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国王とカフェでスイーツを

「ふんっ! おれは視察の続きがある。行きたければおまえたちだけで行けばいいだろう? いちいちおれを誘うな」


 それでも、ヴィクターは頑なに拒否をした。


「陛下、そんなことを言わずに。だいたい、いつも視察なんて適当で、町の人たちと話をしたりカフェでさぼったりしているでしょう? どうして急にそのように真面目になるのです?」

「チャーリー、そ、そんなことはない。みながちゃんと暮らせているか、くまなく見てまわっているではないか」

「だったら、今日くらいはさぼりましょう。せっかくいい天気ですし、テラス席でワイワイ喋りましょう。スイーツを食べ、レモネードを飲みながらね」

「しつこいな、パーシー。いいかげんにしろ」


 ヴィクターは、馬上で大きな体全体を使って拒否し続ける。


 彼の巨躯を乗せている黒馬もまた、すごく大きい。


 その黒馬と目が合った。


 わたしと同じ毛色と瞳の色を持つ巨大馬に親近感がわいてくる。


 微笑むと、巨大馬のつぶらな瞳がすごくやさしい表情をたたえたような気がした。


『どうした、パーシー、チャーリー? おれを無理矢理連れて行け。縄でくくるなり鎖でしばるなりして、おれをカフェに連行しろ』


 そのとき、ヴィクターの「真実の声」が心に流れ込んできた。


「まったくもうっ! 陛下、ここで言い争っていては町の人たちの邪魔になるだけです。とにかく行きましょう。陛下がイヤなら、おれたちはテラス席に、陛下は店内のテーブル席に案内してもらえばいいでしょう」


 パーシーがビシッとキメた。


「だから、イヤだと言っているだろう?」


 ヴィクターの声はますます大きくなっていく。


『パーシー、その調子だ。これはチャンス。カフェに行き、自然な感じで彼女の隣に座りたい。ぜったいに彼女の隣に座りたい』


 わたしの隣に座っても、とくになにもないと思うけれど。


 ヴィクターの「真実の声」は、ずっと「彼女の隣に座りたい」と主張している。


 内心で苦笑しつつ、ゾロゾロとカフェに向った。



 そうしていま、カフェにいる。


 カフェに行ってからもひと騒動だった。


 ヴィクターが「店内の席にひとりで座る」というところを、パーシーとチャーリーがテラス席に座るよううまく言いくるめ、もとい勧めた。結局、テラス席でわたしといっしょのテーブルに座った。


 親衛隊の隊長や隊員たちは少し離れた席に陣取り、パーシーとチャーリーはいっしょのテーブルについた。


 しょっちゅう来ているので、カフェの可愛らしい店員さんは慣れているみたい。


 注文もなにも取らないままで、しばらくしてレモネードと「本日のケーキ」であるチョコレートケーキが運ばれてきた。


 カフェじたい初めての経験であるわたしは、なにもかも新鮮でめずらしい。


「うわぁ、美味しそう」


 力いっぱい感嘆の叫び声をあげてしまった。


「実際、美味しいのです。さあ、食ってみて下さい」

「ほら、早く。巨漢のだれかさんに取られてしまいますよ」

「だれが取るものか。スイーツなど、レディや子どもの食い物だろうが」


 チャーリー、それからパーシーに勧められた。


 パーシーにいじられたヴィクターは、プリプリ怒っている。


 せっかくだから、さっそくいただくことにした。


「いただきます」


 手を合わせて感謝を示す。


『うわあああああっ! 彼女、可愛すぎだろう? スイーツ万歳! 可愛い彼女には、スイーツがピッタリだ。いっそスイーツになって食べられたい』


 ヴィクターの「真実の声」が心に流れ込んでくる。


(うわっ! いくらなんでも彼を食べるなんて……。 その反対なら想像出来るけど)


 もともとわたしは生贄で、生贄として差し出した元夫は「煮るなり焼くなり」なんて言っていた。


 わたしがヴィクターに煮るなり焼くなりされるのならわかるけれど、わたしが彼を調理するとしたらどうすればいいの? 煮たり焼いたりって出来るものなのかしら?


 そんなくだらなくてどうでもいいことが浮かんできたので、頭を軽く振って追いだした。


 それからフォークでチョコレートケーキを一口分切り分け、頬張った。

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