続 ワンショット田部田の「今日は飲んじゃう?」
······ラジオの無音放送が20秒経過した後、有名な歴史的名曲のオルゴールが暫く流れた。マイナーロックバンドへべれケーズのファンである丸平他与太と直角直子は、固唾を飲んでその成り行きを見守っていた。
「はーい。ワンショット田部田の「今日は飲んじゃう?」のコーナーでーす。ちょっと中断してごめんね〜? ちょっとしたトラブルが起きたけど、もう万事解決、快調、快便、快飲。ん? 何の話だっけか? まあいいか。それよりもトラブルで時間押してるから一気飲みで。いやいや飲んでないよ? というか宴会での一気飲みは駄目だよ? 危ないからね。ん? 何の話だっけか? ああ。そうそう一気に次のお便りも紹介しちゃうよ〜」
何事も無かったようにしゃがれた声でラジオ放送 を再開させたワンショット田部田に、他与太と直子は互いに視線を合わせ微笑み合った。
初めて知る事の出来た共通の趣味を分かち合う喜びを噛み締めながら、この時間が永遠に続けばいいと2人は同じ事を考えていた。
「はーい。ラジオネーム「彼の癖毛を合法的に舐め舐め出来るなら30万まで出します」さんのお便りでーす。なになに? 職場で片想いしている男性の後頭部のちょい跳ねた癖毛が舐めたくて仕方ありません。法を犯さない手段があれば教えて下さい。なるほどなるほど。これまた何やらメンタル的にグイグイ追い詰められた匂いがプンプンするお悩みだねー」
「ぶふぇっ!!」
ワンショット田部田が相談者を紹介した瞬間、直子は口に含んだヨモギ茶を口から吹き出した。
「だ、大丈夫ですか!? 直角さん」
他与太が慌てて蒼白な顔をした直子にティッシュペーパーの箱を差し出すが、直子は他与太の声が耳に入っていなかった。
直子『ま、まずいわ! まさか私の相談メールが紹介されるなんて! それもよりによってマルピーと一緒に聴いている時に!! どうしよう? 正体がマルピーにバレたら?「この相談者って直角さんですか?」って言われたらどうしよう?』
「あれぇ? メールに続きがあったな。なになに? 因みに私のこの気持ちをポエムにしました。とな? ええと「貴方の後ろ髪は私にとっての世界最高峰の高い壁。幾ら登ろうとしても常識や世間体や強制わいせつ罪が私を阻む。それでも私はこの悪路と難路を掻き分けてはるか高みを目指したい。目指すついでに途中の背中と首も舐め舐めしたい」おおお! これはまたヘビーなやつ持ってきたねー。いいねいいね。俺はこういうの嫌いじゃいよ? 寧ろ大好物だよ。ん? 続きがあるな。なになに? 次のポエムが近年私にとって一番の出来なので是非紹介して下さい。とな? ごめんねラジオネーム「彼の癖毛を合法的に舐め舐め出来るなら30万まで出します」さん。時間が超押しているから今回は割愛させてもらうね〜」
ドンッ!!
ワンショット田部田のその台詞を聴いた瞬間、直子が憤怒の表情で右拳を机の上に叩きつけた。
「ど、どうしたんですか? 直角さん」
「え? い、いえ。会心の作品が紹介されないのが悔しくて。ち、違います! なんで私の傑作を紹介しないのよ、なんて思ってませんから! つ、机の上でゴキブリと蟻とだんご虫が仲良く徒競走していたので追い払っただけです!」
「はーい。じゃあ時間も無いからこのお悩みに答えちゃうよ? いいかいラジオネーム「とにかく舐めたい女」! 物欲しそうにお目当ての物を眺めていても一生モノになんが出来ないんだよ! 俺のお勧めは隠れて飲むならトイレだ! ん? 飲んでないよ? 俺は飲んで無いからね。さっき地震が怖くてトイレに駆け込んだけど、その時ブランデーなんて飲んでないからね? ん? 何の話だっけ? そうそう。おいラジオネーム「舐め舐め星人」! アンタの片想いの男は癖毛だけか? 違うだろ! 一步引いて見てみろ! 男は癖毛だけじゃなく胴体も下半身もあるだろ! まずは男の背後に忍び寄り、両手で男のイチモツを掴むんだよ! そしたら男はイチコロでおとなしくなるから、その隙にお目当ての癖毛を舐め舐めでもペロペロでもハムハムでも好きにしやがれ! イーヤッホー!!」
······ワンショット田部田の声と番組はそこで途切れた。20秒の沈黙がラジオから流れた後、世界的アニメの名曲がオルゴール調で次の番組まで流れていた。




