第一話 霧の朝
辺りは山霧に包まれていた。
建物の影の向こうには、白い靄が浮かんでいる。
遠くから羊の鈴の音だけが、静まり返った景色の中を流れていた。
その中をエルシャとお母さんは歩いていた。
朝の冷えた畑には、露を乗せた草が一面に茂っていた。
エルシャたちが歩くたびに、裾が濡れた。
物置に鍬を取りに行き、それぞれ一本ずつ手に持って畑の隅に行った。
お母さん「じゃ、やるか」
二人で畑の端から固い土を鍬で掘り返し、ゆっくりと土を起こしていく。
そうやってしばらく作業を続けていた。
鍬を使って土を起こす作業がいくらか進む。
そして、そろそろ休憩にする頃だった。
エルシャがバテてきた。
エルシャ「ああ、疲れた!」
エルシャは地面に鍬を置いてしゃがみ込んだ。
そこへお母さんが近づいて来た。
お母さん「ちょっと休もうか」
二人は鍬を持って家の前迄歩いて行った。
入り口のところに鍬を置いて、家の中へ入った。
エルシャは洗面所で手を洗い、ダイニングの椅子に座った。
お母さんがコップに水を注いで持ってきてくれた。
エルシャ「ありがとう」
椅子に座ってぐったりしているエルシャにお母さんは一言言ってきた。
お母さん「体力無いね」
エルシャ「私、外の仕事向いてないかも」
コップの水を少しずつ飲みながら、お母さんはエルシャを少し心配する眼差しで見ていた。
お母さん「そんな事じゃ此処の仕事はやってけないよ。もう少し頑張りなよ」
エルシャ「分かってるけどさ、でも今日はもう無理だよ」
一瞬の間を置いてお母さんは言う。
お母さん「仕方ない、じゃあ今日は中に居な」
お母さんはコップの水を飲み干すと、椅子から立ち上がり、畑の方へ向かった。
しばらく休憩してからエルシャは椅子に座って内職のレース編みを始めた。
お母さんは外で鍬を使って畑仕事の続きをしながら今後のエルシャの身を案じていた。
お母さん「今日はなんだか霧が濃いね」




