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願いを魔法に  作者: 由吉
五章

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第5章 第22話 空へ続く手掛かり

 港へ戻ってから、数日が過ぎた。


 その朝、沖に見えた帆を、ルナは桟橋の手前から見つめていた。


 何度も見に来た。そのたびに違う船だった。


 けれど、今日は違った。


「あの船……」


 船首がこちらへ向く。甲板の上で、人が動いていた。


 ルナは長杖を握り直し、岸沿いに駆けた。


 縄を持った港の人が前を通る。慌てて足を止め、荷物の置かれていないところへ寄った。


 船がゆっくり近づいてくる。


 舷側に、見覚えのある顔が現れた。


「ロークさん!」


 顔がこちらを向いた。


 ルナは手を上げた。その隣で、にゃん吉君が高く浮かぶ。


 ロークは目を細め、すぐに甲板の奥へ何か声をかけた。バルトが顔を出し、大きく手を振った。


 縄が渡され、船が岸へつながれる。


 渡された板をロークが下りてくるまで、ルナはその場で待っていた。


「帰ってたのか」


「はい」


「二人とも、無事か?」


 ロークの目が、ルナからユニへ移った。


「ワン」


 頭上から声がした。


 ロークはそこも見上げ、息を吐いた。


「そうか」


 近くで見ると、頬にひげが伸びていた。上着の袖には、白く乾いた跡がついている。


「俺たちより早かったな」


「島で会った方に、ゲートで戻してもらいました」


「島に、人がいたのか」


「はい。お話も聞けました」


 ルナは収納バッグへ手を添えた。


「見てもらいたいものがあるんです。今、お時間はありますか?」


 ロークは船を振り返った。バルトが荷下ろしの様子を見ながら、片手を上げた。


「少しならな」


     *


 倉庫の脇で、ルナは手帳を開いた。


 ロークが隣からのぞき込む。


「双岬泊は、ありました」


 頁の両端に描いた岬を、指で示した。


「二つの岬の間に入江があって、浜から石段が続いていました。上には、町の跡も残っていたんです」


 ロークはすぐには答えなかった。


 ルナの指が離れたあとも、描かれた入江を見ていた。


「石段が、あったのか」


「はい。建物は崩れていましたけど、道も分かりました。部屋の中に、器が残っているところもありました」


「そうか」


 ロークの指が、紙の端へ触れた。


「あの海図の先に、ちゃんとあったんだな」


 ルナは頷いた。


「でも、島の奥までは行っていません。高いところから見ても、向こうの海は見えなくて。山が、いくつも重なっていました」


 描いた道の先は、白いままだった。


 ロークはその余白にも目を向けた。


「魔獣は?」


「いました。私たちを襲ってはきませんでしたけど、大きな群れも、ほかの魔獣が近づかないようなものも見ました」


「それで、引き返したんだな」


「はい。先に何がいるのか、分からなかったので」


 ロークが頷いた。


 ルナは、島で聞いた海の話も伝えた。


 昔の戦いによって、島と周りの海域が変わったということ。


 かつては、船が入っていたということ。


「ただ、そこは聞いた話です。昔の海を、自分で見たわけではありません」


「ああ」


 ロークは手帳から顔を上げ、船の方を見た。


「古い海図だけじゃ、今の海は渡れんわけだ」


 甲板から、木箱を置く音がした。


 ルナもそちらを見た。帆は畳まれ、乗っていた人たちがそれぞれの仕事をしている。


 全員が帰ってきた。


 ようやく、そのことを確かめられた。


「ロークさん。ありがとうございました」


 ルナは手帳を閉じ、頭を下げた。


「船を出してくれたことも、あそこで引き返すって決めてくれたことも」


「船を戻すところまでが、俺の仕事だ」


