ポエム集と、渡せなかったラブレター
島流し的な部署でのその異変は、突然訪れた。予告の無い激しい横揺れが室内、否。建物全体を襲った。丸平他与太と直角直子は急いで自分の机の下に潜り込む。
「な、直角さん。大丈夫でしたか?」
「は、はい。大丈夫です丸平さん。すごい揺れでしたね」
しばらく小さな余震が続き、2人はそのまま机の下に身を隠す。業務中とは異なった静寂さがこの狭い室内に流れていた。
直子『······災害は忘れた頃にやって来るって本当ね。いつなんどき地震が来るかも分からないし、万が一の時の為にワンルームマンションのクローゼットに隠している私のポエム集(誰にも見せられず中学生の頃から書き溜めたノート15冊分)そろそろ処分したほうがいいかしら?』
他与太『······今の揺れは驚いたな。いつ災害が我が身に降りかかるか分からないよな。もしもの時の為に、やっぱりそろそろあのラブレター(中学生の時に好きな女子に書くも渡せなかった恋文)を捨てないとなあ』
「······でも踏ん切りがつかないのよね。特に7冊目の中盤が私的に傑作だし」
「え? 何が傑作なんですか? 直角さん」
「!? え? いえいえ。言ってませんよ丸平さん! 中学生の頃から書き溜めたポエム集を捨てられないなんて言ってません! 特に7冊目の中盤「性欲に目覚めた朝は、日曜日の2度寝の目覚めと似て非なるものの昼時か(意味不明)」は全世界同時公開しなければ人類のポエム史の損失だなんて先走った事を考えているなんて決して言ってませんから!」
「え? 何が損失なんですか? なおなお」
「ん? 丸平さん。今「なおなお」と言いましたか ?」
「!? い、言ってませんよ直角さん!「なおなお」なんて言ってません! 中学生の時、雨降りの日に傘を持ってなかった俺を自分の傘に入れてくれたクラスのカースト制度No.1に君臨する1軍女子の希 ちゃんをそれをキッカケに好きになり、身の程も知らずにラブレターを書き、当然出せる筈も無くタンスの肥やしになっているなんて言ってません! だって希ちゃんにはクラスで女子人気No.1の片貝がお似合いでしたし! 実際2人は夏休み明けに付き合ってたし。夏休み中に2人に何かあったのかな? 片貝の野郎、希ちゃんに休み中どんな猥褻的な行為をしたんだうらやましいなこん畜生! ついでに言うと(?)、そのラブレターを手に持って夕暮れ時アパートの窓の外を眺めながら昔を思い出し「······渡せなかったこのラブレターは、まだ押し入れの中」なんてちょっと傷心に浸っている自分にほろ酔いしているなんて言ってませんから! たまに「歯医者で歯を削る痛みは嫌いじゃい」って言う人がいますけど、俺はちゃんと痛い時は右手を挙げる主義ですから! 因みに(?) 若い女性の歯科衛生士さんに歯をクリーニングしてもらう時、頭に何かが当たってる感触があるんですが、あれは何でしょうか? もしかして歯科衛生士さんの胸が俺の頭に当たってますかね? そこら辺どう思いますか直角さん! 率直な意見を聞かせてもらえますか!?」
「さっきの揺れ大丈夫だった〜?」
島流しの部署では無い方の総務課から、上司がヘルメットを被り、停電もしていないのに懐中電灯を持って現れた。




