王との会議2
王様は気分良さそうにあごのヒゲを撫でている。
「なぜ、セイリーンの魂はこちらに留まる必要があったのでしょうか?」
スワロウ様の言葉に、私も同じ疑問を抱いた。
「まず、こちらからあちらの世界に行くことが今の時点では難しいことや、戻れる保証がないことが挙げられる。だが、物体そのものでなければ転移することが可能となったのだ。あちらの世界からも意識のみならば戻れる」
「ちなみに、魂を保護しながら安定した魔力を供給できるようにした魔道具を開発したのはルバートだ。現在はストリーが管理をし、ルバートには隣国で資料となる本などを調べさせている」
「ルバートは、セイリーンの実験が成功したのかを知らないようでしたが?」
「事前の実験には関わっている。だが、プロジェクト自体は知らせていない。だから、知らなくても不思議ではない」
ルバートに話を聞きだしても、さらにその先を知ることはできなかったというわけだ。本当に限られた人数しか知らされていない極秘のプロジェクトだというのが分かる。
「ルバートには帰国を要望する手紙をやったせいで、帰国の許可を求めるような連絡が王にいくかもしれません」
スワロウ様が先日の手紙の件を踏まえて伝える。
「ふむ。ルバートの様子も知りたいところであったから一時帰国させるのも良いだろう。魔道具調整の余地もあるしな」
私は、魂だけとなっているセイリーンがそろそろ限界を迎えると先ほど聞いて、大丈夫なのだろうかと心配だった。
「あの、魂だけとなったセイリーンは大丈夫なのでしょうか?」
「ルバートが開発した魔道具にはセイリーンの魔力が正常かが分かるセンサーが取り付けてある。現段階では緊急を要する危険はないが、疲弊してきている頃ではあると思われる。早めに引き上げられるようにと王からも配慮頂いている」
お父様の話にひとまずホッとする。きちんとセイリーンの状態は把握されているようだ。
「もうすぐ、セイリーンが偉業をなして戻ってくると思うと正直、嬉しく思う」
お父様の言葉で先日のハイテンションの理由が解けた。先日、お父様は帰宅するとお母様に花束のプレゼントを渡したりしていて、やたらと上機嫌だったのだ。実の娘の意識が戻るのだからそれは嬉しいに違いない。代わりに私は元の世界へと戻ってしまうわけだけど。一緒に過ごした時間は家族として過ごしたからちょっと複雑な気分になった。
「気になっていたことがあるのですが、私は魔法がない異世界から来たのになぜ、魔法を使うことができたのでしょうか?」
「ああそれは、セイリーンが身体の中にあらかじめ魔力を残しておいたからだ。自分の中に魔力があるのを感じなかったかい?後は、私が毎朝、魔力回復のためのポーションをお茶に入れていたよ」
確かに最初この世界に来た頃、スワロウ様から私の身体の中に魔力が宿っていると言われたことがある。
それにしても、お父様がシレッと重要なことを言った方が気になった。あのふんわりと甘いお茶はポーションが入っていたなんて......!私が知らないだけで色々と管理されていたようだ。
「そんなことが......お父様にはすっかり騙されました」
「学生時代は王と私は演劇部だったんだ」
お父様が演劇部?お父様の演技力が高すぎて全く気付かなかった。というか、王様も演劇部だったのか。
「後は......私の息子達だな。色々と動き回って話が大きくなる前に情報を共有することにする。今日中には真相を話してサポートに入らせるつもりだ」
王子達はどんな反応をするだろうか。私は異世界から来ていて直に元の世界に戻るなんて想像していないだろう。.......そういえば、戻る時は私は何か準備しておくことがあるのだろうか。
「元に戻る時はどのような段取りになるのでしょうか?」
「セイラ、キミはこちらの世界に来る時に"老婆”を見ただろう?」
「はい。おばあさんにウィンクされて気付いたらこちらの世界にいました」
「その老婆は、実体が伴わない幻だ。術のスイッチと言えば分かりやすいだろうか。戻る時は再び老婆が現れて同じようなことが起こる。ちなみに、老婆の姿は大昔の大魔法使いをモデルにしているんだ」
「老婆は大魔法使いのモデルで術のスイッチの役割......」
あの老婆がスイッチの役割を担う幻だったとは......。もしやあれはセイリーンが化けた姿かもしれないとうっすら思っていた私としては、事実はもっと複雑であったことにめまいを感じた。
数時間に及ぶ会議を終えると、王の書斎から3人で退出した。お父様はセイリーンの様子を毎日チェックしているらしく、確認してから帰宅するとのことで先に2人で戻るように言われた。
「兄妹として仲良く帰るのだぞ?」
"兄妹”を強調するあたり、心配されているようだ。正直、今はそれどころではないのだが......きっとスワロウ様も。馬車寄せまでスワロウ様と2人無言で歩く。馬車の前まで来ると、いつも通り手をスワロウ様が差し伸べてくれた。馬車の中に入ると一息つく。
「......驚きましたね。想像をはるかに超えていました」
「ああ。国家規模の大事に巻き込まれていたわけだ」
「私が相談したことでスワロウ様も巻き込んでしまいましたね......」
「セイラのことを言ったんだよ」
「私?」
「セイラは好きでこの世界に来たんじゃないだろ」
「......確かにそうでしたが、スワロウ様と出会えた奇跡も起こりましたよ」
「前向きだな」
「スワロウ様は後悔していますか?」
「そんなわけない。さっきも言ったが、真実を知っても芽生えた気持ちは変わらない」
スワロウ様が私の手をとって握りしめる。こんな状況でも好きといってくれるスワロウ様は潔くてカッコイイ。こんな決断ができる人、なかなかいないだろう。好きになって間違いなかった。
「今を楽しもう」
「スワロウ様も前向きですね」
「起きたことはその時点で対応していくしかないだろう?」
「それ、私の今後の信条にしようかな」
「素直でいい子だな」
誰の目線も気にならない馬車の中は2人の空間。王子達の影の目を気にして向かい合わせには座ってはいるけれど、手は握り合ったままにして帰宅したのだった。
王様はポジティブで積極的(やや強引)です。さすが両王子のパパです。
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