第五話 霧の日の鐘
白い霧は今日も足元まで沈んでいた。
そして雨は風と共に勢いを増し、村を強く打ちつけていた。
家の中でも話し声が掻き消される程の雨音だった。
そんな中、皆で話す時は、身振り手振りを交えながら、大声を張った。
しかし上手く通じず、結局は相手の耳元で叫ぶように話す事になった。
雨が降り続いて三日目の今日も、ランプの灯を頼りに、皆でひっそりと内職をしていた。
デュリナ「凄い霧だね!」
雨音に負けないように、デュリナはエルシャの近くで声を張った。
エルシャ「雨が強い日はそうなの!」
お母さん「雨上がりも凄いんだよ、周りが全く見えないんだから」
カイス「そんなになるの」
カイスは少し身を乗り出した。
お母さん「自分の周りが靄に包まれて、歩いてると何処にいるのか分からなくなるんだよ」
デュリナ「それじゃ迷子になっちゃうじゃない。どうするのそういう時」
お母さんは針に糸を通しながら頷いた。
お母さん「たまに鐘が鳴るだろ教会の、その音に向かって歩いて行くんだよ」
デュリナ「それでしょっちゅう鳴ってるんだ」
エルシャ「もう一つ危険な事があるの」
デュリナ「何々もう一つって?」
エルシャ「霧が濃い日は野生の動物達が獲物を狙ってるの」
カイス「熊とか狼とか!」
エルシャは針仕事の手を止めて頷いた。
エルシャ「そう、そういうのが霧の中から『があっ』って襲って来るの」
デュリナ「霧の時の山って危ないんだね」
お母さん「だから、こういう日は外に出ないんだよ」
お母さんはそう言うと椅子から立ち上がり、台所へ向かい昼食の準備を始めた。
外の天気は荒れていたが、部屋の中はランプの灯りに包まれて、時折雑談を交えながら皆和気藹々と過ごしていた。




