第十三章 第四話
「疑わしきは、安東高季。奥州の俘囚を抱え、一番に力を持っている豪族だ。そんなことは説明しなくとも、あなたならわかりましょうぞ。」
急いできたため体に熱気が立ちこめていたはずだが、一気に冷え切った。祐先は手に太刀を持つ。少しの間黙って見つめていたと思うと、急に床にたたきつけた。
「ふん。私が倒すべき所を。逆恨みと言われようが、父を殺したのは曾我兄弟であり、奴らを育て守っていたのは二藤次だ。その二藤次を、殺されてなるものか。」
捨てた太刀を、祐先の家来だろう者が拾った。鞘の金箔が不気味に光る。祐先はだまってその太刀を受け取った。
「なにせ、曽我の軍勢は足りない。故に、工藤の一部隊を平賀に入れた。本領糠部より家来の南部が軍勢を引き連れて東より攻める。南からは我らが進む。」
非常時だ。何ヶ月ものうちに、状況がかわってしまった。二藤次が回復してきた矢先、五日前に忽然といなくなった。見知る者はいない。
真備は問うた。
「本当に、安東がやったものとお考えですか。」
「ほかに誰がやる。」
祐先は真備をにらみつけた。真備も負けてはいない。
「安東でなくても、他の奥州の者かもしれませぬぞ。」
「ほかの奥州人だとしても、奥州第一の豪族として、周りの動きを監視する責務がある。見逃せぬ。」
真備は詰め寄った。
「なにか、除いておきたい理由でもあるのですか。」
想定外の問いに、祐先の勢いは止まった。
”それは、鎌倉へ戻るためですか。”
”うるさい。”
祐先は怒鳴った。その声は甲高く、屋根裏へも響き渡っただろう。
二藤次がいなくなった今、東日流に残る意味はない。




