第十三章 第五話
祐先はだまってその場に座した。周りの武者も口をつぐんだ。そうしていると、疲れ果てている曽我広忠と道子が姿を現した。
彼らは無事だった。真備は安堵したが、一方でやつれた娘を心配する。道子は真備を見るなり駆け寄ってきた。そして、父の胸に寄りかかる。
「二藤次様を、守れませんでした・・・。申し訳ございませぬ。」
お前のせいではない。お前は、お前で十分だ。しかし、なんと言って慰めればよいのか。
広忠は、祐先に近づく。広忠は祐先に告げる。
「小野殿は信用における人物です。それに、いまさら言ったところで、大勢は変わりますまい。」
祐先は再び立った。そして、真備の目前に迫った。声色を低めて語り始める。
「つい先日、将軍が亡くなった。」
「このことが知られれば、動乱のきっかけになるかもしれぬ。特に警戒すべきは安東高季。今のうちに芽をつみ取っておく。」
その実、祐先の嘘である。結果が出れば、理由はどうでもよい。
「これより平賀から発する軍勢は、藤崎を急襲する。止めようとするなら、この場で切り捨てる。」
……このとき、一人の武者が気づいた。外より迫り来る音を。次第に周りの者にも聞こえ始めた。それは、いまだ遠くかも知れないが、大群。蹄の音。地面が揺れる。
平賀の面々に、動揺が走った。祐先も同じだ。
「これは、……どういうことだ。糠部や浪岡ではない。申し合わせが違う。これはいったい……。」
ある者が叫んだ。
「もしや、安東。」




