手のひらで転がされていた私達
私達は驚きのあまりお父様を穴が空くほど見つめた。
「父上は、オレ達が調べていることを感づいていたのですか?」
「ふむ。どこから話せばいいのかな。このことは、当事者みたいなものだからな」
「当事者?セイリーンではなくお父様がしたことだったのですか?」
私達の質問に動じる様子もなくお父様は優雅に足を組んで背筋を伸ばしている。いつも屋敷で見るお父様はリラックスしてソファにもたれて座っていることが多いが、今は目つきも鋭くなり、別人みたいだ。いや、別人なのは私だけど。
「父上、どういうことなのでしょうか?」
「まずは説明する前に、セイリーンの中にいる君、今までセイリーンとして生活してくれてありがとう。まだ、しばらくはその姿でいることになるが、私は君がセイリーンとして生活してくれたことに感謝をしている。君は理想的な娘だった」
「......」
今までのんびり平和な様子だったお父様の変わりように私はついていけなかった。驚きすぎて言葉も出てこない。
「スワロウはいつからセイリーンが別人だと気付いた?」
「......つい先日です。ルバートからのメモで気付きました。父上は最初から全てを知っていたのですね?なぜこのようなことをしたのです?それに何故気付かぬフリを?」
「やはりルバートのメモだな。これは極秘だったからお前には話さなかった。妻ももちろん知らない。いずれセイリーンが別人だと気付かれるかもしれないとは思っていた。何故かについては一言では言えない」
「極秘というのは?」
「そのままの意味だ。お前達が国境の街に行くと言った時点で、ルバートのメモを見て動いたのだろうと思った。だが、まだお前達は真実には辿り着けない。お前達が考えるよりも話は壮大だからだ」
「壮大......?」
理解ができない私は言葉に出てきた単語を繰り返すことしかできない。
「明日、君は学園には行かず私とスワロウと共に王城へ連れて行く。知りたいことをそこで聞くことができるだろう」
「王城ということは......」
スワロウ様も察したようだ。
「もう分かるな?極秘で王城、となればこの件には王が関わっているということだ」
「......!」
(王様が関わっているなんて......)
私達が思っていたよりも話はお父様の言う通り壮大だった。セイリーンの興味本位による実験かと思ったら、王様が関わっていたとは......。
「あと、一番気がかりだと思われることについて伝えておこう。君は元の世界にもう少ししたら戻れるから安心するといい」
「セイラは元の世界に戻れるのですか?」
「君はセイラというのか。セイリーンと名前が似ているな......。こちらからあちらの世界に戻れることは既に証明されている」
「では、あちらの世界にいるはずのセイリーンはどうなるのです?」
「それについても明日、王城に行けば明らかになる。その前に1つ、大事なことを確認しておきたいことがある」
「なんでしょうか?」
「王子達はセイラをいたく気に入っていたから、影を付けているのだろう?どこまで両殿下は勘付いているのだ?」
「まだ、気付かれてはいないでしょう。ですが、急にルバートに接触しようとしたことについては疑問を抱いている様子です。婚約を速やかに解消する了解を得るためだとセイラが説明したそうですが、ほかにも理由があると思っている様子です」
「そうか。王子達が動く前に対策が必要だな。王に報告せねばならんな」
両殿下にも私が別人だと知られることになるのかと思うと、彼等の驚きや戸惑いが少し怖い気がした。騙されたと、冷たく突き放されるかもしれない。
「......父上。父上にオレからお伝えしておかねばならないことがあります」
「なんだ?」
スワロウ様が私の目を見つめてうなずく。......まさか私達のことを話すつもりだろうか?私が元の世界に戻れると分かった時点で、スワロウ様に話すメリットは全く無いだろう。止めようとして私はスワロウ様の洋服を掴みかけた。
「オレはセイラを愛しています」
「何と言った......?」
「旅の最中にお互いの気持ちを確かめ合いました」
「......確かめ合っただと?何かしたのか?」
「気持ちを確認してくちづけを交わしました」
「......この馬鹿者!!」
お父様の大きな声でビクッとしてしまった。異世界者の私と息子が恋に落ちるとはお父様も想定はしていなかったのだろう。大事な息子をたぶらかしたと思われても仕方ない......。
「両殿下も知っているということだな?何てことをしてくれた!」
「セイラが元に戻れると知っても芽生えた気持ちに変わりはありません。セイラの近くで共に過ごす時間を許していただきたいのです」
「バカを言うな。今後、2人きりで過ごすのは禁止する!」
「父上!」
「なぜ私が禁止するか分かるか?セイラが異世界者だからじゃない。セイリーンの将来に関わるからだ!」
「確かにセイリーンにとっては許しがたいことでしょう......」
「そうではない!王の命でセイリーンも動いているということは、秘密を共有しているということだ。秘密を知っているセイリーンは、王の手元に置かれなければならない。言い方を変えれば、それ以外に生きる道がないということだ。今のところ王は、いずれアンダンティーノ殿下の妃にしようと考えてらっしゃる」
「セイリーンがアンダンティーノ殿下の妃に......」
「王族の一員になることで初めてセイリーンの命は保証されるんだ。だから、お前がセイリーンの身体に触れることは絶対に許されない」
セイリーンが王の密命で動いていたなんて......。将来は王室に自分を捧げる覚悟を決めて協力したのだろうか?今まで、セイリーンは魔法マニアで興味あることに打ち込んできただけなのかと思っていた......。
「あの、セイリーンは納得して従ったのでしょうか?」
「セイラが責任を感じることはないよ。セイリーンは分かっていて己の希望を実現したんだ。詳しくは明日、王から聞くといい。先に部屋に戻っていてくれ。私はまだスワロウと少し話がある」
己の希望を実現...?もう何が何だか分からず、私はお父様の言われるまま茫然として部屋に戻ったのだった。
◆◆◆
父とスワロウが残った部屋では会話が続いていた。
「セイラのことは諦めろよ」
「簡単に気持ちを変えることはできませんが......努力はします。セイリーンを死なすわけにはいきませんから......何故、父上はセイラと旅に出るのを許したのですか?」
「許すもなにも私が妻と出掛ける予定があるのに突然計画して出掛けてしまったじゃないか。ほぼ、事後報告みたいなものだった」
「申し訳ありません。真実を知りたいと早計な判断をしてしまい......」
「......何となくお前がセイラに好意を抱いているのは気付いていたよ。お前達が旅に出るのを強制的に止めなかったのは、お前に女性を愛する幸せを知って欲しかったせいもある。まさか、思い切ったことをするとは思わなかったがな。私が甘かったようだ」
スワロウは顔を赤くしてうつむいた。
「両殿下はお前達の様子を見て怒ったのではないか?門前まで来たのだろう?」
「それが、アンダンティーノ殿下はオレとセイラが一緒に過ごす時間が長いから好きだと勘違いしているだけだと言われたようで、心が折れた様子はありません」
「アンダンティーノ殿下のポジティブ思考に救われたな。もう触れるなよ」
「分かりました......」
スワロウは深く深呼吸をすると、セイラへの気持ちを整理していかねばならないのかと絶望したのだった。
裏ではとんでもない事態になってました。スワロウ&セイラはビックリたまげてます。同時に悲しい気持ちもあり、気分はジェットコースターです。
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※投稿は毎日朝7時です。引き続きご高覧頂けるとウレシイです。




