奇襲
その攻撃的なノックをする人物は、すくなくともパーシーとチャーリーではないことがわかる。
そんなことを考えている間にも、攻撃的なノックは執拗なまでに続いている。よくきいてみると、攻撃的なだけでなく複数人がノックしているように感じられる。
「どうぞ」
とりあえず、そう言うしかない。
「『どうぞ』ですって? えらそうに、そっちが開けなさい」
「そうよ。わたしたちに扉を開けさせるなんて、何様のつもり?」
驚いた。
扉の向こうからきこえてきた声は、まぎれもなくレディのものだったからである。
そう認識したときには、扉へ向かって歩いていた。
「いますぐ開けます」
そう告げながら。
「当り前でしょう。はやくなさい」
「そうよ。グズグズしないで」
扉を開け、さらに驚いた。
扉の向こうに、瓜二つの美女が立っている。
しかも胸がありえないほど豊か。それがキラキラ光るド派手な乗馬服の上からでもよくわかる。
「なにこれ? このちんちくりんが陛下の?」
「これって成熟したレディなの? 子どもじゃないの?」
瓜二つの美女たちが同時に口を開いた。
(彼女たち、いったい何者なの?)
おもいっきりうしろへひきながら、当然抱く疑問で頭の中がいっぱいになった。
しかも、「これ」呼ばわりされてしまった。
「あの、どちら様でしょうか?」
わからないときには、素直に尋ねるのが一番手っ取り早い。だからそうした。
「『どちら様でしょうか?』、ですって?」
「わたしたちを知らないなんて、弱小国の傷物だけはあるわよね」
彼女たちは、また同時に言った。
同時だったけれど、なんとかききとれた。
片方のレディが言った内容は、彼女たちがわたしのことを知っていることを示している。
「これが陛下の婚約者だなんて信じられない」
「これが陛下の未来の妻だなんて信じられないわ」
彼女たちは、またまた同時に言った。
(っていうか、彼女たちはいつも同時に発言するのかしら?)
いまの素朴な疑問は、彼女たちに尋ねるつもりはない。面倒くさいことになるでしょうから。
「いい加減にしないか」
「レディに近づくんじゃない」
そのとき、彼女たち越しにパーシーとチャーリーがやって来るのが見えた。
双子の将校たちは美貌を真っ赤にし、すごい勢いでこちらにやって来る。
その瞬間、彼女たちが弾かれたようにうしろを向いた。頭だけではない。体ごとうしろへ向いたのである。
「パーシー、チャーリー、ろくでなしたちね」
「パーシー、チャーリー、バカ者たちね」
彼女たちは、同時に罵った。
「きいたか、チャーリー?」
「ああ、きいたよ。パーシー」
パーシーとチャーリーは、彼女たちの前までやって来ると立ち止まって美貌を不機嫌そうに歪めた。
というか、ほんとうにオーディントン国は双子率が高い。
兵士たちの中にも双子がたくさんいる。双子どころか、三つ子や四つ子なんて兵士もいる。この駐屯地の中での最高は五つ子で、同じ顔が五つもあったら圧巻である。いつも感心してしまう。
そしてオーディントン国での最高は、七つ子だったそうである。
いまではなく、二代前の国王の時代だったらしいけれど。
七つ子だとお母様が育てるのが大変なことは当然だけど、産むときはそれこそ命がけだったに違いない。
七つ子のお母様はすごすぎる。同じレディとして、尊敬せずにはいられない。




