帰ってきた婚約者
王との会議後も私はいつも通り過ごすように指示されていたので、学園には普通に通っている。お父様やスワロウ様も王城でいつも通り仕事をしている。
王子達はしばらく登園している姿を見かけなかったから、王様から例の極秘プロジェクトについて聞かされて対応しているのではないかと思われた。
何事もなく1週間が終わろうとしていた頃、ルバートがひょっこりと屋敷を訪ねてきた。
「お久しぶりです。セイリーンもお母様も元気なようで何よりです。」
初めて会うルバートは私と同い年の眼鏡をかけた小柄で平凡な見た目の青年だった。この世界の男性としては背は低く、160cmくらいのセイリーンといい勝負かもしれない。真面目そうな印象だ。
一緒に出迎えたお母様は隣国のお菓子のお土産を受け取ると、“あちらの名物のあの料理は美味しいわよね!”などといつも通り快調なマシンガントークを始めた。
「ルバート、相変わらず魔法に打ち込んでいるんですってね~。あなたがいない間にセイリーンちゃんのことを両殿下が気に入ってしまったわよ。手紙もほとんどよこさず長々と戻ってこないあなたがいけないわよねえ。自業自得なんだからセイリーンちゃんを責めるのはダメだからね?」
お母様はセイリーンを置いて留学してしまったルバートが気に食わないらしい。だが、ルバートがいないことで両殿下が積極的に私に近づいて来たことで、むしろ都合が良いと考えている節もある。
私はお母様のトークをやや強引に打ち切ると、ルバートを客間に連れて行った。お茶の用意をしてもらうと、2人にしてもらう。もちろん、扉は開けたままなので小さな声で話す。
「はじめまして、ルバートさん」
「そんなに小さな声で話さなくていいよ。今、防音魔法をかけたからさ。気にせずいつも通り話して」
さっきのあいさつの時とは態度が変わって、随分と砕けた話し方に変わった。まあ、元々色っぽい関係ではないと聞いている。だが、私は初対面であったのでちょっと面食らった。
「事情は聞いているよ。セイラというんだよね?」
「はい。事情を聞いたのならば、今日はこちらには何をしにいらっしゃったのですか?」
「ねえ、その堅苦しい話し方やめない?2人だけなんだしさ」
「はあ......では普通に話させてもらいます。それで訪ねて来た理由は?」
ルバートは女性と話すにしては雑な態度で、クセがある人物のようだ。それとも研究者ってこんなもんなのか?
「いやあ、僕たちがどんな研究をしていたのかとか気になってるでしょ?詳しく知りたいかなと思って。後は君の状態を確認しに来た。見た目だけではホントに本人と変わらないねー」
「そうでしょうね。お母様やオランジェはいまだに私をセイリーンと思っているもの。ところで、異世界に興味があって魔法を開発したようなことは聞いたけど、私の世界のことを知ってどうするつもりだったの?」
「異世界の知識を魔法に活かすに決まってるじゃない。僕達は魔法研究者だよ。魔法自体を進化させることが目的だ」
「そのためにセイリーンは新しい魔法を開発したの?あなたは魔道具をつくったって聞いたけど」
「セイリーンは天才だよね。だけど、僕が魔道具を開発しなかったらセイリーンはあちらの世界で人を操作するなんてことはできなかったんだ。まあ天才同士の同志ってこと。あ、ダジャレになっちゃったね♪」
アハハと笑うルバートはマイペースだ。
「あなた達、婚約者同士だったのよね?」
「惚れた腫れたなんて仲じゃないよ。さっきも言ったけど同志だよ。何か君さ、ちょっとセイリーンと話し方が似ているところあるね。ズバズバ言うところとか」
「そうなの?ちなみに興味がてら聞くんだけど、セイリーンってかなり美人だと思うのよね。魔法に造詣も深いし、好きにはならなかったの?」
「最初は好きだったかも。ほかの女の子とあまり話すことも無かったし。だけど、隣国に行ったらさあ、カラクター姉妹のお姉さんがめちゃくちゃ色っぽくて、これが"好き”という気持ちかぁなんて思ったんだよね」
「カラクター姉妹ね......知ってるわよ。両殿下とお茶していたのを見たことがある」
「何だって!アンダンティーノ殿下はセイリーンと結婚するからいいとしてプレスト殿下は惹かれてなかった?」
「ただの親類と言っていたわよ」
「良かった〜!そういや君さあ、両殿下に気に入られているんだって?いい働きしてるじゃん」
「そういう言い方しないでくれる?あなたって無神経よね。そんなんじゃホレてるお姉さんに振り向いてもらえないと思うけど」
「そういうこと言わないでよ~」
なんか、この人と話していると段々とイライラしてきた。多分、この人と私は合わないタイプだ。
「話がズレたけど、最初は2人で魔法開発をしていたのよね?」
「そう、魔法はセイリーン。僕は魔法を機械仕掛けでさらに発展させる分野が得意なんだ。セイリーンとさ、初めて魂を魔道具に移す実験した時はもうスゴク興奮したよ!」
何コワイことを2人だけで実験しているんだろう。成功したからいいけれど、魔法オタクって命知らず。だから、こんなプロジェクトも引き受けてしまうんだろうけど。どちらかというとセイリーンが主体でプロジェクトも進めていた節があるし。
「で、こちらの世界に来た感想はどう?楽しめてる?僕も聞きたいことがたくさんあるんだよね~」
この魔法オタクは巻き込まれた人の気持ち考えられないのかな。イラつく。
「あの、異世界に呼び出された人の気持ちを考えたことあります?あなた方の実験のせいでこうして巻き込まれた人がいるわけなのよ?」
「でもさ、こちらの世界のことを知ることができたわけじゃん。そちらの世界から実際に魂を呼んでここに来たのは君が初めてなんだよ。1号ってスゴイじゃない」
ダメだこりゃ。話が通じない。確かにここの世界に意識だけでやって来たのは1号でスゴイかもしれないけど!人権て言葉を教えてやりたい。
「話が通じないから次いきますね......今のあなたの役割は何をすることなの?」
「異世界から得た情報を管理するための魔道具作りだね、ザックリ言うと」
「それって私の世界のスパイってことよね」
「キミもスパイになるじゃん」
「なんて言い方するのよ!」
頭にきた私はテーブルをバン!と叩いていた。
「何を争っているんだ?」
振り返ると扉のところにスワロウ様が立っていた。お父様の姿も後ろに見える。お茶の追加が用意され4人で続きの話し合いをすることになったのだった。
ルバートもまわりにあまり関心を持たないタイプですが、自分が気になったことは相手の反応を気にせずガンガン攻めて行くタイプです。無神経ともいいます。
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