13.男子学生
開いてくださり、ありがとうございます!
慈愛の試合を見届けていただき、ありがとうございます。
今回は、誰の覚悟と想いを垣間見ることができるでしょうか。
※この作品には、残酷・暴力描写が含まれます
昨日の出来事から、あっという間に1日が経ってしまった。
芯はベッドの上で考え事をしていた。
“明日の試合は、晦。そいつからだからな”
あの言葉が、ずっと頭を支配している。
「かい…」
晦は、私の知る限り、物静かで何を考えているのかわからない性格だ。施設でも、誰かと話すこと自体が珍しいのだ。
でも、強いのは知ってる。だから、勝つって信じたい。
晦のことを考えていると、突然ドアが開く音がした。
「なに…!?」
私はベッドから飛び降りて、構えた。
「うわっ!ご、ごめん!」
ドアを開けたのは、晴ちゃんだった。私の声に驚いて、少し後退りをした。
その後ろには、紫陽ちゃんと紫愛くんもいる。
「あ、いや!大丈夫だよ!」
私は両手を振って、明るく答えた。
晴ちゃんは少し歪な笑顔で、紫陽ちゃんと目を合わせた。
その行動に、少し違和感を感じた。
「なんで、私のところにきたの?」
私がそう聞くと、晴ちゃんは少し下を向いた。
「えっと…かいくんの試合…見学したいなら来いって昨日の警備員さんが。芯ちゃん、くる…?」
晴ちゃんは気まずそうに言った。
あの歪な笑顔の理由は、これだったのか。
晦の試合。本音は、見るのが怖い。負けちゃうんじゃないかって。
ちがう、だめ。そんなこと考えちゃ。
かいは勝つよ。
私は覚悟を決めた。
そして、部屋から一歩踏み出し、晴ちゃんの目を見た。
「行く。ありがとう、呼びにきてくれて」
私がそう言うと、3人はほっとした表情になった。
「行くならはやくしろ。」
昨日の男警備員はイライラしている様子で私たちに呼びかけた。
急いだ方がいい。
私たちは早足で、男警備員について行った。
歩いていると、紫陽ちゃんが私の隣に駆け寄ってきた。
「つらくなったら部屋に戻れるらしいから、無理しないでね」
紫陽ちゃんは私にそう耳打ちした。
優しいな、この子達は。
「大丈夫よ!ありがとね!」
私はできるだけ明るく答えた。そんな芯を見た紫陽は、少しだけ悲しそうな表情を浮かべた。
しばらく男警備員について行くと、汚れた白く、長い廊下から透明な通路へと様変わりをした。
その先には透明な箱があり、その中に入れと言われた。
「騒いでも無駄だからな。防音だからよぉ。」
男警備員はそれだけ言って、乱暴に扉を閉めて出て行った。
中には、私たちの他にルイくんとその取り巻きの女の子たちがいた。
「かいくん勝てるよね…?わたし、かいくん死んじゃったらかなしいよぉ…」
1人の取り巻き女が、ルイくんの右腕に自分の腕を絡ませながらそう言った。
「君は俺だけじゃなかったの?」
ルイくんは、取り巻き女の頬に優しく触れながら言った。
「うっ、うそです…!ルイくんだけだよ…♡」
取り巻き女は、まんざらでもない顔をしている。
なんでここにいるんだよ。晦を使って媚売るなんて、絶対許さない。
私の中には恐怖をも上回る怒りが込み上げてきた。
「芯ちゃん…深呼吸」
紫愛くんが私に声をかけた。
手…手というか、拳に力が籠っていることに気がついた。
紫愛くんの声がけがなかったら、あの女に何かしでかすところだった。
「うん、ありがと紫愛くん…」
私は深呼吸をした。息を吐いたと同時に、透明な箱の中に声が響いた。
「それでは、試合時間となりましたので始めて行きまぁす」
男の声だ。気だるそうな声で、やる気も生気も感じられない。
「あっ晦くん…!」
紫陽ちゃんがステージを指差して言った。
そこには、運動着のような黒いジャージを着た晦と、おそらくD施設の子で、学ランを着た背丈の高い男の子が立っていた。
「えー、C施設からは晦、D施設からは聖夜です。テーマは男子学生」
テーマ?なんのテーマ…?
「ねぇ、テーマってさ、服のテーマかな。相手学ランだし、かいくんもスポーツ服だし…」
晴ちゃんはおそるおそるそう言った。
「確かに…多分あってる。…最悪」
紫陽ちゃんは、顔を顰めながら言った。
紫愛くんも、顔色が悪い。
殺し合いにテーマ決めるとか、ほんとにどうかしてる。
ステージに立っている晦は、いつもとなにも変わらない様子だ。それがやけに怖い。
「それでは…」
さっきまでのやる気のなさそうな司会者の雰囲気が、一瞬で変わった。
「今宵も、皆様にとって濃い夜になることを祈っております」
読んでいただき、ありがとうございました!
晦の試合を見届ける覚悟を決めた芯たち。
人の命を媚びる道具として使うC施設の女たち。
なんの変哲もない晦。
この後の彼らの運命はどうなるのでしょう。
次話もお楽しみに!
コメント、評価など気軽にしていただけると嬉しいです!




