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テンションを上げすぎて自爆した

今回は少し長いです

 水と風の組み合わせの特性は斬撃だ。風のみでもかまいたちの如く切り裂く事は可能だがあくまで風であり、一箇所を精密に裂くなどは出来ない。

 そこで水と組み合わせる事で切れ味を引き上げ精密な攻撃を可能にした。イメージとしては水圧カッターが近いだろうか。あの液体であるはずの水は特定の条件が揃うことで硬い合金だろうと切り裂く凶器になる。

 これでグリフォンは全滅だ。まあしかし・・・威力ありすぎたな、ボス部屋の壁が丸ごと亀裂入ってるし入ってきた鉄製の扉が切れて崩れてる。これでもし爆発系やら炎系だったら更にまずい事になってた。


「後は裸の王様を叩くだけだな、大人しくする気はないよね?」


 大人しくしてもしなくてもやる事は変わらないけど。が、仮面の男はまだ余裕のようで拍手までしている。


「いや凄いね、全滅させるか。上級魔法まで使えるとは予想してなかった。最後の抵抗ってところかな?」


 はて、中級なんだが。・・・なんだろうか、何か噛み合わないものを感じる。仮面の男もあの数のグリフォンを召喚しナイフによる攻撃もそれなり。強いと言えるだろうが中堅くらいだろう?

 この時点で私の方が強いって分かるはずだ。だから逃げるかなーなんて思ってたのに、違う反応されてなんか微妙な空気が。


「そろそろ終わりにしようか、遊ぶのも飽きた」


  すると仮面の男は地面に触れ詠唱を始めた。本来は詠唱を阻止してもいいんだけど、どんなものなのか見るため大人しく待つことにする。


『獅子、羊、蛇、三つを合わせ獣よ現れよ、汝の名はキマイラ!』


 光の粒子が集まると魔法陣に壊し、周囲に突風を巻き起こした。その風が収まると現れたのはグリフォンを超える巨体と大きな脚、翼に口から牙が見えるキマイラと呼ばれる魔物だ。

 マジか!キマイラか!ゲーム時代ではレアな魔物で倒す事でドロップするアイテムが希少だった。

 私も幾度か出会ったが金になる魔物で嬉しかった記憶がある。召喚して倒してドロップアイテムを回収って流れができるなら金持ちになれるかも?


「GAAAAAAAAAAAAA!!!」


 現れたキマイラは体の皮膚がビリビリと震えるような大きな咆哮に耳が痛くなる。すぐさまキマイラは私を敵と見定め翼を大きく広げる。大量の羽が空に舞う。それは意思を持ちこちらを狙って雨のように降り注ぐ。


『風術式・中 疾風』


 すぐにカードを差し込みその場から飛び退き壁を蹴りながらキマイラの周囲を走り回る。すぐ後ろをマシンガンの如く羽が殺到し壁を破壊する。

 これが現実である以上、ゲームではなくこれは命のやり取りであることに間違いはない。不謹慎かもしれないが、こうした戦いに心が踊る。獰猛な笑みを浮かべてしまうのも仕方がない。

 

 しかし、いつまでも回避をし続けるわけにもいかない。攻撃に回らなければいずれ捕まる。キマイラは巨体に似合わず俊敏に動き近距離、遠距離と隙がない。なら隙を作ればいいだけだ。

 現在も降り注ぐ羽の雨を潜り抜け私の間合いにまで持ち込む。それには・・・

 一気に軌道を変えて宙へ飛ぶ。一見回避もできない隙だらけな姿だが風魔法を纏う今は違う。目の前まで迫る羽をギリギリまで引きつけ、体を捻るように避けてなにもないはずの虚空を蹴りつけ更に飛ぶ。

 風を足場にして飛んでいるのだ、風を纏った時の特性は間合いの増長とスピード、斬撃だ。肉体の動きの延長線として操ることが可能だ。

 キマイラの顔がすぐそこまで迫ったその時、キマイラはその大きな口を開けて爆炎を放った。


『フルチャージ』


 チリチリと肌を刺す熱気が迫りくる。風を解放すると体に纏う風は一気に竜巻の如く荒れ狂い爆炎を掻き消した。火は酸素がなくなれば消えるしかない。風で根こそぎ奪ってやったのだ。

 そして攻撃をした瞬間こそがキマイラの隙だ。ここにぶち込むのは・・・これだ


『風術式・中 疾風』

『土術式・中 土竜』


 土の特性は単純な身体能力の強化、主に仲間に掛ける魔法ではあるが私には必要だ。ただでさえ魔法使いで物理攻撃は弱い。こういったものでカバーするのは当然と言えば当然だ。


『フルチャージ』

『フルチャージ』


 同時に発動、風が荒れ狂い足へと集中する。強化された肉体から放たれた飛び蹴りがキマイラの額に突き刺さる。

 そこから内部へと侵入した風の嵐が中からキマイラを引き裂き肉の山に変えた。


「さて、次は何が来る?」


 着地し服に着いた埃を払いながら問う。


「それとも、もうお終いか?」


 煽ってみるが返事はない。さてはビビったか?仮面の男の方を見てみた。


「あれ・・・?」


 仮面の男は消えていた。いつの間にか逃げたのだろうか。いや隠れてるのか?ふーむ。それならとあるスキルが役に立つ。


 『魔力探知』


 名前の通り、周囲に存在する魔力の塊を察知するスキルだ。プレイヤー狙いのプレイヤーなんかには便利でよく使った。

 しかしそれにも反応はなかった。つまり逃げたって事だ。


「・・・・・・」


 物言わぬ死骸が転がる中、静寂が場を支配する。私は思わず頭を抱えしゃがみ込む。


「うわー!恥ずかしすぎる!なんで誰もいないのに私はイキッてカッコつけてんの!?」


 消したい!私の記憶から消したい!今すぐ床に転がって悶えたい衝動に駆られたがグッと我慢し、天を仰いだ。





ぶっちゃけてしまうと初級でもキマイラを倒す事は可能でしたが、レイカはその面倒を嫌って一撃で終わらせました。一応、上位に入る魔物なんですけどね・・・?

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