変わり者の婚約者〈アンダンティーノ視点〉
セイラが元の世界に戻ったのを見届け、セイラが目覚めるのを待っていた。
しばらくするとベッドの上でセイリーンが身じろぎし、父親と会話すると起き上がって立とうとする。すると、まだ意識が朦朧としているのか彼女の身体がグラリと揺れた。慌てて近くで見守っていたボクがセイリーンを支えた。
「危ない」
ボクの声に彼女が振り返った。その姿はいつもと変わらない。
「すみません、もう大丈夫ですわ。殿下も計画に加わられたそうですね。殿下は何を担当されたのです?」
ボクが誰だかを認識すると、いきなりの挑戦的な言葉を投げかけてきた。彼女がセイラじゃないことを感じる。
「セイリーン、もう少し気を使った物言いをせぬか。失礼であろう」
「いや、気にしないでいい。研究者なんてそんなものだろう。事前にどんな人物かもそれとなく聞いていたし驚きはしない」
「私が変わり者で可愛げが無い令嬢だとでも聞いていましたか?」
ナゼか彼女はボクにかなり挑戦的だ。だが、すぐに会話の切り返しができるところに彼女の知性を感じた。悪くはない。
「キミはなかなか反骨精神が旺盛のようだね。まあ、今日のところはゆっくりと休むといいよ。明日からはあちらの世界でのことを詳しく聞かせてもらうことになるから」
「かしこまりました......ではルバート! さっそくあなたに新しい魔道具開発の相談をしたいんだけど」
ボクと話し終わると彼女はすぐにルバートと2人で話し始めた。心を許しているらしいルバートとは普通に話している。彼女は今までボクと交流が無かったから、警戒してボクにはあまり好意的ではないのかもしれない。
(彼女と早急に信頼関係を築いていかねばならないな)
セイリーンにはセイラにあったやわらかさがない。あの、どこかふんわりと自分を受け止めてくれるような抱擁力を持つセイラを恋しく思った。
翌日、改めてセイリーンと会って体調を尋ねると、"ルバートと開発したい魔道具の話をしていたら、あちらの世界で試してみたいことがドンドン浮かんできてなかなか眠れなかった”なんて言う。
昨日とは違って何故かボクに好意的になっていて、自分の思いを興奮して話してくるものだから少し驚いた。研究者って何を考えているのか分からない。ルバートもかなり変わってるしそんなものだろうか。
「今日はボクに好意的だね?昨日は緊張していた?」
「昨日は......ごめんなさい。あちらの世界から帰って来たばかりで興奮していたのですわ」
「そうか。これからはキミと仲良くなれたらいいなと思っているんだけど」
「ええ。私もアンダンティーノ殿下に興味があります」
「興味?」
「ええ。魔法がお好きなのでしょ?大抵のことならば、知りたいと思うことに答えて差し上げられますわ」
「キミは随分と自信家なんだね。ボクもかなり詳しい方だと思うけど?」
「そうなのですか?ならば私と同志になって頂きたいですわ」
「同志?夫婦だろう?」
「同志であり夫婦でお願いします」
「キミって面白いね」
セイリーンは首を傾げている。彼女はやはり変わり者だ。でも、イヤじゃない。ズレているけど、彼女は面白そうではある。
その後、2時間を越える聞き取り調査を行うと、ボクもセイリーンもさすがに疲れを感じた。
「殿下、時間を頂けましたら事前に報告書を作って参りましたのに。殿下の手を煩わせるだけで効率的ではありませんわ」
「いや、直接聞きたいこともあったから......それにしてもあちらの世界は似ていて非なる世界だね。やはり魔法が無いというのが大きい。ぜひボクも行ってみたいものだ」
「殿下が?失礼ながら、殿下が自ら危険を冒すようなことを希望されるとは思いませんでしたわ」
「キミはきちんと戻ってきたじゃないか」
「まあそうですけれど」
意外そうにボクを見つめる彼女は、ボクが軟弱な男に見えているのだろうか。それならば、誤解を解かねば。思い違いをしてもらっては困る。さすがにボクのプライドが許さない。
「ルバートに新しい魔道具開発を依頼していますの。完成の暁には殿下もあちらの世界に連れて行って差しあげますわね」
「無論、そのつもりだ」
ちょっとムキになり、食い気味に答えてしまった。
「ふふ、頼もしいですわね。それにしても、こんなに天気が良いのにお城の中にこもってばかりでは不健康ですわ。気分転換にお庭でも散歩しませんこと?」
「そうだね。ボクもキミ自身について知りたいし丁度いい」
「私自身のこと?」
「そう。もっと気軽に話してもらって構わない。ルバートと話していたようにボクにも話してくれ」
「あら......それは助かるわ。その方がラクだし」
「いきなりか」
「あなたがそう望んだのでしょう?」
セイリーンは意気揚々と扉に向かって歩き出した。外は冷えるというのに、セイリーンは羽織物も持たずに出て行こうとしている。どうやら彼女は思ったら一直線というところがあるらしい。メイドを呼んでショールを用意させる。
ショールを肩にかけてやると、セイリーンは素直にお礼を述べた。彼女の父から気遣いに欠けるとは聞いていたが、意外と話は通じるし常識はありそうだ。ただ、令嬢らしい気遣いには欠けているとは言えるが。
王妃の仕事が務まりそうかというと、本人にとってあまり関心が向かない仕事に違いないが、そつなくこなせそうな賢さはあるのでどうにかなるだろう。自分の伴侶として悪い人材ではないと思う。だが、愛せるかというと気持ちはすぐには切り替えられない。
庭に出てバラ園を歩くと、セイラと散歩したことを思い出した。姿は一緒なのに、中身が違うとまるで違った人といるようだと感じて切なくなった。
「バラの香りが良いわ」
ふと見ると、セイリーンがバラの香りを楽しんでいた。セイラがバラの香りを楽しんでいた姿と重なる。セイラに"セイリーンを大切にしてやってくれ”と言われたことを思い出す。
「バラは好き?」
「ええ、香りが良いし癒されるから。研究で疲れた時には気分転換によく庭を散歩していたわ」
「そうか、では天気が良い日はなるべくここに散歩しに来るとしよう」
「良い案ね」
キリっと答えるセイリーンはセイラではないが、また違った魅力を持つ令嬢なんだなとアンダンティーノは思ったのだった。
セイリーンにセイラの面影を重ねてついつい思い出に浸っちゃうアンダンティーノ。セイリーンのマイペースぶりに翻弄されています。
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