気持ちが通じて〈スワロウ視点〉
「スワロウ様が好きです」
セイラの気持ちを聞くことができた時、オレの心の中は喜びでいっぱいになった。同じように自分を想ってくれていたんだと思うと、心が温かく幸福感に包まれるのを感じた。
あの、王子達ではなくオレを選んでくれたのだと思うと、なお一層嬉しかった。王子達がセイラに関心を抱いてくれたからこそ、自分もセイラに対しての気持ちを自覚することができたとも言える。だが、今ではそんなことはどうでも良かった。
気持ちが通じるということがこんなにも幸せを感じることだとは知らなかった。自分の中に誰かに愛しい者を取られたくない、手元に置いておきたいという独占欲が沸き起こるなんて思わなかった。
セイラとお互いに見つめ合うと、彼女の瞳も恋する乙女の目でオレを見ていた。頬を撫でればもっと触れたくなった。くちびるを親指でなぞるとセイラの反応が可愛らしくて居ても立っても居られなくなり、口づけてしまった。
くちびるは柔らかくて何度も口づけをしたくなったが、自制がきかなくなりそうで止めた。理性を強制的に働かせて言葉を絞り出した。
「......そろそろ、宿に戻って明日のために休もう」
「…うん」
「おや?急に甘えん坊モードかな?」
自分のヨコシマな気持ちをごまかすように、茶化してセイラに言うと、セイラはなんだか腑に落ちない表情をした。何かマズイことを言っただろうか。子ども扱いしたのが良くなかったか?
「甘えちゃいけないのですか?」
可愛い返事に胸を鷲づかみされた。甘えたかったのか。
いつものしっかりとしたセイラが甘えてくれるのは嬉しい。オレはそれだけで幸せな気持ちで広場から宿に向かって歩きだした。だが、横を歩くセイラを見ると、なぜかうつむいている。どうしたのだろうと思っていると、衝撃的な言葉がセイラから発された。
「......宿に戻ったら、自分の部屋で寝るのですよね?」
「そ、そうだが?」
「その、眠るだけならば同じ部屋で寝ても問題ないんじゃないのかなって」
「だめだ!絶対に!」
「そんなに強く言わなくても…」
「怒っているわけじゃないんだ。ただ分かって欲しい…」
オレは思わずうろたえた。
(なんてことを言うんだ、セイラ!好きな人と常にそばにいたいのはオレもそうだ。だが、朝まで同じ部屋で過ごすなんて、あり得ないだろう。セイラは分っていない)
思わず強く言ってしまったのでセイラは驚いていたが、オレもセイラの認識が意外にオープンで驚いてしまった。セイラの世界では、気持ちが通じたらいつも一緒に過ごすのが当たり前なのだろうか?婚約をしていなくても…?その、何もしなかったらセーフなのか?
困惑しながらもセイラの手を握り宿まで歩く。正直頭が混乱して真っ白になっていたので、気付くと部屋の前まで無言で歩いて来てしまった。
気持ちを落ち着けてセイラに向き直ると、“おやすみ”と額にキスをした。せめてものオレの想う気持ちをこめて。
「明日は、早めに屋敷に戻ろう。明後日からはまた学園があるだろう。オレも本の内容を調べなくてはならないからな」
「はい…」
「元気がないな?」
オレは間違ったことをしたり言ったりしただろうか?セイラの様子が何か変だ。
「いいえ、気を引き締めなくちゃと思っただけです」
セイラは悲しそうだ。誤解が無いようにオレの気持ちを伝えねばと思う。
「…セイラ。もし、意に沿わない行動をオレがしていたらすまない。だけど、大事に思うからこそ、セイラが望むように問題を解決したいと思っている」
「分かっています。私が子どもなだけです」
「セイラ…オレもそんなできた男じゃないよ。だけど、カッコつけさせてくれ」
王子達のように上手くは言えないが、せめて気持ちだけでも伝わって欲しいと、セイラを抱きしめた。
「おやすみなさい」
部屋にセイラが入ったのを見届けると隣の自分の部屋に入った。オレも恋愛経験が豊富なわけではないから正直、何が正しくて何が間違っているのか分からない。だが、ここでセイラの提案通り、同じ部屋で朝まで過ごすのは意に沿わない取り返しのつかないことをしてしまいそうで受け入れられなかった。
「すまない、セイラ。オレは全然、大人じゃないんだ」
お互いの気持ちが通じただけで奇跡みたいな幸せを手に入れられたと思う。純粋に一緒にいたいというセイラの気持ち以上に、もっとどうにかしたいと思ってしまうオレは罪深い。
(考え出したら眠れそうもない…。今のこの時間を大切に過ごすことに決めたのに)
気持ちを切り替えて明日のために準備をすることにした。手紙が無事に明日にもルバートに届けば、1〜2週間のうちには彼には会えるだろう。
彼に会うことは、セイラが元の世界に戻るためであり、セイリーンをこちらの世界に戻すためにすることだ。セイリーンに聞きたいことはたくさんある。なぜ、このようなことをしたのか。考えても分からない。最近はオレを避けていた。
戻って来たセイリーンとしっかりと対話をしなくてはならないと感じたのだった。
動揺しまくるスワロウです。
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※投稿は毎日朝7時です。引き続きご高覧頂けるとウレシイです。




