15.先延ばし
開いてくださり、ありがとうございます!
1週間空いてしまってごめんなさい!
今回は、前回の続き、晦の戦いとなっています。
彼の戦いは、どのような結果になるのでしょうか。
※この作品は、残酷・暴力描写が含まれます。
「かいくん!これ手伝って!」
「晦くん!あっちで喧嘩してる子が…」
小さい頃から、俺はいろんな人に頼られてきた。
「わかった!」
それが苦だと思ったことはない。むしろ、嬉しかった。
「ありがとー!かいくん!」
「かいくんがいると楽だわぁ」
「かいくんありがと!」
頼られて、褒められて、感謝される。しかもそれが、人の役にも立ってる。こんないいことはないと思っていた。
小さい頃は、施設は安定してた。今みたいに治安も悪くなかった。
あの日から、だんだん壊れていった。
なにこれ、走馬灯?
晦は、聖夜に殴られながらそんなことを思っていた。
ほんとにあるんだ、走馬灯って。
意外に心地いいな。
晦は目を瞑った。
このまま、ずっと見てたい。夢みたいに気持ちがいい。
でも、現実はそう優しくない。
騒がしいのだ。ずっと。観客席が。
盛り上がってる感じではない。不安と動揺の声がずっとしている。
「ねえ!脱走してない?!」
「いや、まだ透明な通路の中だし、いいんじゃねぇの、?」
「鍵をし忘れたのか?」
この騒ぎで、相手の攻撃も止まっている。
俺は薄目を開けて、確認した。ぼやっとした視界に、何かが映った。
その瞬間、心臓が跳ね上がった。
「…芯?」
透明な箱から続く、透明な通路に芯が立っていた。
通路は防音機能がないため、声が聞こえてくる。
「かい!待ってて!!助けに行くから!」
観客の声がうるさくて、よく聞こえなかったけど、“助けに行く”。この言葉だけははっきり聞こえた。
「へえ、お仲間が助けにくるってさっ!」
相手の拳が、また顔面に振り下ろされた。
今じゃないって。空気読めよ。
芯が今捕らわれていないのは、司会者含め、観客がこの事実をおもしろがっているからだろう。
でも時間の問題だ。警備員がきたら、100%殺される。
でも今殴られるのをやめたら、またしばらく死ねない。やっと死ねると思ったのに。
止められてたまるかよ。
“かいくん”
なんだ…?
“かいくん!”
芯の声が頭に響く。
「かーいくん!」
晦が10歳の時、芯が初めて話しかけてきた。
「なにしてるの?」
いや、見ればわかるでしょ。
「本読んでる」
俺は短く答えた。芯は、ふーんと言った。
「おもしろい?」
芯はそう聞きながら俺の隣に座った。
「別に。」
俺は冷たく答えた。
少し邪魔だ。肩もくっついてるし、顔も近い。
「わたしも読む!」
芯はそういって、しばらく俺のそばを離れなかった。
この日からだっけ。芯がよく俺に話しかけてきて、俺が芯を鬱陶しく思い始めたのは。
「かいっ!!!」
芯が泣きながら、ステージに続く通路を走ってくる。もうすぐ透明な通路ではなく、観客用の通路に差し掛かる。
「えwあの女出る?!w」
「いやいやさすがにえぐいってw」
「警備員呼びましょうかね…?」
観客も、興味よりも不安と動揺の声が強まり始めた。
「へー…」
相手は薄気味悪い笑みを浮かべた。
「俺あの子と戦ってみたいし、出てくる前に、お前殺しちゃうねぇ」
相手はそう言って、思いっきり拳を振り上げた。
次の瞬間、内臓が、肉が、潰れるような音が会場を支配した。観客席は静まり返り、視線が全てステージに向けられた。
この音は、俺から出た音じゃない。
相手から出た音だ。
俺は相手の鳩尾に、自分の膝をめり込ませた。
そして馬乗りになり、顎や鳩尾に何度も拳を振り下ろした。
相手は声も出せていない。なんなら、状況すら理解できていないだろう。
俺は無言で殴り続けた。
制限時間まで、残り40分だった。
「だ…第一試合終了…。D施設聖夜…死亡。C施設…晦勝利…!!」
司会者の声が、静まり返った会場に響いた。
次の瞬間、観客席からはものすごい歓声が上がった。
「は?!かっこよすぎる!!」
「やばい!やばい!」
「これは、全勝も夢ではないですね…!」
手のひら返しうざ。
俺は殺した相手ではなく、芯に目をやった。
“も・ど・れ”
俺は声に出さず、口を動かして芯に伝えた。
芯は唖然としていたが、すぐに透明な箱に戻って行った。
「…はぁ」
また先延ばしかよ。
読んでくださり、ありがとうございました!
晦は、生き残りたいとは真逆の、死にたいという感情が強い子でしたね。
今の彼なら、あのトラブルで人のために動くなんてこと、私はしないんじゃないかと思っていました。
芯だったから、自分の願望を先延ばしてまで、救ったのでしょう。
本人は無意識でしょうけど笑
次話もお楽しみに!
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