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こちらが四辻御堂です⑥

前回までのお話→アヤカシ族と人間族が別れて暮らすようになった後、世界中に散らばってしまった妖力を持つ不思議な道具たち。それらを回収し保管する場所、それが四辻御堂だとスオウは言う。そこへクッキーをつまみ食いしていたクロが戻って来る。

 まだクッキーが口の中に残っていたらしい。クロのほっぺがぷっくりとしているし、モゴモゴと口を幸せそうに動かしている。お皿に山盛りにされたクッキーをテーブルに置いて、クロは満足そうに椅子に触った。

 ちょこん、ポテっという効果音が付きそうな、幼い子どもらしい座り方に、渚の顔もつい緩む。その間にスオウが丁寧に紅茶を入れ直す。再び、いい匂いが空間を満たしていった。

 スオウの話は、普通の中学生として生きていれば到底信じられないものだ。しかし絵巻について語るスオウの目は、とても真剣で、悲しそうで、実際に見てきたかのような圧すら感じさせた。信じざるを得ないという気持ちの方が、渚の中で強かった。

 紅茶を飲みながらの束の間の沈黙が、空気を重くしていく。自分から何か話さなきゃいけないんだろうということは渚にもわかったが、それでも口は重かった。なんとか、声を振り絞る。


「あの……その話と、私のお母さんと、実際のところなんの関係があるの?」


 それがまさに待っていた質問だったらしく、スオウは持っていたカップをピクリとさせて止めた。クロのモグモグと遠慮無く動いていた口も、静かに止まってしまった。スオウがカップを置いて、その質問に答える。


「実は……10年前、また化け狐族が争いを仕掛けてきた」

「嘘でしょ!?」

「本当だ。過去の恨み辛みを募らせて、力のある『指導者』と呼ばれる狐面の女を筆頭に、我らに攻撃してきた。年々、力も数も小さくなっている我々は、強大な妖術の前にあっという間に打ち倒されていっちまった」

「そんな……酷い」

「もう終わりだとみんなが思った時……澪さんが話を聞きつけて助けに来てくれたんだ」

「なんでそこにお母さんが⁉︎」


 渚は勢いよく立ち上がった。その拍子に椅子が音を立てて倒れる。スオウはそんなことはまるで気にも留めずに、話を続けた。


「澪さんは……いや、あんたの一族は、今話した水龍と力を分け合った、巫女の末裔なんだ」

「は……?」

「そして澪さんは、あんたを守る為に自分の命を犠牲にすることを選んだ」


 渚の呼吸が止まる。様々な疑問が頭の中を駆け巡って、そして何ひとつ言葉にならなかった。スオウはそんな渚を見て、優しい視線を渚に寄越す。


「固まるのも無理ない。ちゃんと説明する。そして、あんたにも協力を頼みたい。世界の為に。澪さんの命の為に」


 スオウの目に本気が伺える。クロがそっと、渚の椅子を元に戻してくれた。渚はスオウの圧に押されて、自分の椅子に静かに座り直し、深呼吸した。

 スオウは紅茶を一口飲んで間を空け、渚にも紅茶を勧めた。どうやらスオウも、どう話したらいいのか悩んでいるらしい。そして急に天を仰ぐと、両手を万歳させて叫んだ。


「恨みっこ無しですぜ、澪さん!」


 パァンと手を打ち鳴らして、スオウは渚に勢いよく向き直った。呆気に取られた渚が思わず、「びっくりしたぁ」と漏らすと、スオウはいつものようにひょうきんさを交えつつ、渚に実際どこまで知ってるかを聞いた。しかし渚は、母からも父からも何も聞かされていないし、それどころか、祖父母や親戚にすら会ったことが無いと答えた。親戚はいないと聞かされていたのだ。母方にも父方にも。

 それを聞いたスオウはまた頭を抱えて、ふぅと息を強く吐いた。


「えーっと……あんたは水龍の巫女の正当な末裔で、澪さんは、簡単に言えば現在の巫女様ってやつなのさ」

「へ?」

毎週月曜と金曜の22時頃、続きを更新予定です!

活動報告には質問箱を設置しておりますので、ご質問やご感想やリクエストなど、お気軽にご活用ください。

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