国境の街に到着
ケーキまで食べて満腹になって馬車に乗る。馬車酔いしないか心配だ。
「とても美味しいランチで最高でした。だけど、たくさん食べ過ぎて馬車酔いしないように休憩しながら進めてもらってもいいでしょうか?到着が遅くなるかもしれず申し訳ないのですが」
「そんなかしこまらないでくれ。無理する必要はない。景色を楽しみながら行こう」
優しいスワロウ様は、私の体調を気にしてくれて何度か休憩を挟みつつ進めてくれた。馬車を乗り降りする度に手を貸してくれるのはもちろん、寒くはないか、過ごしにくくはないかなど、細かく気遣ってくれる。
別人と分かってから2人だけでの馬車旅はどうなるかと思ったが、ゆっくりと馬車旅を進めたのもあり、すっかり2人で過ごすのも慣れてしまった。
「もうすぐ国境近くの街に着くな」
「すみません、もう夕暮れになってしまいましたね」
「気にすることは無い。宿を予約してあるから荷物を置きに行こう」
「あの...部屋はスワロウ様と別ですよね?」
「それは当然だ。本当の妹だとしても部屋は別々だよ」
「そ、そうですよね。何かすみません。変なことを聞いて」
「いや...」
荷物を運んでくれているスワロウ様の顔が少し赤い気がした。変なことを聞いてしまったからだろう。私はこちらの常識が分からないので、思い切って聞いてしまった。まあ、同室ではなくて安心したけれど。さすがに同室だったら色々と困る。
宿に荷物を運び、ワンピースなどをハンガーにかけてシワを伸ばすと、窓から見える街の様子が気になった。国境沿いの街は意外にも栄えていて、隣国の分化も融合したメルヘンチックな雰囲気になっている。運河には小舟も見えて運河クルーズなんかも楽しめそうだ。
扉をノックする音がして扉を開けると、スワロウ様が身軽な服装に着替えて立っていた。
「宿の受付で隣国に勤める者を紹介してもらえないか聞いてみようと思う。ルバートは隣国のハンガルという街に滞在しているから、この町からならば馬車を使えば1時間半くらいで着くだろう。早ければ明日には手紙を渡せる」
「すぐに頼めそうな方を見つけられると良いですね」
「ああ。オレ達は仕事や学園があるからルバートが帰国する前に王都に戻らねばならないが、手紙を託せる者がすぐに見つかれば半日くらい観光できる余裕があるかもしれないな」
「観光!先ほど窓から街の様子を見ていたらステキでしたよ。気になる小舟も見かけましたし」
さっそくウキウキして宿の受付で隣国に勤める人を訪ねると、宿のシェフが食材の仕入れに明朝、隣国に買い出しに行くと言うではないか。呼んできてもらうと、30代ほどの信頼できそうな人物であったので心付けと共に手紙を託した。
早々に目的が片付いてしまったので、街をブラブラしてみることになった。街散策は王都以外に行ったことが無いのでワクワクする。側にはスワロウ様もいるし安心して街を歩けるのも嬉しい。
この街の名物だというドーム状の焼き菓子を1つ買ってスワロウ様とシェアしてみたり、気になっていた小舟を使った運河クルーズを楽しんだりした。
運河クルーズでは、家の窓からつるされたカラフルな花々がとても美しくて、もう少し暖かい時期ならば色々な花が咲いていてもっと素晴らしい眺めが堪能できただろうなと思った。運河に面したカフェテラスなども雰囲気があってとてもステキだ。
街歩きを楽しんでいるといつの間にかすっかり日が西に傾いていた。見晴らしが評判になっている街の高台までやって来ると、高台からは建物に明りが灯り始めた街並みが見渡せる。とてもロマンチックな光景だ。
今日は朝から1日中スワロウ様とずっと過ごしてきて最初こそ緊張していたものの、気付いたらリラックスしている自分がいて旅自体を楽しんでいた。この町に来てからは街散策もして、まるでデートみたいな時間の過ごし方をしている。
「とても美しい光景だ」
「そうですね」
「この世界の眺めはセイラの世界の眺めと比べてどうかな?」
「どちらの世界の眺めもキレイですよ。私の世界は場所にもよりますけど」
「美しいものはどこで見ても変わらないということだな」
「そういうことですね」
「オレはこの旅を手紙を届ける目的だけではなく楽しんでもいるよ。セイラは?」
「私も同じです。こちらの世界に来てからは街にあまり出る余裕もありませんでしたし、常に不安でしたから。でも、今はスワロウ様が事情を知って協力してもらえているし、とても安心しているんです。他のことを見る余裕も出てきた感じです」
「少しでもセイラの力になれているのならば嬉しい。セイリーンも大変な思いをしているかもしれないと思うと居たたまれない気持ちではあるが、セイラとの出会いは決して意味が無かったとは思えないんだ」
「出会った意味ですか?」
「ああ。セイラと出会ったのはある意味、"運命”なのかなと...」
スワロウ様の言葉の意味を測りかねて黙ってしまう。
「見た目はセイリーンでも、オレはセイラでしかないと思っているよ」
私をセイラとしてしっかりと認識してくれているのは嬉しい。拒否するでもなく、私を受け入れてくれている。もし、逆の立場だったらスワロウ様と同じように感じられるだろうか。
仮に弟の中身が別人であったら、完全なる別人のように見ることができるのだろうか。本当の姉弟で生まれた時から知っているのだから、正直難しい気がする。スワロウ様とセイリーンは本当の兄妹ではないからイマイチ感覚が分からないが。
「......そろそろ宿に戻ろうか。夕飯を食べよう」
私が黙ったままだったからか、スワロウ様は話を切り替えた。
何も返事をしなかった私は、何だか悪いことをしてしまったような気がしたのだった。
ロマンチックな雰囲気で思わず心の内をセイラに話すスワロウ。セイラが黙ってしまったので、内心凹んでいます。
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