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第八章 第二話
夜になると、二子は先に寝る。いつも虎御前は二藤次に、適当な砕けた話をする。……主に遊女時代のこと。はげつらで腹の出た商人が、緊張のしすぎでくそを漏らした話。立派な武士でイケメンなのに、あそこは短小でげんなりした話。……二藤次は適当に相槌をし、笑みを浮かべる。
闇が深まると、燭台の皿につきたる火はさらにきらめく。二藤次はこれもまた適当にだが、かつ二子を起こさないように謡い(うたい)始める。虎御前はなるがままに舞う。炎の周りを童子の如く。決してそれは、暗さが老いを隠しているからではない。
虎御前は勘付いている。男たちは悲壮な道を歩むことを。
とある日、感極まって虎は泣いた。二藤次は静かに寄り、静かに抱きしめる。……灯も消えた。
その日に限って、十郎は起きた。音がするほう……少しだけ襖を開く。
月の光が、障子を透る。
十郎は、恋などしたことがない。頭にあるのは仇討ちだけ。……目に入り込んできたのは、息の荒い二人の男女。……特に虎御前の姿が焼付く。
二十歳の若者にしては、遅い芽生えであった。




