12.覚悟の結果
開いてくださり、ありがとうございます!
真夜の言葉や施設の家族の存在、そして慈愛自身の覚悟の結果、慈愛は生きて帰ってくることができた。
だが、事実としては、慈愛は人を殺している。
そんな事実を、慈愛を、施設のみんなはどう受け止めるのか…
※この作品には、残酷・暴力描写が含まれます。
慈愛の試合が終わり、おそらく今日の最終試合、4試合目が終わりを迎えた。
A施設の人間は、慈愛のみが生き残った。
時計の針が、0時を指そうとしている。
慈愛は、真夜に言った。
「戻る?」
真夜はこっちを向かない。顔色が悪く、強く握られてる拳が、震えている。
これはおそらく、恐怖じゃない。
怒りだろう。
「…あぁ」
真夜は短く答えた。
俺と真夜は、桃華と鞠に肩を貸して、女警備員と共に元来た場所を戻っていった。
その道中で、女警備員は短く説明をした。
「次回の試合は1週間後ですので、それまでは施設と同様にお過ごしください。」
女警備員は笑顔でそう言った。
その言葉に、俺たちは少しだけ救われた。
このまま自室に1人でいたら、どうなっていたか。
俺たちは女警備員に連れられて、自室とは違う場所に来た。
そこは、施設と同じような場所だった。
青空の映し出されている天井、草木が植えられている広場と、みんなで食べたり寝たりしていた部屋。
そして、まだ戦ってないA施設の子たちは、みんなここにいる。
俺は、心底ほっとした。
「施設と同じ造りになっておりますので、いつも通り過ごしていただいて結構です」
女警備員はそれだけ言うと、この部屋を出た。
「慈愛ぁっ…!!!」
俺は、声の方向に顔を向けた。すると、翡翠が広場から、走ってこっちに向かっていた。
そしてすごい勢いで抱きついた。
「わっ…!」
俺はバランスを崩して翡翠と一緒に倒れた。
芝生があるとはいえ、結構な衝撃だった。
「翡翠!」
「慈愛!大丈夫?!」
真夜と桃華が驚いたような声で心配した。
鞠もおろおろしている。
「…翡翠?」
俺は、少し体を起こして翡翠の名を呼んだ。
翡翠は顔を上げることなく、俺の胸に顔を埋めている。
「慈愛っ…じあぁ…」
翡翠は、俺の名前を何度も呼びながら泣いている。
俺の中にあったなにかが、ぷつっと切れたような音がした。
「ただいま…翡翠」
俺は倒れたまま、翡翠を強く抱きしめた。
生きて帰ってきて、よかった。
心の底から、そう思えた。
慈愛と翡翠が抱き合っている。
真夜は、そんな2人を静かに見ていた。
俺は、慈愛の表情が柔らかくなったのを見た。
愛おしそうな、安心しきったような、本当の意味でまた優しい顔になっていた。
「じあ!」
「慈愛くん!」
施設の子たちが、慈愛に向かって走ってきた。
みんな、泣いている。泣きながら慈愛に抱きつく子もいる。
慈愛は翡翠を上に乗せたまま、その子達を抱きしめた。
「帰ってきた…!よかったよぉ…」
「おれ…慈愛まで帰ってこなかったらどうしよって…」
みんな口々に、今までの不安と恐怖、そして安堵の声を慈愛にかけていた。
俺は、そんなみんなを遠くから眺めてるやつを、1人見つけた。
「柊」
俺はそいつに声をかけた。
「…なんだよ」
柊の目が赤い。
ほんと、こいつは素直じゃないな。
「行かなくていいのか?」
俺は柊の横に腰を下ろし、少し揶揄うように聞いた。
柊は俺から目を離して、慈愛たちの方に目を向けた。
「今じゃねぇだろ。みんな行ってるし。それに、あいつ疲れてんだろ」
柊は、当たり前だろというような顔をしていた。
やっぱこいつは素直じゃない。
俺は柊の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「は?!おいやめろ...!おい!!」
読んでくださり、ありがとうございました!
試合の結果を、慈愛の覚悟を、施設のみんなは受け止めてくれましたね。
帰ってきてよかった、おかえり。
そう言ってもらえて、慈愛はとても救われたでしょう。
この世界の仕組みは、何ひとつ変わっていない。
それでも、その中で少しでも笑顔になれる瞬間があったという事実は、とても大きいのではないでしょうか。
だが、この地獄はまだ、始まったばかりなのである
次話もお楽しみに!
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