 顔を上げると、ロークはいつものように立っていた。


「そっちも、帰ってきた。それでいい」


     *


 船の片づけが落ち着くのを待ち、ルナはユニと一緒に、もう一度ロークを訪ねた。


 今度は、船のことを相談するためだった。


「私たち、王都へ戻ろうと思っています」


「次の行き先が決まったか」


「はい。でも、この船をどうするか、まだ相談できていなくて」


 足元の板には、細かな傷が増えていた。


 ルナは修理を終えた日のことを思い出した。岸から見上げた船は、そのときより身近に感じられた。


「また使うかどうかは、まだ分かりません。でも、今すぐ売ってしまうことも、決められなくて」


 ユニへ顔を向ける。


「ユニちゃんは、どう思う?」


「ルナが残しておきたいのでしたら、それで構いません」


「うん。もう少し、残しておきたい」


 それから、ロークへ向き直った。


「留守の間、管理をお願いできますか?」


「預かることはできる。ただ、岸につないでおくだけでも金はかかるぞ。船底も、縄も、見ておかなきゃならん」


「はい。必要なお金も、教えてください」


 ロークは係留場所のことから説明した。


 普段の手入れにかかる費用と、管理の手間賃。大きな修理が必要になったときには、別に相談すること。


 ルナは一つずつ聞き、分からないところを尋ねながら書き留めた。


「勝手に売ったり、誰かへ貸したりはしない。それは、あんたたちが決めることだ」


「お願いします」


「連絡は、どこへ出せばいい?」


「王都のギルドで、手紙を受け取れるか相談します。決まったら、こちらへ知らせます」


 当面の費用を払い、二人でも確認できるよう、約束を書いた紙を残した。


 話が済むと、ルナは舷側へ歩いた。


 岸との間で、水が静かに揺れている。


「この船、直してよかったです」


 ロークが隣へ来た。


「島までは、届かなかったがな」


「でも、あの海を見るところまでは、運んでもらえました」


 陸で話を聞いていただけでは、分からなかった。


 帆を打つ風も、船が進めなくなる海も。


 引き返すと決めるまでに、ロークたちが何を見ていたのかも。


 ルナは舷側から手を離した。


「次は、天空に浮かぶ島へ行きたいんです」


「空?」


 後ろからバルトの声がした。


 ルナが頷くと、バルトは見上げかけて、笑った。


「次は空か」


「まだ、どうやって行くのかも分かりません。龍なら知っているかもしれないと聞いたので、まずは、会う方法を調べてきます」


「そりゃ、この船じゃ届かんな」


 ロークが船縁を軽くたたいた。


 ルナも笑った。


「はい。だから、それまでお願いします」


     *


 出発の朝、ルナは宿の窓を閉めた。


 港では、今日も荷物が運ばれている。


 船が帰ってくるのを待っていた間、何度も眺めた景色だった。


「ユニちゃん。帰りは、船と列車で戻ってもいい?」


「はい」


「少し、景色を見ながら考えたいんだ。島で聞いたこと、まだうまく整理できていないから」


 ユニに頼めば、王都へすぐに戻れる。


 それでも、今は窓の外を見ながら、手帳を開く時間が欲しかった。


 ルナは収納バッグを肩へ掛けた。


 港でロークたちに別れを告げ、帰りの船に乗った。


 甲板から手を振ると、バルトが腕を高く上げた。ロークはその隣で、片手を上げていた。


 岸が遠ざかるまで、ルナはそこに立っていた。


 それからの道のりは、数日かかった。


 船を降り、列車を乗り継いだ。


 途中の町では、煮込みを急いで口へ入れ、熱さに言葉を失った。宿では、広げた毛布の真ん中ににゃん吉君が収まり、端を少し分けてもらった。


 列車の窓の外には、畑が続いていた。


 ルナは膝の上で手帳を開いた。


 島で描いた地図は、途中で終わっている。


 空いているところを埋めたくなったけれど、見ていない道は描けなかった。


