えっ、ほんとうに?
「ああ、そこですか」
右隣のパーシーが言った。
「そこ、気にするところなのでしょうか?」
左隣のチャーリーも言った。
「わたしはウォーターズ帝国の皇帝の元妻とはいえ、政治経済に明るいわけではありません。そもそも元夫である皇帝じたい、それらに興味がありませんでしたから。その為、宰相が実権を握っていました。皇帝は、お飾りにすぎない存在といっても過言ではありません。そういう国の末路がどうなるのか? 書物にたとえるのはよくないと思いますが、たいていはよくないことが起こりますよね。この大陸のあらゆる国々の歴史をみても同様です」
それこそ、実権を握っている者による反乱などが起こる。それは、そのまま大混乱へと続く。
「その通りです、レディ。あなたの言う通りだと思います」
左隣でチャーリーが同意した。
「ただ、それは他の多くの国のことです。このオーディントン国にはあてはまらないのです」
右隣でパーシーが意外なことを言った。
「王都では、宰相が実権を握って政治を行っています。それは、他の国々と同じです。わが国が他の多くの国々と違うのは、そのさきなのです。野心を抱くならいくらでも抱けばいい。簒奪や謀反を起こしたければ起こせばいい。国王は、いくらでも受けて立つというスタンスなのです」
「なんですって?」
驚きすぎて声が裏返ってしまうほど大声を出してしまった。
「こ、国王はいつでも受けて立つですって? いったいなにを?」
おそるおそる尋ねると、彼らはそっくりな美貌を見合わせた。それから、同時にこちらを見て「ニヤリ」と笑った。
「直接でも間接でも、向かってくるなら向かってこいということです。まぁ、たいていは暗殺者や近しい者を買収して殺そうとしてきますね」
「はい?」
まったく想像がつかなかったというわけではないけれど、それでもいまのチャーリーの答えは想像の範疇をこえていた。
「あの、ヴィクター様を殺す?」
「ええ、レディ。陛下だけではありません。歴代の国王たちは、いつもそんな暗殺者や刺客に狙われているのです。それで、迎え撃つわけなのです」
「パーシー、大丈夫なの? その、ヴィクター様、そんなに命の危険にさらされていて、ふつうにしていらっしゃっていて」
「レディ、あなたも見ての通りです。ピンピンしゃんしゃんしているでしょう?」
パーシーの満面の笑顔に返す言葉がなかった。
「レディ、たしかにわれわれの祖先は荒くれ者です。その血が受け継がれていることもたしか。だからこそ、他国では考えられないような血なまぐさいことがしょっちゅう起こったりします」
続くパーシーの言葉に、頷くしかない。
「歴代の国王も陛下もその力は絶大であり最強。いくら暗殺者が群れをなして襲いかかろうと、返り討ちどころか血祭りにあげるだけの腕は備えているというわけです」
「はぁ……」
チャーリーの説明には、それしかでなかった。
「まぁ、荒っぽい分他国のように謀略とか策謀とか、ジメジメいじいじするようなことはありません。力こそすべて。男の本質を地でいっているというわけですね」
(いえ、チャーリー。そういうのはちょっと違うかも)
「あっですが心配はいりませんよ、レディ。陛下と夫婦になったからといって、あなたになにかあるというわけではありません。そこは、ご安心を」
「パーシーの言う通りです。先程も言った通り、どれだけ暗殺者がおしよせようと、陛下が『ちょちょいのちょい』でやっつけてしまいます。あなたは、かすり傷ひとつ負うことはありません」
二人は、楽しそうに笑った。




