1冊目
あれからどうなったのだろう。
俺は何になったんだ?自分の肉体の感覚がない、存在してるかもわからない。
だがそこには得体の知れない生命?がいることはわかった。
???「あなたはまだここに来るべきではなかった。」
???「あなたはまだ答えを見つけていない。」
誰だろう、答えなんてあるのか?ならば教えて欲しいものだ。
???「それは貴方が自分で探し出すものです。私はその手助けしか出来ない。」
こちらの思考が読めるのか、手助け?俺はそもそも神のような何かに助けられた覚えは無いのだが?
???「いいでしょう。あなたは今何を欲しているかは自分が1番分かっているはずです。それを探す旅に出なさい。私は真実に近づくための力を授けます。」
力?何の力もなかった俺が最も欲したものはそれだと思うのだが?
???「いいえ、あなたが力を欲したのはそれよりももっと欲しいものを手に入れるための手段でしか無かったはずです。本当に欲しかったものはこれから行く旅の中で手に入れなさい。」
気がつくと俺は見知らぬ街にいた。ここは外国だろうか?周りにいる人間や人間?のような生物は見た事のない顔つきだ。
しかし何故だろうか、何を話しているのかはわかる。言語は同じなのだろうか?それともこれは授かった力なのだろうか?
何はともあれ、俺は今無一文だ。このままじゃ雨風を凌ぐことも出来ない。
どこかで仕事を探さなければいけないが、それよりも先に目先の金銭を得なければ。
この世界はどうか知らないが住所が無ければ働くこともできないだろう。
とりあえず、今手っ取り早く金を得るにはやはりこれが1番だ。
芸能界に入る前の下積み時代によくやっていた。
そう、裸踊りだ。
テレビでは放送出来なかったから芸能界に入ってからは一切やらなかったが、俺の裸踊りは評判がいいんだ。
見えそうになるけど絶対に見えないようになっている。
そのギリギリを攻めるのがいつも上手かった。きっとこの世界でも通用するはずだ。
……俺は気づいたら留置所らしき場所にいた。
何故だ!俺の踊りは完璧だったはず!
正直テレビでも放送出来たなら一発屋で終わることもなかったであろうクオリティだ!
過去に通報されたことは何度かあったが、あまりの際どさに警察すらも魅入らせて拍手喝采で許してもらったこともあったのに!
これが異世界か、神め!なぜ俺に踊りの力を授けなかった!
そう嘆いていると留置所に看守らしき人物が入ってきた。
看守「貴様か、公の場で裸で踊り狂っていた人物は。」
実際にそうなのだが、いざ言われてみると俺はとんでもないことをしたのだと自覚してしまった。
「はい、踊りには自信がありましたが、ここでは通用しなかったようです。」
看守「そういう問題では無いが、まぁいい。貴様にはこれから取り調べを受けてもらうが、貴様の罪状からして最低でも無期懲役以上は覚悟した方がいい。」
こいつは何を言っているんだ?無期懲役以上?裸踊りで?精々注意されたりその程度で終わるんじゃないのか?
「ちょっとちょっとちょっと、おかしくないですか?無期懲役以上?たかだかあの程度で?そもそも留置所に行くことすらおかしくないですか?」
この時はそう思ったが留置所に送るのは正しい判断だろう。
看守「貴様、国王様を愚弄して何を言っている!貴様の行った罪は反逆罪及び国家転覆罪、そして公然わいせつ罪及び強姦罪だ。」
「あれ?俺またなんかやっちゃいました?」
自分の強さをアピールする時以外でこのセリフを使うとは思わなかった。
「いやどういう捉え方をしたら国家転覆罪や反逆罪に該当するんですか?それに公然わいせつ罪はともかく、強姦罪は発展しすぎじゃないですか?現代日本でも、もうちょっと優しいですよ。」
看守「日本?というのは何か知らないが貴様の罪状は既に確定している。これから王自らが出向いて裁判を行う。言い訳はそこでするんだな。」
意味がわからない、死んで異世界に来たばっかりだってのにもうここでの人生が終わりそうだ。
それから俺は裁判所、というより処刑台に立たされていた。
「あの、本当にこれが裁判所なのですか?とても裁判をする気があるようには見えないのですが…」
側近「黙れ犯罪者が!王の御前であるぞ!」
目の前には王冠を被った人間がいた。
王様「罪人よ、お主はワシを愚弄し、民衆に恐怖を与えたと聞いているが、これに間違いはないな?」
なるほど、全て繋がった。何故国家転覆罪や反逆罪に該当するのか、このジジイの姿を見てようやく理解出来た。とんだ初見殺しだ。
「裸の王様?」
裸の王様「そう見えるのならばやはり罪状は正しいようだな。ではこのまま処刑に取り掛かろう。」
マズイ、あまりの運の悪さに絶望して黙りこくってしまった。何かこの王の機嫌を取るようなことを言わねば!
