ここに置いてもらえるようになった
『愛くるしい彼女には、ゆっくりしてもらねば。心身ともにリラックスしてすごしてもらう。当然、だれの目にも触れさせるものか。こんなに可愛い彼女を、荒くれ兵士たちに見せてなるものか。そうだな。もしも見せびらかすとすれば、それは彼女の心を射止めてからだ』
なんと言っていいのかしら? 彼の真心がすごすぎる。
「パーシー、チャーリー、彼女から目を離すなよ。四六時中、見張っているんだ。おまえたちが出来ないときは、親衛隊の既婚者に見張らせるんだ。独り身だと、万が一にも彼女に籠絡されてはいかんからな」
「見張る必要などないと思いますがね。ですが、とりあえず了解しました」
「それで、彼女にはなにをしてもらいますか?」
「チャーリー、彼女にはなにもさせなくていい。無能者は無能者らしく、適当にときをすごさせればいい。居住区域内であれば自由にさせていい。ただし、見張りは怠るな」
「了解」
見張られてはいるけれど、自由にすごしていいらしい。
『これで彼女はおれの近くにいてくれる。あとは、どうやっ彼女に近づくかだ。どうやって彼女に興味を持ってもらい、認めてもらうかだ。難しい使命だが、おれは負けん。ぜったいに勝つ。せっかく訪れたチャンス。彼女の存在は、いまやおれの生きがいだ。彼女をしあわせにする為に、おれは努力を惜しまん。それを考えれば、ウォーターズ帝国の愚かな皇帝に感謝せねばな。彼女をよこしてくれたことを。彼女との出会いのきっかけを与えてくれたことを』
初対面のわたしのことを、これほど想ってくれているということが信じられない。だけど、信じたい。
うれしさと感動で心がいっぱいになってしまった。
「レディに必要な物を揃えてよろしいですね、閣下?」
「パーシー、勝手にしろ。仕方がない。不自由をさせたら、おれがケチだと思われるからな」
『パーシー、ナイスだ。ドレスでも装飾品でも馬でも剣でも、彼女が望む物をなんでも揃えてくれ』
いえ、陛下。いまのわたしにドレスは必要ないですし、装飾品に興味はありません。馬はここにいっぱいいますよね? というか、居住区域から出ることが出来ないので馬には乗れませんし、剣はだれかを斬ったり刺したりする予定はありませんので、買っていただいても宝の持ち腐れになるだけです。
国王の「真の声」にツッコまずにはいられない。
「ヴィクター・ホワイトウェイ。おれは、きみの国王ではない。だから、陛下などと呼ぶな」
彼は、威厳を込めてそう命じた。
『愛くるしいきみよ、どうか陛下などと呼ばないでくれ。きみとは、ぜひ名で呼び合いたい。恋人、婚約者、夫婦の間柄のように』
彼の真実の声はそう切望しているけれど、いくらなんでも親し気に名前で呼ぶわけにはいかない。
「では、ヴィクター様はいかがでしょうか?」
「勝手にしろ」
彼は、手を振ってわたしを追い払う仕草をした。
「失礼いたします」
だから、一礼して背を向けた。
『おやすみ、愛しいきみよ。ゆっくり休むんだ。明日、会うのが楽しみでならないよ』
彼の「真実の声」を背中でききながら、執務室をあとにした。