 その次の頁には、女性の言葉がある。


 この世界は、マナで満ちています。


 窓の外で、畑の向こうから家々の屋根が現れた。


 ルナはしばらくそれを眺め、手帳を閉じた。


     *


 王都の駅へ降りると、人の声が一度に近くなった。


 荷物を抱えて急ぐ人の横を抜け、ルナは広場へ出た。


 見覚えのある通りが、正面へ続いていた。


「帰ってきたね」


「はい」


 ユニの頭上で、にゃん吉君が揺れた。


 足は自然と、ギルドの方へ向いていた。


 扉を開くと、広間には大勢の冒険者がいた。掲示板の前で話している人も、机を囲んでいる人もいる。


 その間を、白いものが飛んでいった。


「あっ、にゃん吉君」


 呼ぶより先に、受付の女性が顔を上げた。


 差し出された腕の中へ、にゃん吉君が収まる。


 ルナは足を緩め、笑ってしまった。


「お久しぶりです」


「おかえりなさい」


 女性が、白い身体を抱いたまま微笑んだ。


「ユニさんも。お二人とも、お元気そうですね」


「はい」


 ルナは受付の前へ立った。


「……ただいま、戻りました」


 口にすると、肩の力が少し抜けた。


 話したいことは、たくさんあった。


 けれど、今日は先に聞きたいことがあった。


「少し、相談してもいいですか?」


「ええ。どうされましたか?」


「以前、ユニちゃんが黒龍の子供を親へ返した事件について、聞きたいんです」


 女性はユニへ目を向け、それからルナを見た。


「その黒龍に、会う方法を探しています。今どこにいるのか、何か分かることはありませんか?」


「黒龍に会いたいのですね」


「はい。天空に浮かぶ島へ行きたいんです。龍なら、行き方を知っているかもしれないと聞いて」


 ルナは手帳を取り出した。


 天空の島。


 その下に書き添えた、黒龍のこと。


 港では、名前を並べるところまでだった。


 ルナはその頁を開き、受付の台へ置いた。


「会って、話を聞きたいんです」


第5章 第22話「空へ続く手掛かり」


 港へ戻ってから、数日が過ぎた。


 その朝、沖に見えた帆を、ルナは桟橋の手前から見つめていた。


 何度も見に来た。そのたびに違う船だった。


 けれど、今日は違った。


「あの船……」


 船首がこちらへ向く。甲板の上で、人が動いていた。


 ルナは長杖を握り直し、岸沿いに駆けた。


 縄を持った港の人が前を通る。慌てて足を止め、荷物の置かれていないところへ寄った。


 船がゆっくり近づいてくる。


 舷側に、見覚えのある顔が現れた。


「ロークさん!」


 顔がこちらを向いた。


 ルナは手を上げた。その隣で、にゃん吉君が高く浮かぶ。


 ロークは目を細め、すぐに甲板の奥へ何か声をかけた。バルトが顔を出し、大きく手を振った。


 縄が渡され、船が岸へつながれる。


 渡された板をロークが下りてくるまで、ルナはその場で待っていた。


「帰ってたのか」


「はい」


「二人とも、無事か?」


 ロークの目が、ルナからユニへ移った。


「ワン」


 頭上から声がした。


 ロークはそこも見上げ、息を吐いた。


「そうか」


 近くで見ると、頬にひげが伸びていた。上着の袖には、白く乾いた跡がついている。


「俺たちより早かったな」


「島で会った方に、ゲートで戻してもらいました」


「島に、人がいたのか」


「はい。お話も聞けました」


 ルナは収納バッグへ手を添えた。


「見てもらいたいものがあるんです。今、お時間はありますか?」


 ロークは船を振り返った。バルトが荷下ろしの様子を見ながら、片手を上げた。


「少しならな」


     *


 倉庫の脇で、ルナは手帳を開いた。


 ロークが隣からのぞき込む。


「双岬泊は、ありました」


 頁の両端に描いた岬を、指で示した。


