第七節 提案
わたしは口を開く。
「ねえ、いつもジカを狩ってるの?」
「ん? ……ヴサギとか、バヌキ……まあ、なんでもだ」
「ヴサギ……食べるとこあるんだ。あんなかわいいもこもこで」
「ああ、仕留めるときたまに躊躇する」
「あははっ」
「…………」
「ぁ……あっ、そうだ! ヴァンって知ってる?」
「ヴァン……? いや?」
「そっかあ、わたしをここに送り出した人なんだけど、なんでここを知ったと思う? 街で会ったりした?」
「いや、まったく」
「聞いても形而上とか言ってごまかされてさ。ばかだよね、いきなり、ここからは神の領域だーみたいなこと言いだして」
「……かみ? かみってなんだ……?」
「え? ……世界をつかさどる象徴、てきな? 大いなる魔力の源。崇高なるもの……のイメージ? ごめんわたしも説明するってなると、よくわかんない」
「……そうか」
「神は太陽そのものだっていうひともいれば、世界の果てにいるってひともいる。
世界――つまり光の大地の果ては黒い森だし、黒い森の果ては誰も知らないよね。
どっちにしてもよくわからない未知の存在。だから形而上」
「……そうか……」
「……うん? ランドの言う家って……こう、ちゃんとした家をイメージしていい? ちゃんと住めてる?
……ランド?」
「んっ……? ……ああ。ちょっとした高台にある。問題ない」
「そういえば……そもそも、こんな森にいるランドって、いったい何者なの?」
「――――――つ!」
あっ。
そんな感じ出したら、なにかあるって言ってるようなものじゃん。
つって言ってたよ。隠しごと出来ないタイプなの? ランドの焦りようといったら、もう。意味もなく木の方を二度見しちゃってさ。
「ごっ、ごめんって! いいから! 言いたくなきゃいいよ、言わなくて」
あとで聞くから。
「あっ、ああ……」。ランドはまた座り直した。
「……ランドは、黒い森の魔獣を殺せる?」
なんていう聞きかたしてるんだわたしは。
「えーと……つまり、わたしの本業はさっきも言ったとおり、魔獣戦線の戦士なんだけど……ランドって戦えるの?」
「魔獣と戦うちからのことを言ってるんなら、問題ない」
「へえー。つよい?」
「……おそらく」
「そっかあ! もし、魔獣を殺したとして、いのるの? そこにいのりはある?」
「絶えず、空に」
「そっか! 外で暮らしてみたいとおもう?」
「…………。
……なあ? まさかとは思うが」
「んっ? なに?」
察しがいいね。そろそろ本題かな。
「……じゃあ、ランドはわたしに、なにか聞きたいことある?」
「はあ……あー……リオナは、何しに来たんだ?」
「エっ? ……そりゃあ」
わたしは無言で、さっきやったように黒樹石たちを指でさしてまわった。そのあとランドに向かってわざとらしく、にやっとしてみせた。
それを見たランドは、鼻で笑うっていうのかな――ふっ、ってわらって、目をそむけた。
「あと、ひとつあって……」と、わたしは言って、
「ねえ、ランド。わたしと一緒に来ない?」




