安直
水の中を走行できる。
地上のファッティにはない機能だ。いや、地上に池があればファッティも水中歩行できたかもしれない。
(え? あれ……?)
ファニィと少年は息ぴったりの連携作業で柱の下の男の子を救い出したのだが……
自動操縦のはずのファニィが本当に少年と息ぴったりなのだ。
まるで少年の意思を理解できてるよう……
シムは驚愕する。
(なるほどね、こんな能力があるんだ……)
シムは、少年がファニィを操っているのに気づいた。
それと少年がファニィではなくファッティと呼んでいるのにも気づいた。
(地上で暮らしてた少年だから、天空岩でのファッティの呼び名を知らないのかな?)
なんてシムは思った。
それが誤解だったと気づくのは、もう少し後のこと。
*
それから、たくさんの少年の記憶と思いがシムの中に流れ込んでくるのだった――。
少年とファニィが陸に引き上げたのはタツキじゃなく、その兄のヤイノだ。
少年はヤイノには会ったことがある。
そして、まだ赤子だったタツキにも――。
少年はタツキを大事に思っていた。
おそらく、シム以上に。
少年はシムと一緒に生活するタツキを見守ってもいた。
『原型を作ったのはドワーフらしいよ。改良したのは人間で、カスタマイズしたのは竜人で…… シミュレーションドールのシムなんて安直な名前をつけられたって思うけど、僕は気に入ってる』
シムがタツキにそんな説明をしていた。
――安直で悪かったな。
少年がそう毒づく。
――あの時は死にかけてたんだ。しょうがないだろ。
少年のそんな思いがシムに伝わって来た。
*
大噴火の後――。
地上の居住区は壊滅状態だった。
少年は横たわっていた。
体はもうボロボロだ。
手足の感覚はない。いや、もう手足がないのかもしれない。少年にはそれを確認することが出来なかった。
ふと気配を感じた。
少年は目を開ける。
赤い色が見えた。
目を凝らすと、それは赤い大きな竜。
――ここは死後の世界?
少年はそんなことを思った。