「二つの岬の間に入江があって、浜から石段が続いていました。上には、町の跡も残っていたんです」


 ロークはすぐには答えなかった。


 ルナの指が離れたあとも、描かれた入江を見ていた。


「石段が、あったのか」


「はい。建物は崩れていましたけど、道も分かりました。部屋の中に、器が残っているところもありました」


「そうか」


 ロークの指が、紙の端へ触れた。


「あの海図の先に、ちゃんとあったんだな」


 ルナは頷いた。


「でも、島の奥までは行っていません。高いところから見ても、向こうの海は見えなくて。山が、いくつも重なっていました」


 描いた道の先は、白いままだった。


 ロークはその余白にも目を向けた。


「魔獣は?」


「いました。私たちを襲ってはきませんでしたけど、大きな群れも、ほかの魔獣が近づかないようなものも見ました」


「それで、引き返したんだな」


「はい。先に何がいるのか、分からなかったので」


 ロークが頷いた。


 ルナは、島で聞いた海の話も伝えた。


 昔の戦いによって、島と周りの海域が変わったということ。


 かつては、船が入っていたということ。


「ただ、そこは聞いた話です。昔の海を、自分で見たわけではありません」


「ああ」


 ロークは手帳から顔を上げ、船の方を見た。


「古い海図だけじゃ、今の海は渡れんわけだ」


 甲板から、木箱を置く音がした。


 ルナもそちらを見た。帆は畳まれ、乗っていた人たちがそれぞれの仕事をしている。


 全員が帰ってきた。


 ようやく、そのことを確かめられた。


「ロークさん。ありがとうございました」


 ルナは手帳を閉じ、頭を下げた。


「船を出してくれたことも、あそこで引き返すって決めてくれたことも」


「船を戻すところまでが、俺の仕事だ」


 顔を上げると、ロークはいつものように立っていた。


「そっちも、帰ってきた。それでいい」


     *


 船の片づけが落ち着くのを待ち、ルナはユニと一緒に、もう一度ロークを訪ねた。


 今度は、船のことを相談するためだった。


「私たち、王都へ戻ろうと思っています」


「次の行き先が決まったか」


「はい。でも、この船をどうするか、まだ相談できていなくて」


 足元の板には、細かな傷が増えていた。


 ルナは修理を終えた日のことを思い出した。岸から見上げた船は、そのときより身近に感じられた。


「また使うかどうかは、まだ分かりません。でも、今すぐ売ってしまうことも、決められなくて」


 ユニへ顔を向ける。


「ユニちゃんは、どう思う?」


「ルナが残しておきたいのでしたら、それで構いません」


「うん。もう少し、残しておきたい」


 それから、ロークへ向き直った。


「留守の間、管理をお願いできますか?」


「預かることはできる。ただ、岸につないでおくだけでも金はかかるぞ。船底も、縄も、見ておかなきゃならん」


「はい。必要なお金も、教えてください」


 ロークは係留場所のことから説明した。


 普段の手入れにかかる費用と、管理の手間賃。大きな修理が必要になったときには、別に相談すること。


 ルナは一つずつ聞き、分からないところを尋ねながら書き留めた。


「勝手に売ったり、誰かへ貸したりはしない。それは、あんたたちが決めることだ」


「お願いします」


「連絡は、どこへ出せばいい?」


「王都のギルドで、手紙を受け取れるか相談します。決まったら、こちらへ知らせます」


 当面の費用を払い、二人でも確認できるよう、約束を書いた紙を残した。


 話が済むと、ルナは舷側へ歩いた。


 岸との間で、水が静かに揺れている。


「この船、直してよかったです」


 ロークが隣へ来た。


「島までは、届かなかったがな」


「でも、あの海を見るところまでは、運んでもらえました」


 陸で話を聞いていただけでは、分からなかった。


 帆を打つ風も、船が進めなくなる海も。


