じつは、陛下はいい人なのです
「ありがとうございます。是非、お願いします。それと、夜着を貸していただいてありがとうございます」
「男物で申し訳なかったですね。大きかったでしょう? おれがまだ一度も着用していない物ですから」
「チャーリー、申し訳ありません。夜着ですから、かえって大きい方がよかったです。お蔭様でラクに眠れました。ラクに眠りすぎて、起きたらお昼をすぎていたというわけですね」
冗談めかして言うと、二人はいっせいに笑声を上げた。
「あの、レディ。陛下のこと、申し訳ありません。根はいい人なのです。レディが苦手なもので。けっしてあなただから、というわけではありません」
パーシーが真剣な表情で訴えてきた。
「おれたち、あなたが政略結婚の道具だとか人質だなどとは思っていません。ましてや生贄などと。強面不愛想不器用な陛下の花嫁だと思っています。いいえ。期待しているのです。思いよがりかもしれませんが、あなたがいつか陛下のことをわかってくれて彼を尻にしいてくれるかなと」
「なんですって? チャーリー、まさかわたしはそこまで強くはありませんよ。それ以前に、ここにおいて下さるだけで、わたしは満足しています。ヴィクター様の花嫁だなんて、とてもではないですがつり合いがとれません。荷が重すぎます。ヴィクター様には、もっといいレディがいるはずですよ」
「そんなことをおっしゃらず、どうか長い目で見てやって下さい。とりあえずここでのんびりされて、彼を嫌いにならないで下さい。じつは、あなたのことは部下たち全員、つまりこの駐屯地にいる全員が知っていて、あなたを陛下の花嫁にすると張り切っているのです」
「な、なんですって? それってパーシー、あなたとチャーリーが言いふらした、失礼しました、二人が教えたのですよね? たしか、昨夜陛下はあなたたちにわたしの存在は秘密にするようにとか、そのようなことを言っていたような気がしますが」
「あー、そうかもしれませんね」
チャーリーが言い、双子の兄弟はおたがいの顔を見合わせた。
「ウォーターズ帝国からレディを送ると一方的に連絡があった時点で、兵士たちに……」
パーシーは、そこで口ごもった。
(呆れたわ。その時点で兵士たちに言いふらしたのね)
呆れ返りはしたけれど、国王はそれだけみんなに慕われているということがわかる。
(って、そんな悠長なことを言っている場合ではないわ。わたしってば、そうとう期待されているわけね。国王の花嫁としての期待を)
急に体と心が重く感じられ始めた。
プレッシャーに違いない。
(だから、みんなあんなにも親切なのね)
すべてが腑に落ちた。
(わたし、大丈夫?)
自由という言葉がわたしの目の前から駆け去って行く気がするのは、きっと気のせいではないわよね?




