19.できるだけ長く
開いていただき、ありがとうございます!
前回は、晦と芯の話でした。作者の私が見ても、前回は息抜きのできる回だと思いました笑
そして今回は、慈愛の心が明らかになります。
お楽しみください!
※この作品は、残酷・暴力描写が含まれます
あれから、何週間経っただろう。
広場には、もうほとんど人がいない。みんな戦いで負けたり、勝っても自室に閉じこもってしまうことが多くなっていった。
真夜は広場で目を瞑り、今までの出来事の余韻に浸っていた。
翡翠の戦い方は上手かった。
全ての動きが滑らかと言うか、隙を突く戦い方だ。
でも、殺した後のあの表情が、忘れられない。
鞠も、桃華がいたから勝てたんだろう。桃華が透明な箱にいたから、絶体絶命のあの時に落ち着いて逆転できた。
みんなそうやって戦って、20人いた施設の奴らのうち、10人が生きて帰ってきた。
そして俺たちは、既にA施設の仲間を、家族を、何人か手にかけた。
俺は2人。
慈愛も、柊も同じだ。
桃華と鞠、翡翠は1人。今生き残れてる数人も、同じくらいの人数の仲間を手にかけた。
俺が殺し合った仲間と、俺が見学で見たA施設同士の殺し合いでは、殺された子たちがみんな、口を揃えていっていたことがある。
“自分たちじゃ、上までいけない。”
“生き残れても、嬉しくない。”
“ごめんね、殺して欲しい”
多くの子たちが、互いを傷つけあった後に、そう言った。
殺された子のほとんどが、自分より強いと思ってる人、自分より大切な人に、そう言って死んでいった。
翡翠も慈愛も、柊も桃華も鞠も俺も。
そうやって、生き残った。
しょうがない、なんて思ってない。
後悔だってしきれないくらいしている。
でも、翡翠たちが仲間を殺して、生きて帰ってきたことに、憎悪や恨みなんかこれっぽっちも感じていない。
心の底から、よかったって、ありがとうって思ってる。
だから複雑で、消化しきれない。この先も、一生消化しきれないだろう。
「はぁ…」
真夜は座ったまま膝を抱え、ため息をついた。
「真夜」
すると、後ろから声が聞こえた。
そこには、慈愛が立っていた。
慈愛は少し微笑んでから、真夜の隣に静かに腰を下ろした。
「大丈夫?」
慈愛は笑顔で俺に聞いた。少し顔色は悪かったけど、いつもの笑顔だった。
「どうだろ…微妙。慈愛は?」
慈愛は俺から目を離し、下を向いた。
「俺もかな。」
慈愛は歪な笑みを浮かべながら、そう言った。
翡翠や柊たちは自室にこもっている。無理もない。
今広場にいるのは、俺と慈愛だけだ。
「翡翠たち、当分出てこないよね」
慈愛は悲しそうに言った。
「仕方ないとは思うけどさ…」
慈愛はそう言うと、少しだけ泣きそうな顔になった。
「やっぱ…できるだけ長く、一緒にいたかったな…」
慈愛は顔を伏せ、膝を抱えた。
顔が見えない。
そしてそのまま語り始めた。
「俺ね…この殺し合いのこと、薄々気が付いてたんだ。」
俺は慈愛から目を逸らさず、静かに聞いていた。
「俺と柊、何年か前に施設の外に連れてかれたでしょ?あれ、この戦いの売り込みのためだったんだよ。」
確か、4年くらい前だった。何人かが代表で、施設の人に連れられて外の世界に出た時期があった。
「その時になんとなくね。でも、それと同時に気づいたんだ。」
慈愛は顔を上げた。でも、俺の目は見ない。
「この現実からは逃げられないって。」
俺の心臓が、体から飛び出す勢いで跳ねた。
今まで、慈愛たちがこの事実を俺たちに言わなかった理由が、予想できてしまったのだ。
「だったらいっそさ、知らないままの方が幸せが長く続くんじゃないかって。だから…ごめんね」
慈愛は俺の目を見て謝った。
笑顔のくせに、泣きそうで、少し諦めたような目で。
その目を見た瞬間、俺は思った。
なんで、謝るんだよ。
「謝る必要ないだろ。お前のしたことは、間違ってない。絶対に」
断言できる。
だって、もしそんなこと知ったら、もっと早くに仲間を失っていただろう。
慈愛は少し驚いてから、涙目になった。
「そっか…ありがと」
慈愛は、目のまわりを赤くしながら、くしゃっと笑った。
読んでいただき、ありがとうございました!
初めて慈愛の本当の声が聞けました。
みなさんは、慈愛のあの選択をどう思いましたか?人によっては、真夜と同じ意見かもしれない。他の人にとっては、間違いだと感じるかもしれません。
人によって、考えることが違うと思います。私はそれがおもしろいのです。
ぜひ、コメントして、教えてください!
次話もお楽しみに!!




