AGESA
オレとミズキは高田君と共にキャンパスを歩いた。各所で部活やサークルが新入生を獲得しようと賑わっていた。
「サガンはサークルとか決めたの?」
「いや、まだ決めていない。ミズキは?」
「アタシも決めてないよ。団体行動は苦手だしね」
「じゃあ、どこにも入らないの?」
「うーん、サガンと一緒なら入っても良いかな?」
まるっきり恋人同士の会話ではないか。
「オレ達は楽しそうなサークルに入ろうと思っているんだけれど……」
「楽しそうって? 女の子がいっぱい居るところとか?」
「まあ、そんなところかな」
「高田君はどんなサークルが良いの?」
突然ミズキに話しを振られた高田君は、声を上ずらせながら答えた。
「僕は……、運動はダメだし、アウトドアも苦手なんですよね。インドアであまり行動的では無い所が良いですね」
ミズキは素敵な笑顔を高田君に向ける。高田君はうつむいてしまった。
「それじゃあ女の子にモテないよ! アクティブなサークルの方が良いんじゃない?」
「僕には無理ですよ。アクティブなんて……、やっぱり無理です」
「えー、もしかして高田君ってオタク?」
「ミ、ミズキ! 失礼だろう! 高田君ごめん。こいつ何時もこんな調子で……」
「い、良いんですよ。オタクと言うほどでは無いにしても、似たようなものですから」
高田君は完全に卑屈モードに入ってしまった。
「へー、高田君はどんなのが好きなの? アニメとかゲームとか?」
「そうですね、アニメもゲームも好きです。ゲームはオフライン系ですけれど。ゲーム内まで他人と協調するのは嫌な方で……」
「サガンと同じ様なこと言ってる! サガンもオンラインゲームは嫌だって言っていたよね」
確かに言った記憶が有る。記憶が有るって言うより、今でもそう思っている。何故ゲーム世界に入り込んでまで、他人とコミュニケーションを取らなければならないのか解らない。自分のやりたい時にやりたいだけゲーム世界に入る。そして、自分のやりたいようにしたい。リアルではそんな事は不可能なのだから、せめて仮想世界では他人に干渉されたくないのだ。
そんな会話をしながら、新入生勧誘で賑わうキャンパスを歩き回った。そして辿り着いたのは、一番外れのもっとも目立たない所で、ひっそりと新入生を勧誘しているサークルだった。
サークル名は「アニメ&ゲームサークル、AGESA」たぶん最初のAはアニメのAだろう、しかし次のGEは? ゲームならばGAMEだからGAだろう。最初と最後のGとEを取ったのだろうか? だとしても、最後のSAは理解不能だ。サークルだとすればCIRCLEになるのでSもAも出番が無いはずだ。やはり、ローマ字表記の略と考えるべきなのだろうが、大学のサークルとしてどうなのだろう?
「アニメとゲームだって! 高田君とサガンにピッタリなサークルじゃない? ここにしちゃえば?」
ミズキが無責任な事を言い出す。困ったオレは高田君の方を見た。すると、高田君の目が、今までに(と言ってもここ数日だが……)見た事も無い輝きを放っていた。
「嵯峨君! ここだよ。僕達が入るべきサークルはここなんだよ!」
「ちょっと待ってよ。高田君、よーく考えようよ。このサークルはどう見たって女子は多くないと思うよ。当初の目的を憶えている?」
オレの言葉など、高田君の輝く瞳の前では無力だった。
「じゃあ、ここにしましょうよ。ね、サガンも良いでしょう?」
オレの言葉と違って、ミズキの言葉はオレまでも巻き込む大きな力を発揮した。
結局、高田君・ミズキ・オレの三人は「AGESA」に入ることとなった。




