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15/17

15.先延ばし

開いてくださり、ありがとうございます!

1週間空いてしまってごめんなさい!

今回は、前回の続き、晦の戦いとなっています。

彼の戦いは、どのような結果になるのでしょうか。


※この作品は、残酷・暴力描写が含まれます。

「かいくん!これ手伝って!」

「晦くん!あっちで喧嘩してる子が…」

小さい頃から、俺はいろんな人に頼られてきた。

「わかった!」

それが苦だと思ったことはない。むしろ、嬉しかった。

「ありがとー!かいくん!」

「かいくんがいると楽だわぁ」

「かいくんありがと!」

頼られて、褒められて、感謝される。しかもそれが、人の役にも立ってる。こんないいことはないと思っていた。

小さい頃は、施設は安定してた。今みたいに治安も悪くなかった。

あの日から、だんだん壊れていった。


なにこれ、走馬灯?

晦は、聖夜に殴られながらそんなことを思っていた。

ほんとにあるんだ、走馬灯って。

意外に心地いいな。

晦は目を瞑った。

このまま、ずっと見てたい。夢みたいに気持ちがいい。

でも、現実はそう優しくない。

騒がしいのだ。ずっと。観客席が。

盛り上がってる感じではない。不安と動揺の声がずっとしている。

「ねえ!脱走してない?!」

「いや、まだ透明な通路の中だし、いいんじゃねぇの、?」

「鍵をし忘れたのか?」

この騒ぎで、相手の攻撃も止まっている。

俺は薄目を開けて、確認した。ぼやっとした視界に、何かが映った。

その瞬間、心臓が跳ね上がった。

「…芯?」

透明な箱から続く、透明な通路に芯が立っていた。

通路は防音機能がないため、声が聞こえてくる。

「かい!待ってて!!助けに行くから!」

観客の声がうるさくて、よく聞こえなかったけど、“助けに行く”。この言葉だけははっきり聞こえた。

「へえ、お仲間が助けにくるってさっ!」

相手の拳が、また顔面に振り下ろされた。

今じゃないって。空気読めよ。

芯が今捕らわれていないのは、司会者含め、観客がこの事実をおもしろがっているからだろう。

でも時間の問題だ。警備員がきたら、100%殺される。

でも今殴られるのをやめたら、またしばらく死ねない。やっと死ねると思ったのに。

止められてたまるかよ。

“かいくん”

なんだ…?

“かいくん!”

芯の声が頭に響く。


「かーいくん!」

晦が10歳の時、芯が初めて話しかけてきた。

「なにしてるの?」

いや、見ればわかるでしょ。

「本読んでる」

俺は短く答えた。芯は、ふーんと言った。

「おもしろい?」

芯はそう聞きながら俺の隣に座った。

「別に。」

俺は冷たく答えた。

少し邪魔だ。肩もくっついてるし、顔も近い。

「わたしも読む!」

芯はそういって、しばらく俺のそばを離れなかった。

この日からだっけ。芯がよく俺に話しかけてきて、俺が芯を鬱陶しく思い始めたのは。


「かいっ!!!」

芯が泣きながら、ステージに続く通路を走ってくる。もうすぐ透明な通路ではなく、観客用の通路に差し掛かる。

「えwあの女出る?!w」

「いやいやさすがにえぐいってw」

「警備員呼びましょうかね…?」

観客も、興味よりも不安と動揺の声が強まり始めた。

「へー…」

相手は薄気味悪い笑みを浮かべた。

「俺あの子と戦ってみたいし、出てくる前に、お前殺しちゃうねぇ」

相手はそう言って、思いっきり拳を振り上げた。

次の瞬間、内臓が、肉が、潰れるような音が会場を支配した。観客席は静まり返り、視線が全てステージに向けられた。

この音は、俺から出た音じゃない。

相手から出た音だ。

俺は相手の鳩尾に、自分の膝をめり込ませた。

そして馬乗りになり、顎や鳩尾に何度も拳を振り下ろした。

相手は声も出せていない。なんなら、状況すら理解できていないだろう。

俺は無言で殴り続けた。

制限時間まで、残り40分だった。

「だ…第一試合終了…。D施設聖夜…死亡。C施設…晦勝利…!!」

司会者の声が、静まり返った会場に響いた。

次の瞬間、観客席からはものすごい歓声が上がった。

「は?!かっこよすぎる!!」

「やばい!やばい!」

「これは、全勝も夢ではないですね…!」

手のひら返しうざ。

俺は殺した相手ではなく、芯に目をやった。


“も・ど・れ”


俺は声に出さず、口を動かして芯に伝えた。

芯は唖然としていたが、すぐに透明な箱に戻って行った。

「…はぁ」

また先延ばしかよ。

読んでくださり、ありがとうございました!


晦は、生き残りたいとは真逆の、死にたいという感情が強い子でしたね。

今の彼なら、あのトラブルで人のために動くなんてこと、私はしないんじゃないかと思っていました。

芯だったから、自分の願望を先延ばしてまで、救ったのでしょう。

本人は無意識でしょうけど笑


次話もお楽しみに!

コメントや評価など、気軽にしてくださると嬉しいです!

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