第十二章 第二話
祐先は言った。
「二藤次は奥州へ下るときも、武具を身につけなかった。御家人であろう者が。そんな奴を倒したら、己が笑いものにさせるわ。」
唾を吐いた。
「正々堂々、刀を持って倒したかった。それでこそ、武士の本懐。」
祐先は二藤次を襲っていない……。と言うことは、奥州人の誰か。
「とにかく、このことは浪岡の衛府にとっても重大事。二藤次は一応”御家人”なのだから。徹底的に犯人捜しをいたす。」
そういうと彼は馬にまたがって北東へ去った。このとき真備は決意していた。真備は道子へ訊ねる。
「道子。お前は二藤次殿が治るまで介抱を続けたいか。」
「そうしたいですが・・・突然なんです。」
奥州、特に北奥の奥州人に関して言うと安東氏の力が強い。十三藤原氏の力を吸収したので、鎌倉の監視があろうとも、互角に張り合えるだけある。兵船は消失したが、兵数自体は温存している。鎌倉にとって脅威だ。
そうであるので、奥州人が何をしようとしていたか把握できるはずだ。もしくは、安東高季自身が差し向けた刺客かもしれない。
道子は言った。
「父上・・・。場合によっては父上にも危険が及ぶかもしれません。」
心配そうだ。一方で娘は父を止めもしない。互いに心を理解している。
思えば、直言は二度目か。かつて、殿に“戦いはやめよ”と訴えたことがあった。それ以来、気まずくなって、職を辞することにつながった。
二藤次を凶刃から救うことこそ、恩返しなのではないか。




