表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/40

第九節 要請

 わたしがすとんと、静かに着地したのとは裏腹に、その衝撃は遅れてやってくる。


 木々が揺れ、丘の花はまた吹き飛び、あたりを黒い葉っぱと紫の花が舞う。


 ランドは、風の圧力をまともに受けた。だけど杖を持ったまま、口を結んで、目を閉じてじっと立っている。


 わたしも自分が巻き起こした風で、髪とか服が乱れる。


 やがて、風がおさまった。


 自分がぐしゃぐしゃになってるのがわかる。それを直さずに、わたしはランドを見据えた。


 ……耐えられた。吹き飛ばす気だったのに……。


 ――いや、なんで威嚇してんだわたしはっ……!


 ランドは、訳が分からないはずのわたしの行動を気にもしてない様子で、まわりの葉と花の雨を見た。それから、視線を丘の方に移す。


 ランドは持っていた杖を消して、


「強いんだな」と、言った。


 は?

 

「どのクチが言ってんの! こっちのセリフだからッ!」


 喧嘩する気なのかわたしは。


「というか! こんなっ……! こんな……」

 

 ランドをにらむ。ランドも見返してくる。

 

 あっ……?


 微笑んでる……。


 まるで、この状況を面白がっているみたいに。


 行ったり来たりして、勝手に盛り上がって、はっきりしない、ランドからしてみればまったくわけがわからなくて、遠回しで、勝手に怒る、どこまでもひとりよがりなわたしの行動を……?


 わたしは、さけんだ。


「こんなっ! わけのわからない森で! うんめっ……運命的な出会いしてて、いっしょに来ないってある? ふつう!」


 ランドは微笑んだまま、下の草地を見た。


「運命、か……あの場所に、反対側から来てればあるいはな」


 ……もしかして、わたし、からかわれてるの……?


 ――いや、わかってる。


 はじめて会ったときからランドはなにも変わってない。突然来たわたしをただ受け入れて、ただ誘いを断っただけ。わたしだけ、ひとりであれこれ考えて……。


 どうせこうなら、最初からいろいろ気にせずに、ちゃんとした言葉でさっさと伝えていればよかったのかなあ……。



「……いいから……!


 わたしと……()()()()()よ……!


 ()()()だから……」



「…………」


 沈黙。

 

 それはほんの一瞬のことなのかもしれないけれど、ゆっくりと、とても遅く感じる時のなかで――


 ランドが動いた。

 

 ――最初は、


 倒れるのかと思った。ランドの体が徐々に下がっていったから。


 でも違った。屈もうとしているんだとわかった。

 

 次に、下に落ちたなにかを取ろうとしている? やっぱり違かった。下にはなにもないから。


 ランドは片膝をついて、その体勢のまま動かなくなった。


 そして、ゆっくりと頭を下げた。



「御意に」

 

 ランドは言った。



「……は? え?」。すぐに立ち上がって、そう言ったのもランドだった。


 まるで、時の流れがもとに戻ったように、すべてが一気に進みはじめる。で、わたしは理解が追いつかない。


「……どっ、どうしたのっ? 急に!」と、わたしは言った。


「御意にっていってた。ぎょいにって……! ……ランド……? 御意ってさ……」


「……肯定……だよな?」


「うん……なんでわたしに聞くの?」わたしは目をこすった。「……きてくれるの?」


「いや……」

「はァ?」


 きれそう。


 ランドは黙ってしまった。手をあごに当てて、いかにも、自分はいま考えてますよっていう感じで。


 よくわからないけど、わたしは待つことにした。


「やっぱりか……」と、ランドは言って、わたしに向き直った。


「なあ、さっきの、おれが……何者なのかって話だけどな」


「ちょっと待って!」わたしはランドをさえぎった。


「……聞くけどさ。わたしがそれを聞いたとして、来るの? きてくれるの……?」


 ランドの様子をうかがうために上目遣いなんかしたりして。めんどくさい?


「……はあ」。ためいきっ!


 ランドは、少しの間があったあと、



「……ここでの生活なんて、あってないようなものか……


 ……光の大地の魔獣戦線。行ってみるか……」



 それを聞いたとたんにわたしは笑顔になる。ランドは体ごと視線をそらした。


「だからもう泣くなよ……」と、ランドはつぶやいたけれど、わたしは聞こえないふりをした。


「うんっ! よろしくねっ!


 ――あれ? それで……」


 ランドはどこか向こうを見たままだ。


「ああ。おれは、召喚獣だ」



 えええええええーッ!

 


 ……たおれた。


 でも、ゆっくりと膝をついて、ぺたんと地面に寝そべった。


 今日はなんなんだろうねいったい。



「あ……違うか。正確には、人と召喚獣のハーフだ」



 あおむけだから空が見える。あっ、葉と花の雨はいつの間にか止んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