真の黒幕編
エジャートン公爵家の王都の屋敷にて。
「アデレード様、こちらがアデレード様のお部屋でございます」
「あら、素敵な部屋ね」
アデレードはエジャートン公爵家の使用人に案内され、上品に口角を上げる。
「それから、後で旦那様からご子息アーヴィン様の家庭教師についてお話があるそうです」
「分かったわ。準備が出来たら行くとお伝えして」
「かしこまりました」
使用人が立ち去り、アデレードは部屋に一人になる。
「これで私が次期公爵夫人よ……! あのサックヴィル公爵家の坊やは上手くやってくれたようね」
アデレードはほくそ笑んだ。
全てはアデレードの手のひらの上だったのである。
クロムウェル男爵家に生まれたアデレードは上昇志向がとても強かった。
しかしネンガルト王国では上級貴族と下級貴族の結婚が許されていない。そこでアデレードが注目したのは上級貴族と縁続きのある子爵家。
家督を継がない次男以降が、家の持つ子爵位を継いで新たに子爵家を起こすことはよくあることだ。そういった子爵家になら男爵令嬢であったアデレードが嫁いでも問題はない。
しかし、アデレードは更に上を狙っていた。
(私が公爵夫人になるには、本家の令息が亡くなること。エジャートン公爵家はデクスターの坊や以外に子供がいない。丁度良いわ。それに、レスター様はとても優しく素敵な方だし)
そう思い、アデレードはレスターと仲を深め、結婚まで漕ぎ着けた。そして、結婚して一年で息子アーヴィンを出産し、レスターの妻としての地位は安泰になった。
アデレードはレスターの妻として社交に勤しみながら、デクスターを排除する為にも行動する。
当然、アデレードはデクスターの交友関係は調べていた。そして、デクスターの婚約者フローラと彼女の周辺の人間に着目した。
(ヴェイン侯爵令嬢、それからサックヴィル公爵令息。特にサックヴィル公爵令息は使えそうね……)
アデレードはヘンリーがフローラへ並々ならぬ想いを抱いていることに気付いたようだ。そして、それを利用することにした。
息子アーヴィンが三歳になった頃、アデレードはヘンリーに動いてもらうべく行動する。
夜会でヘンリーの背中を押す会話をしたのだ。
「ねえ、例え話なんだけれど、もしも婚約者がいたとして、その婚約者が自分よりも異性の幼馴染を優先する場合はどうする?」
アデレードはさりげなくヘンリーの様子を確認しながら、友人達にそう話題を提供した。
友人達は色々答えてくれる。そして友人がアデレードはどうするのかと聞いた時、待ってましたとアデレードは心の中でほくそ笑んだ。
そしてヘンリーの様子を確認しながら答える。
「そうね……私なら、婚約者に不慮の事故に遭ってもらうかしら。馬車を細工したりしてね」
きっとこれでヘンリーは行動に移す。
アデレードはそう確信していた。
そして予想通り、ヘンリーは行動を起こしてくれたようで、デクスターはサリーの元へ行く途中事故に遭い亡くなった。
デクスターの訃報を聞いた時、アデレードは誰もいない場所で高笑いをしてしまったくらいだ。
「やったわ! これでレスター様がエジャートン公爵家の次期当主。私は次期公爵夫人よ! 息子のアーヴィンも、公爵家を継げる!」
アデレードは笑いが止まらなかった。
葬儀でも、笑いを堪えるのに必死で下を向いて肩を震わせていた。
夫のレスターからは、「大丈夫かい? そんなに辛いのかい?」と優しく心配された。
肩を震わせて泣いていると思われたので、アデレードの計算通りである。
こうして、葬儀が終わり一段落したら、アデレードはレスターと共に息子アーヴィンを連れ、拠点をエジャートン公爵家の王都の屋敷に移す。
ネンガルド王国では上級貴族と下級貴族の結婚は不可能だ。男爵令嬢だったアデレードが公爵夫人になることは普通は出来ない。
しかしアデレードは既にレスターと結婚し息子を生んでいる。レスターがエジャートン公爵家を継ぐことになったからという理由でアデレードと離婚は不可能になっている。
よって特例でアデレードは次期公爵夫人になることになったのだ。
「男爵令嬢だった私は公爵家と縁のある子爵家に嫁いで、公爵夫人に。最高じゃない」
アデレードは新しく与えられたエジャートン公爵家の自室で、笑いが込み上げてきた。
こうして、アデレードは自分の理想を叶えたのである。
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これで完結です!
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裏で企んでいるキャラが多めの物語でした。




