インストール
「生きてるか?」
赤い竜が少年を見下ろしていた。
はいともいいえとも答えかねる少年だった。
少年は竜を見ていた。
本当に大きな竜だ。
こんなに大きな竜は見たことない。
少年は夢か幻を見てるのかと思った。
「生きてるようだな」
少年の体が宙に浮く。
竜の仕業のようだ。
竜は自分の目に近づけ、じっくり少年を見ている。
少年の脳裏に、魔法のシールドで護られた天空岩が見えた。
その偉業を目の前の竜がやり遂げたのだ。
違う映像も見えた。
海がある。水平線の向こうへと続く海。天空岩にある池とは大違いだ。
――これは、かつてのこの星……
それはこの竜の記憶だった。
少年が竜の記憶を見てるのと同様に、竜も少年の記憶を見ていた。
「なぜ、あの子どもを助けた?」
竜が言う。
「なぜ、自ら魔導エレベータに乗らなかった?」
愚門だ、と少年は思った。
喋ろうとしたが声が出なかった。
――喋らなくていい。思えば伝わる。
竜の声じゃない声が少年に聞こえた。
――アッゼを残して自分だけ助かるなんてできないよ。
とはいえ、そのアッゼが助かったのかどうか、この時の少年にはわかっていなかった。
――それに、居住区を住みやすくするのが僕の使命なんだから。その僕がこの地を離れるなんてあり得ないよ。
――感心だな。
竜は言う。
天空岩を護ったこの竜はもっと感心だ、少年はそう思った。
これだけの偉業を成し遂げたこの竜は相当弱ってる、少年にはそれがわかった。
そして、すでに死を覚悟している、ということも。
――提案がある。ワレの魂をインストールせよ。
それがどういうことか少年にはよくわからない。
そんなことが出来るのか、竜に見える目の前にあるのは何かのプログラムなのだろうか?
だが悩む暇はない。
竜も少年も時間が残りわずかなのだ。
――インストールせよ。
声が脳にぐわんぐわん響く。
――インストールせよ、インストールせよ。
少年は頷くのだった。




