第十二章 第一話
二藤次は死ななかった。真備や道子と広忠らの処置により、傷口はふさがった。だが左足をやられてしまったため、再び歩くことはできないだろう。
道子は言った。
「私が責任を持って、介抱いたします。」
「何もおまえが責任を持つ必要はないのだぞ。偶然にも私達が泊まった日に襲われただけのことだ。」
「そこに苦しんでいる人がいるのに、見捨てて次へは進めません。」
こうなると、人の意見を聞かない。押し問答をしていると、浪岡の衛府より見舞いの使いが現れた。工藤祐経の次男坊、祐先である。
祐先は見舞うというよりは、様子見という体だった。“大丈夫ですか”という言葉さえ出さず、ズカズカと二藤次の伏せている寝床へと入った。座らず、二本の足で二藤次の姿を見下ろす。
広忠は祐先の後ろから問うた。
「お前か。義父上を襲ったのは。」
祐先は即座に振り向き、広忠へ言葉を投げた。
「私は無防備な男を襲うような卑怯者ではない。殺そうと思えばすでに殺している。」
その睨んだ目は、意外にも潤っていた。
「私の手で殺めようと決めていたものを……どこの誰だ。決して許さぬ。」
道子は訊いた。喧嘩腰に。
「なら、あなたは何なのですか。」
「知らんわ。」
言葉を投げ捨てた。拳を下に握りしめ、祐先は道子を殴ろうとでもしたのだろうか。……その悔しそうな表情に、かつての祐経を思い出した。凛々しい顔つき、子は親に似るとはこのことか。




