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バラ色のキャンパス生活は?

 坂崎先生とアイカの結婚式当日、オレとミズキは式場の入り口で待ち合わせをしていた。早めに着いたオレは手持無沙汰を誤魔化す為、スマホの画面を眺めていた。

「おまたせっ」

 オレの背中に、ドレス姿のミズキが声をかけた。振り返ったオレは息をのんだ。

「カ、カワイイ」もちろん声には出していない。

 オレの知っているミズキの服装は、高校の制服とジーンズ姿だけだった。



 高校卒業後、ミズキはオレと同じ大学に進学した。高校時代のミズキは、才色兼備そのものだったから、オレとミズキの学力差はかなり有ったはずだ。それなのにオレと同じ三流私立大学に進学した事は驚きだった。ミズキならば、一流大学でも合格するだけの実力が有ったはずだ。

 入学して数日が経った頃だった。オレは最近知り合った友人と一緒に、どんなサークルに入ろうか? どんなサークルに入ったら女子と親しくなれるか? などと話し合っていた。

 そんな時、スマホの鳴動と共にディスプレイがミズキの名前を表示した。オレとしては、大学生になってまで高校時代を引きずりたくは無かった。ミズキとアイカの呪縛から逃れ、バラ色のキャンパス生活を送るつもりだったのだ。

 オレの口調はつい不満げになる。

「もしもし……」

「あっ、サガン? 今なにしているの? アタシ暇でさぁ、カフェにいるんだけれど、来てよ」

「あのなぁ、オレだってイロイロあるんだ! 何時までもミズキの相手ばかりしていられないんだよ」

 オレは最大限の勇気を振り絞ってミズキの誘いを断った。

「ごめん……、そうだよね……、ごめんなさい」

 オレの知っているミズキは、絶対にこんな反応をするはずが無かった。

「なに言ってんのよ! すぐに来なさい!」と言う筈だった。

 そして、そんなミズキに逆らえずにオレはミズキの待つカフェへと急いで行く事になるのだろうと思っていた。

 しかし、こんな反応をするミズキを知らないオレは不安になった。ミズキに何かあったのではないか? そんな思考でオレの脳内は満たされていた。

「いま、友達と一緒なんだ。良かったらミズキも来ないか?」

 オレはオレ自身の発した言葉に驚いていた。

「わかった、すぐ行く!」

 オレから誘ってしまった訳だから仕方が無い。今いる場所を教えて、ミズキの到着を待った。

 待つ間にミズキの事を簡単に説明した。当然の事だが、昼休み事件や下僕生活については語っていない。


 ジーンズにセーター姿、フード付きのコートを羽織ったミズキがオレに気付いて手を振っている。オレも軽く手を挙げて応えた。

「あの娘が嵯峨君の彼女? 可愛いじゃない!」

「彼女って言う訳じゃないよ。ちょっとした知り合いだよ」

 オレの前で立ち止まったミズキは、相変わらずの素敵な笑顔を見せる。

「ごめん、待った?」

 そして、オレの腕に自分の腕を絡めながら、隣に立っていた友人に挨拶する。

「はじめまして、高校の時サガンと同級生だったミズキです」

 友人の目は点になっていた。友人は、どちらかと言えばオタク系の男で、絶対に女性にモテるタイプでは無い。友人から見れば、オレも同類に見えているはずだ。そんなオレの腕に自らの腕を絡めている女性がいる。更にその女性がとても可愛いときているのだから驚いて当然だ。オレ自身だって、ミズキとアイカに関わらなければ、こんなに可愛い女性に腕を絡められる状況なんて想像できなかっただろう。

「彼が最近友達になった高田君」

 フリーズしている友人を紹介した。


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