『魔拳術』の真価とその威力
「ほーら、美味い餌の時間だよー、いけ」
仮面の男はそういうと手を前に突き出し魔法陣を複数展開する。召喚特有の魔法陣であり何が来ても対応できるよう警戒する。
光の粒子が集まり形成したのはこのダンジョンには出てこないはずの魔物達、グリフォンだ。
鷹のような鋭い目に大きな翼、四足歩行の魔物であり強さで言えば上から数えたほうが早いほどだ。なるほど、ここのボスがやられる訳だ。こんなのが複数出てくるんじゃひとたまりもない。あの仮面の男が余裕なのも納得だ。
私が知る限りでは召喚を主にする職にはコストというものがあり、同時召喚には限界がある。まだ余裕があるかもしれないが、あれほどの強さの魔物を複数召喚するとなると相当なコストになるはず。
術者が強くなればなるほどコストの上限は上がる、それだけレベルが高いと言うことになる。ますます楽しみになってきた。何ができるんだろうか
グリフォンは操られているのかモンスターとは思えない陣形を組み私を囲む。なら囲まれる前に崩すしかない。
「まずは一発」
『迅脚』で近くの一体に突っ込み間合いを詰める。流石に強い魔物だけありゴブリンとは比べ物にならない反応速度でこちらに対応してくる
グリフォンは迎え撃ち足を振り上げ足の爪で引き裂こうとするが当然想定内。懐に入った時点で私の攻撃は決まってる。
『フルチャージ』
グリフォンの足の間をスライディングするように滑り込み仰向けに寝転がると、腹に足の裏を押しつけ素早く右のホルダーボタンを押す。
足の裏を伝い爆炎が弾け肉が焼けつく匂いと共に、グリフォンを天井まで突き上げ派手な音を立てて衝突する。
「まず一匹」
グリフォンは距離を置いてからの翼を利用した機動力と風魔法を利用した突風が厄介な敵だ。逆に間合いを詰めて弱点である柔らかい腹にピンポイントで攻撃してやればいい。
と、まだ床に寝転がったままの私を上から押しつぶす様に他のグリフォンが落ちてくる。それを横に転がり回避しつつ立ち上がってカードを取り出す。
おかしいな、わざわざ近接攻撃してくるのか。さっきも言ったがグリフォンは本来距離を置いて風魔法を使うのが普通だ。というかその方が強い。
予想できるのはあくまで召喚した魔物を操作するのは術者である、と言うことだ。本人がその強みを理解してなければいくら強かろうと無意味。
「あれぇ?おっかしいなぁ……ま、いいや。それじゃ追加ー!」
その様子に首を傾げた様子の仮面の男は魔法陣を追加する。ただし100を超える数でだ。もはやグリフォンの群れの端が見えなくなる。幸い広いボス部屋ということもあり圧死は免れたが。
んん?ますます分からなくなってきた。奴の言う魔物使いって職はなんだ?コスト無制限とかある?
流石に魔力切れがないなんて事はないよな・・・?だとするなら付き合わずに術者狙うしかないんだが。
「まだまだ出るよー?せいぜい足掻いてよ、いい見せ物になるからさー」
その口調からして見下されてるのがわかる。うーん、正直ここで使いたくないんだが、この数で一斉に来られるとそれだけで私の命が危ない。
懐から2枚のカードを取り出し・・・それを右と左、左右のホルダーに差し込む。
私の『魔拳術』はただ纏うだけのものではない。その真価は左右のホルダーを同時に使用することで生まれる応用性にある。
そして魔法には初級、中級、上級とランク分けされており、ランクが上がればその分威力も範囲も上がる。本来はデメリットとして詠唱時間が発生して長くなるのだが、私の場合は予めカードに省略している為にデメリットはない。
今まで使っていたのは当然初級だ。こんな洞窟で範囲の広い魔法を使えば余波で崩れると思ったからね。この数を相手にするなら中級を使わざるおえない。最悪崩れてきたら穴を開けて逃げる。
『水術式・中 雨時雨』
『風術式・中 疾風』
さーて、組み合わせでの魔法は初だ。うまくいってくれよ。
『フルチャージ』
『フルチャージ』
パチンと左右のホルダーをパチンと押し込む。
体を風が包み、その中に水が混じる。それは次第に強くなり風は烈風に、水は激流に。
『嵐術式・乱激流』
囲むようにいるグリフォンを向けてその場で一回転回し蹴りをする。その蹴りはグリフォンに当たることなく空を切る。
「なにそれ、もうびびったのかな?」
語尾に草が生えそうな言い方で煽ってくるが問題はない。
「いや、既に終わった」
次の瞬間、目の前に広がる景色がズレた
いや、違う。正確にはレイカを除く全ての物がズレ、そしてグリフォンだったもの達は真っ二つに切り裂かれ音もなく地面に転がり落ちた。
今回は少し長くなりました。説明の語彙力のなさを痛感しましたがご容赦ください。
それはそれとして応用が効くって言葉にロマンを感じるのは私だけでしょうか?




