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21/26

21.少しだけ

開いてくださり、ありがとうございます!


前回、芯とかずとの争いを晦が止めました。

あの回、私的には結構好きなんですよね笑

今回も、今までの話よりは息抜きできる回になると思います!

ぜひ楽しんでください。


※この作品には、残酷・暴力描写が含まれます。

なんで俺、止めたんだろ。

晦は自室に戻ってから、また1人で考えていた。

別に放っておけばよかったのに。

面倒ごとが増えるだけなのに。


“体が勝手に動いたっていうか…”


芯の言葉が頭に浮かんだ。

あぁ、こういうこと?

俺は、芯の言っていたことが、少しだけわかったような気がした。

意味がわかったというより、理屈がわかっただけだ。

「はぁ…」

晦はため息をつくと、立ったまま考え事を始めた。

さっきの、かずとと芯の揉め事。

止めたはいいけど、だるいな。これからが。

芯はホールに顔出しにくくなるだろうし、かずとも…。

そんなことを考えていると、隣の部屋からものすごい音がした。

「っ…?」

壁に物を投げつけたような音で、振動もすごかった。

晦は壁の方に手を置いてから、はっとした。

あー、そうだ。隣の部屋はかずとだっけ。

物に当たってるんだろう。

まぁ、人に手をあげて当たるよりはマシか。

俺は少しだけ目を瞑って、ベッドに腰掛けた。

さっき、男警備員が言っていた言葉。

ルイと晴。

晴がルイと戦ったらどうなるか、まだわからない。ルイの戦い方を、俺は見たことがないからだ。

晴は意外に強かった。拳も重い感じだったし、無駄な動きが少ない。少し体幹が弱いけど、補えるほどの強さだ。

問題はルイ。あいつの戦いを、俺は見に行っていない。だから戦い方が全くわからない。

ただ、ルイの試合だけ、観客の黄色い歓声が部屋まで響くから、俺たちにとって嫌な戦い方なのは想像がつく。

「……あれ」

時計をふと見ると、思わず声が出た。

時計の針が、いつのまにか23時を指していた。

かずとを止めてから、2時間が経っていたのだ。

「そんなに考えてたのか…」

それに気づいた瞬間、とてつもない睡魔に襲われた。

うっわ、ねむ…。

視界がぼやけて、瞼が重い。

でもルイと晴の試合は午前2時からだし、寝たら起きられる自信がない。

晦は深呼吸をして、自分の頬を叩いた。

その瞬間。

「…かい?」

部屋の前から声がした。

「だれ」

俺はベッドに腰掛けたまま、顔を上げた。

すると、ゆっくりと扉が開いた。

「ごめん、寝てた…?」

芯だった。

芯が、俺の部屋を訪ねてきた。

「いや別に。なんできたの」

晦は淡々と芯に聞いた。

少し冷たかったか。

俺は芯から目を逸らし、額に手を重ねた。

芯は下を向いたまま、俺の目の前にきた。

「ごめん…。さっき、助けてくれてありがと」

俺は指の隙間から芯を見上げた。

顔色が悪く、クマもできている。そして、目のまわりが赤いし、少し腫れている。

相当泣いたんだろう。

「別に助けたつもりじゃないよ。」

晦はそう言って、ベッドから立ち上がった。

「…座りなよ。」

なぜか、自分の口からそんな言葉が出た。

勝手にだ。

芯が驚いているように、自分でも驚いている。

「あり…がと…」

芯は、驚いた表情のままおそるおそるベッドに腰掛けた。

「……」

しばらく、沈黙が流れた。

芯が訪ねてきたのは、なにか話があるからだと思っていたけど、黙ったままなら違うのか…?

そんなことを考えていると、芯は自分の右側を軽く叩いた。

「かいも座って。私だけ悪いから…」

芯は俺を見たまま、そう言った。

俺はぎょっとして、つい黙ってしまった。

いや、さすがにそれは…。ベッド狭いし…。

晦が脳内で葛藤していると、芯は晦から目を逸らし、下を向いた。

「…ごめん。」

芯は、悲しそうな顔で俺に謝った。

次の瞬間、頭の中で、何かが切れた音がした。

晦の頭は今、完全にキャパオーバーした。

そんな悲しそうな顔されたら困るじゃん。

キャパオーバーし、睡魔に襲われている晦の脳みそは、使えないなりにフル回転し始めた。

どうしよ。座るか?座ればいいのか?

いやその前に弁解か。

「い…や…別にあの…嫌とかじゃなくて……」

まっずい。カタコトでしか喋れない。

芯はずっと下を向いて、今にも泣きそうな顔をしている。

あ〜…もういい。

俺は意を決して行動した。芯の右隣のベッドに、腰掛けた。

ぼふっという、妙な音が鳴った。

芯は、驚いた顔で俺を見つめていた。

だが、すぐにその表情は消えた。

「ごめん…無理に座らなくても大丈夫だよ」

芯は、ぎこちない笑顔で俺にそう言った。

なんとなく、そんな笑顔は見たくないと思った。

「嫌なんて言ってない。…疲れすぎ。寝ろ。ルイと晴の試合始まる頃起こすから」

俺は早口でそう言った。

「いやでも、かいも寝るでしょ…?」

芯は驚きながらそう言った。

「寝ない。眠くない。だから寝て」

冷たく聞こえるだろうか。でも、どんなふうに話せばいいのか、わからない。

俺の言葉に芯は躊躇していたが、渋々布団の中に入った。

「…ありがと、かい…」

芯はそう言って、目を閉じた。

はぁ、つっかれた…。

躊躇っていた割に、芯は意外とすんなり寝てくれた。相当精神的にも、肉体的にもきていたんだろう。

俺は芯に目をやった。

やっぱり、来た時と同じような顔をしている。ゆっくり寝て、少しでも疲れをとってほしい。

自分でも珍しいと思う思考、行動だったからか、睡魔もどこかへ行ってしまった。

晦はもう一度、芯の顔を見た。

少しだけ、少しだけだけど、気持ちよく眠れているように見えた。

時計の針が、23時30分を指そうとしていた。

読んでくださってありがとうございました!


今回は、晦の気持ちに変化があったように見受けられましたね。

あの晦が、芯に対してあんなになるなんて、かわいいですよね笑

ですが、いつまでもこれが続くわけじゃない。


次話も、お楽しみに!

気軽にコメントや評価をしていただけると嬉しいです!

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