「お待ちください国王様!そもそも私は裸で踊っていただけです!それの何が反逆罪や国家転覆罪に該当するのですか!」
裸の王様「あの踊りはワシが着ているこのバカには見えない服を愚弄していたのだろう?ワシがバカだから服が見えずに踊らされているということを示したおどりだったのだろう?」
ひねくれ過ぎだろこのジジイ!見たこともない国王をバカにするわけなんかないだろ!
裸の王様「まぁ別にワシや側近はバカじゃないからこの服はちゃんと見えているし別にいいんじゃが、のう?側近。」
側近「はい!本日も情熱的な赤がよくお似合いです!」
裸の王様「今日の服は緑なんじゃが…」
側近「すみません、最近色に弱くなりまして色の判別がつかないのです。」
裸の王様「まぁ良いわ。話を戻すがワシが気に入らないのはワシをバカにするという悪意じゃ。その悪意こそが本当の罪なのじゃ。」
悪意なんかねぇよ!金がなかったから手っ取り早く手に入れようとしただけじゃねぇか!運が悪すぎるぞ!
「お待ちください!悪意なんかではありません!私はただお金が無くて自分に唯一出来るやり方で金を稼ごうとしていただけです!」
裸の王様「なに?バカにした上で金まで取ろうとしていたのか?なおのこと許せんな、処刑後は晒し首にしてやろう。」
正直に言ったら余計とんでもないことになってしまった。何か、何かこの状況をひっくり返す力は!
力…?そうだ力だ!神が与えた力の中に何かこの状況をひっくり返す方法があるはずだ!
「国王様、そもそも私は一度もバカにしているつもりだったなんて言っていませんよ?」
裸の王様「何言っとるんじゃ?あの踊りがバカにする目的以外の一体なんだと言うのじゃ?」
何だ、口が勝手に動く。
「あれは異国の地からここへ来た私が、国王様に敬意を示すための舞踊でございます。」
裸の王様「そうなの?でもお主裸であったではないか。あれはワシの服をバカにしているから裸だったのだろう?」
「いいえ、私は確かに服を着ていました。」
裸の王様「?そんな訳ないだろう確かにお主は裸…ハッ!」
「気づかれたようですね。そうです、私が着ていたのは貴方と同じバカには見えない服です。国王様ともあろうお方がもしかして…見えなかったのですか?」
裸の王様「そ、そんなはずないじゃろう!?そうじゃったそうじゃった!お主は確かに服を着ておった!茶色の服じゃったよな!?」
「今日の服は青色でしたが?」
裸の王様「ふむ、そうじゃったな!?最近ワシも色に弱くて色の判別がつかんのじゃ…」
「では、私の言っていることは信じていただけますね?」
裸の王様「信じるとも!ワシに敬意を払ってくれていたのじゃな!ありがとうのう異国の民よ!」
なんだか分からないが勝手に頭が回り口が動いたぞ きっと神がIQを上げてくれていたのだろう。
「では王様私を解放していただけますか?」
裸の王様「分かった!分かった!お主は無罪じゃ!どこへでも好きなところに行ってくれ!」
こうして俺は解放された。
裁判所を出るとそこには鎧を着たショートカットの桃色の髪の女の子が立っていた。
???「あんた、なかなか冴えてるじゃないの。裁判所に立って生きて出てきた人間を見たのはあんたが初めてよ」
「君は、さっき傍聴席にいた…えっと」
エルザリア「エルザリアよ、ザリアでいいわ。あなたの名前は?」
名前…名前か。本名でも良いが折角違う世界に来たんだ、なにか新しい名前がいいな。
「俺の名前は…」




