迫るXデー
月日はまたたく間に過ぎ、丸平他与太の派遣が切れるまであと1週間と迫った月曜日。総務課の島流し的な「猫の額」ほど狭い部署では、2人の男女が落ち着かない雰囲気の中で業務を行っていた。
他与太『はあ。今週でここの派遣も終わりかあ。次の派遣先もまだ決まってないし色々不安だなあ。 いや、それよりもこのままだと「なおなお」と永遠にお別れだよ。連絡先は愚か職場でも業務連絡的な事しか殆ど話さないし。唯一共通の話題のへべれケーズのラジオ番組はずっと休止中だし。切ないなあ。悲しいな。イボ痔がちょっと痒いなあ。金曜日最後の日、帰り際におっぱい揉ませてくれないかなあ』
直子『ううう。どうしよう。結局この3ヶ月、マルピーと何1つ進展していないわ。これじゃあ普通に金曜日に「お疲れ様でした丸平さん」と言ってお別れだわ。そんなの嫌よ! なんでもっと積極的に自分をアピールしなかったのかしら? ん? アピール? 私に売り込める要素があったかしら? 頑固で融通が効かない馬鹿真面目な性格な私に? 無理よ。無いわ。あるとしたら、このそこそこスタイルの身体くらいよ。ん? 身体? この身体を武器にすれば何とかなるかしら? そうよ。マルピーだって健康な男子だし。私の観察する限りではマルピーは今彼女いなさそうだし。 溢れんばかりのマルピーの性欲(勝手な推測)を処理をする為に私の身体を箸休め(意味不明)くらいには使ってくれるんじゃない? そうよ。もうこうなったら手段は選んでいられないわ。ハニートラップ的オッパッピー作戦よ!(再度意味不明)」
「はあ。別れ際の最後に「なおなお」のおっぱいを揉みたいなあ」
「え? 最後に何を揉みたいって言いましたか? 丸平さん」
「!? ち、違います直角さん! 間違いなく聞き違いです! 最後の別れ際なら「なおなお」のおっぱい揉めるかな? なんて考えていませんからコンプライアンス的に!」
「え? 別れ際のコンプライアンスが何ですか? マルピー?」
「え? 直角さん。今マルピーって言いましたか?」
「!? い、言ってませんよマルピーなんて! 最後に私のそこそこボディを使ってお色気オッパッピー(意味不明)的作戦を敢行して最終的にマルピーとおっぱじめる(?)なんて思ってませんから 神様に誓ってハレルヤ(?)ですから!!」
······そして静寂が訪れたこの室内に重苦しい空気が流れる。
与太話『まずい! いつもならここであの上司が「午後も頑張ろう〜」なんて呑気な声を出して登場するのに今日に限って現れない! どうせアレだろ? 総務課の若い子と不倫しているって噂だからどこかでその子とイチャついているんだろ? こ、このままじゃ「なおなお」との不穏で噛み合わない会話が途切れない! どうしよう? 恐ろしく気まずい!』
直子『あのハゲ散らかした馬鹿上司、なんでこんな時に来ないのよ! マルピーとの公序良俗に反した気まずい会話が中断されないじゃない! あのハゲ、派閥争いに負けて出世諦めたから不倫しかやる事がないんじゃないの!?』
「あ、あの直角さん。そ、その」
「ま、丸平さん! 最後の金曜日、2人で送別会やりませんか!」
「!? え? ほ、本当ですか? 直角さん」
「は、はい! 是非やりましょう! 丸平さん」
歩く杓子定規と周囲から揶揄され続けた直子は、人生で初めてその歩む道から外れる事を自ら望んだ。異性を会食に誘うと言う初めての経験をした直子の顔は、朱色に染まっていた。
方や憧れ続けた女性から望外の誘いを受けた他与太は、直子の紅い頬、恥じ入った声色、胸部をその両目と心と身体的感受性(?)に刻み、感動に打ち震えた下半身が若干ハッスル(?)していた。
「午後も頑張ろう〜」
島流しでは無い方の総務課の上司が、僅かに息を切らし、顔を上気させ、首元にキスマークらしきものを付けて通り過ぎて行った。