 引き返すと決めるまでに、ロークたちが何を見ていたのかも。


 ルナは舷側から手を離した。


「次は、天空に浮かぶ島へ行きたいんです」


「空?」


 後ろからバルトの声がした。


 ルナが頷くと、バルトは見上げかけて、笑った。


「次は空か」


「まだ、どうやって行くのかも分かりません。龍なら知っているかもしれないと聞いたので、まずは、会う方法を調べてきます」


「そりゃ、この船じゃ届かんな」


 ロークが船縁を軽くたたいた。


 ルナも笑った。


「はい。だから、それまでお願いします」


     *


 出発の朝、ルナは宿の窓を閉めた。


 港では、今日も荷物が運ばれている。


 船が帰ってくるのを待っていた間、何度も眺めた景色だった。


「ユニちゃん。帰りは、船と列車で戻ってもいい?」


「はい」


「少し、景色を見ながら考えたいんだ。島で聞いたこと、まだうまく整理できていないから」


 ユニに頼めば、王都へすぐに戻れる。


 それでも、今は窓の外を見ながら、手帳を開く時間が欲しかった。


 ルナは収納バッグを肩へ掛けた。


 港でロークたちに別れを告げ、帰りの船に乗った。


 甲板から手を振ると、バルトが腕を高く上げた。ロークはその隣で、片手を上げていた。


 岸が遠ざかるまで、ルナはそこに立っていた。


 それからの道のりは、数日かかった。


 船を降り、列車を乗り継いだ。


 途中の町では、煮込みを急いで口へ入れ、熱さに言葉を失った。宿では、広げた毛布の真ん中ににゃん吉君が収まり、端を少し分けてもらった。


 列車の窓の外には、畑が続いていた。


 ルナは膝の上で手帳を開いた。


 島で描いた地図は、途中で終わっている。


 空いているところを埋めたくなったけれど、見ていない道は描けなかった。


 その次の頁には、女性の言葉がある。


 この世界は、マナで満ちています。


 窓の外で、畑の向こうから家々の屋根が現れた。


 ルナはしばらくそれを眺め、手帳を閉じた。


     *


 王都の駅へ降りると、人の声が一度に近くなった。


 荷物を抱えて急ぐ人の横を抜け、ルナは広場へ出た。


 見覚えのある通りが、正面へ続いていた。


「帰ってきたね」


「はい」


 ユニの頭上で、にゃん吉君が揺れた。


 足は自然と、ギルドの方へ向いていた。


 扉を開くと、広間には大勢の冒険者がいた。掲示板の前で話している人も、机を囲んでいる人もいる。


 その間を、白いものが飛んでいった。


「あっ、にゃん吉君」


 呼ぶより先に、受付の女性が顔を上げた。


 差し出された腕の中へ、にゃん吉君が収まる。


 ルナは足を緩め、笑ってしまった。


「お久しぶりです」


「おかえりなさい」


 女性が、白い身体を抱いたまま微笑んだ。


「ユニさんも。お二人とも、お元気そうですね」


「はい」


 ルナは受付の前へ立った。


「……ただいま、戻りました」


 口にすると、肩の力が少し抜けた。


 話したいことは、たくさんあった。


 けれど、今日は先に聞きたいことがあった。


「少し、相談してもいいですか?」


「ええ。どうされましたか?」


「以前、ユニちゃんが黒龍の子供を親へ返した事件について、聞きたいんです」


 女性はユニへ目を向け、それからルナを見た。


「その黒龍に、会う方法を探しています。今どこにいるのか、何か分かることはありませんか?」


「黒龍に会いたいのですね」


「はい。天空に浮かぶ島へ行きたいんです。龍なら、行き方を知っているかもしれないと聞いて」


 ルナは手帳を取り出した。


 天空の島。


 その下に書き添えた、黒龍のこと。


 港では、名前を並べるところまでだった。


 ルナはその頁を開き、受付の台へ置いた。


「会って、話を聞きたいんです」

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