閉幕→閑話
少女の願いは聞き届けられた。それでも少女の望みは、きっと
──あとわずか、といったところで間に合った。
「お兄ちゃん!?」
「生きてたのか!?」
けれど、もう壊れかけの体は動こうとしない。足は立つことを放棄し体は地面へと崩れる。
「だ、大丈夫!?」
「あ、ああ、一応」
「良かった。本当に良かった……!」
あずさがまともに立てない僕に抱きついてくる。何とは言わないが柔らかいモノが胸板に押し付けられているが、そもそも倒れたときに走った激痛と壊れかけの体を抱きしめという形で圧迫されている時の痛みでありがたみはない。
「離してやれ、あれでもかなり体が壊れてる。むしろ動けたのが奇跡みたいなもんだ」
紅我の言葉で泣きそうになりながら離れるあずさ。そこに浮かぶのは後悔だ。
「ごめんなさい。それじゃすまないけど、ごめんなさい」
「ん、大丈夫。僕は僕のやることをやっただけだし」
僕の言葉を聞くとあずさはほっと表情を緩める。
☆
「……で、どうやって帰るんだお前ら」
「……帰るって、どこに」
紅我と赤い目と黒い目のオッドアイの子が話をしていた。
「俺達の家に来るか?」
「……いいの?」
「良いんじゃないか? ここの住人なんて大抵元の世界で居場所がないやつらだし」
「じゃあ、遠慮なく」
「で、詠夜をどうやって連れて帰る? 一応能力はあるし、直すか?」
「うん。ちょっと治すじゃなくて直すなのが気がかりだけど……」
私は、最後になるはずの、『色無紅我』の姿を目に焼き付けて。
「……こうなるなら、せめてキスの1回や2回、ねだっておくべきだったかしら」
一人愚痴り『色無紅我』へ背を向ける。
「今世の別れになるかもしれんのだぞ。別れもないのか」
「別れを告げたら残りたくなるもの。妹のためだからね」
「まるで免罪符だな?『妹の為だから、自分の想いを無下にしても構わない』と。その妹からしてみれば迷惑極まりない」
「迷惑すりゃ良いのよ。こんな不出来な姉と違い、あいつは星継としても人としても将来有望だからね。あいつが居なくなるより、私が居なくなった方が幾分かましなのよ」
「気付いているか? それが自分の正当化になってる事を」
「……言われなくても」
「そうか。では戻ろうか、故郷の世界に」
「妹は無事に生きれるんでしょうね?」
「ああ、この世界と比べて故郷の世界は遥かに時間の流れは遅い。お前が出て行って二年程度しかたっていない」
「……そう」
そして星継王華はこの世界から姿を消した。




