐ、試合が始まる。
今回の殺し合いはルイと晴。この試合は見ておいた方がいい。
晦は軽くそんなことを考えながらベッドに目をやった。
正確には、ベッドで寝ている芯に目を向けたのだ。
さっきよりは確実に顔色がいい。
よく眠れているようだ。
さて問題だ。
「…起こすか?」
晦は、腕を組みながらつぶやいた。
さっきまで泣いてたし、あんな感じだったし。
でも、今は気持ちよさそうに眠っている。
普通なら、後でキレられても起こさないだろう。
でも、普通の状況で起こさないのと、今この状況で起こさないのとでは、全く意味が違う。
自分が眠っている間に、仲良いやつが殺し合ってて、起こしてもらえずに仲間の戦いが終わってた、なんて知ったらキレるなんてもんじゃない。
ここは起こすべきだ。
「…芯。2時になった。」
俺は芯に触れずに、声をかけた。
何度も、何度も。多分10回は声をかけた。
「ねえ…もう始まるんだけど……」
でも全然起きない。
晦は、ため息混じりに声をかけた。
いくらなんでも寝すぎじゃないか…?そろそろほんとに始まるのに。
でもだからといって、触れるわけには行かない。
「はぁ…もう…」
情けない声が漏れた。
時計を見ると、もう2時を過ぎていた。
仕方がないから、見学に行くのは諦めた。
俺は部屋に備え付けられている、配信テレビの電源を入れた。
そこに映ったのは、固まっている晴と、晴の手の甲にキスをしているルイの姿だ。
観客席からは、興奮と嫉妬の声が溢れかえっている。
「…やっぱりか。」
俺の予想が大当たりした。
ルイの戦い方は、なんとなくこうじゃないかと予想をしていたのだ。
そして、これを見て確信した。
この戦い方は、観客と相手の好意を利用した、精神的な戦いなのだと。
その証拠として、観客が湧き、晴が固まり、ルイは純粋な笑顔を浮かべている。
もしかしたら…いや、もしかしなくともこの試合、芯は見ない方がいいのかもしれない。
少し経つと、画面に動きがあった。
ルイが晴の顔に近づき、言葉をかけたのだ。
その時のルイの顔が、大きく画面に映し出された。
「…きも」
俺は思わず声に出してしまった。
次の瞬間、まるで俺の声が聞こえていたかのように、ルイと画面越しに目が合った。
そして、ルイの楽しそうな、純粋な笑顔が画面に映し出された。
偶然だと思うが、このタイミングでルイはカメラに目線を合わせたのだ。
「…ほんとにきもいわ。こいつ。」
寒気がした。悪寒だ。
そして同時に、再び頭に浮かんだ。
この戦い、芯は見ない方がいい。
でも、見ないと確実に後悔する。
自分を責める。
そうなると、まためんどくさいことになる。
「よし。起こそ」
晦はこの決断に至ると、すぐさまベッドに向かって歩き出した。
そして、布団の上から、位置を確認して芯に触れた。
「おーきてー。ねえー。試合始まってるー」
俺は声をかけながら思いっきり芯の体を揺らした。
「うわっ!!!」
芯は大声を出しながら飛び起きた。
俺の体は、思わずびくついた。
「ありがと、かい!ほんとにありがと」
芯は変な汗をかきながら、俺に礼を言った。
そして、テレビの前まで走っていった。
一瞬の出来事すぎて、晦は体を動かすこともできず、固まっていた。
もう…ほんとに疲れた…。
読んでくださり、ありがとうございました!
晦が、少しずつですが変わってきました。
個人的には、芯を起こすシーンが好きです笑
彼が変わったきっかけが、良い意味でも悪い意味でも、この世界ということが、とても皮肉なものですね。
晴とルイの試合を、ぜひ見届けてください。
次話もお楽しみに!




