国境の街へ出発
~再アナウンスです~
すでに第五章に入っていますが、五章から話は大きく動いていきます...どうか一緒に見守って下さいませ
明朝、夜が明けてすぐに馬車に乗って国境近くの街へと出発した。
出発前にスワロウ様が馬車を引く馬に魔法を唱えていたので何かと問うと、目的地まで速く無事に着くための加護の魔法だという。そんな便利な魔法があるなんてスゴイ。
こちらの世界に来て魔法について色々と学んだ気はするが、生活に役立つ魔法もたくさんあってとてもじゃないけど学びきれない。科学が発達していない分、魔法が進化しているから魔法の役割はかなり重要と言える。
そんな世界で、お父様やスワロウ様は国で重要なポジションに就いているのだから、彼等はかなりのエリートと言えるだろう。家族として誇らしい。一緒に過ごす間にすっかり第2の家族だと思えていた。
「今日は、途中の街で昼に休憩してから一気に目的地に向かう予定だ。馬車に乗る時間も長い。寝そべってくつろいでいても構わない。オレと2人の時はかしこまらなくていいから」
「お気遣いは嬉しいですけど、馬車の中で寝そべるのはちょっと。スワロウ様の前でそこまでリラックスできませんよ」
「つい、男目線で考えてしまってすまない。ならば、セイラの世界のことでも聞かせてくれないか?」
「いいですよ。魔法が無い世界だということを話しましたよね。無いついでに言えば、身分制度も無いんです。努力すれば好きな職業に就くこともできるんですよ。好きなことを探すのが難しいって人も多いんですけどね」
初めて私の世界のことを聞くスワロウ様の目は輝いていてまるで少年のようだ。
「職業を選べるなんてすごいな。セイラは将来、何になろうと考えていたんだ?」
「何になりたいというよりも、お金に困らないために就職することしか考えていなかったですね。将来的に子供にお金をかけられるレベルの家庭をつくりたいってことが夢かな」
ついつい現実的な夢を語ってしまった。もう少し乙女な夢の方が良かったかもしれない。
「セイラは家庭を築きたいのか?」
「ゆくゆくはですね。私の世界では結婚はここの世界よりも遅いんです。女性も社会で働くのが当たり前の世界なので。私は子供が好きだから30歳くらいで産みたいかな...」
「30歳で出産か...ここの世界よりもだいぶ遅いんだな…ちなみにオレも子供が好きだよ。養子に入る前、妹がいたんだ。まだ小さくてあまり話らしい話はできなかったが、いつも守りたいって思っていた」
「スワロウ様はいいパパになりそうですね」
「そう言ってもらえると嬉しいな。特にセイラには」
”特にセイラには”?異世界から来た人間に褒められて嬉しいということか?それとも、私という人間を認めて言ってくれているのか。どちらにせよ、嬉しい。
しばらく馬車の中で私の世界のことをあれこれと話しているうちに、お昼休憩をする予定だった宿場町に到着した。馬車の中は車よりも広さがあり、揺れ対策もそれなりにされているようだけど、同じ姿勢はやはり疲れる。馬車から出て伸びをすると、スワロウ様も横で伸びをしていた。慣れている人も疲れるのね。
「オムレツとベーコンを挟んだサンドウィッチを出す店があるらしい。ケーキもあるそうだ」
「ランチのお店を事前に調べたんですか?」
「もちろん。“宿場町グルメ”なんて本も売られているしな」
「そんな本が出ているんですね、私の世界とそう変わりませんね」
2分も歩くと、目当てのお店が見つかった。ホワイトの看板になぜかネコのシルエットが描かれている。お店に入りメニューを開くと、どうやらネコ型のパンケーキやケーキが有名らしい。オムレツとベーコンのサンドウィッチに食後のケーキまでしっかりと頂くことにした。
食事が終わりケーキとお茶が運ばれてくる。私はチョコレートケーキでスワロウ様はチーズケーキだ。スワロウ様のオーダーした濃厚チーズケーキが美味しそう。実はオーダーする時にチョコレートケーキかチーズケーキか迷ったのだ。
「チーズケーキも食べてみないか?」
私の視線を感じたのかスワロウ様が気を使ってくれる。私、そんなに物欲しそうに見ていただろうか?ハズカシイ...。
「いえいえ!気になさらず」
「滅多に来られる店のケーキじゃないぞ?こちらも食べておいて損はないだろ?」
(そういった気遣いだったのね、焦ったわ...)
「ありがとうございます。では1口だけ」
私が自分のフォークを手に持つと、なぜか“待った”がかかった。不思議に思っていると、スワロウ様が自分のフォークにケーキをとってアーンしてくれようとしているではないか!
「セイラのフォークを使ったら、チョコレートと味が混ざってしまうだろ?オレのフォークはまだ使っていないから味が混ざらない。はい、口をもう少し開けてくれ」
スワロウ様の説明はよく分ったが、ハズカシイ。スワロウ様は天然なんだろうか。
そうこうしているうちに、スワロウ様の右手が伸びてきて口にケーキを入れられた。濃厚でまろやかな甘みのチーズが口全体に広がる。
「う〜ん美味しい!では、スワロウ様もチョコレートケーキを食べてみて下さい」
今度はスワロウ様がハズカシイ思いをする番とばかりに私がアーンしようとして、ハタと気が付いた。
(そうだ、新しいフォークが必要だわ!)
新しいフォークをもらおうと店員さんを呼ぼうとすると、スワロウ様に止められた。
「オレは、セイラが使っていたフォークで構わない。むしろOKだ。味も混ざらないし」
「え?使いかけですよ?」
「気にならない。口に入れてくれるか?」
やや強引にスワロウ様が言うので、私はその言葉の通り自分のフォークでケーキを取ってアーンしてあげた。スワロウ様は照れもせずモグモグしている。え、照れないの?
「美味しいな」
「あの…スワロウ様は、セイリーンともこのような食べ方をしていたのですか?」
「まさか。セイラだからだ。妹とはしないな」
どういう意味?と疑問が湧く。私がセイリーンとは別人だと分かってから、ちょっとお兄様の様子がいつもと違うような気もするが、昨日の今日だ。スワロウ様も私とどう接すればいいか悩んでいるのかもしれない。それともホントに天然さんなのか。
私はスワロウ様との新しい関係を探りつつ目的地に向かうことにしたのだった。
スワロウは2人旅でひそかにテンションが上がっています。王子達もいない今は積極的です。
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※投稿は毎日朝7時です。引き続きご高覧頂けるとウレシイです。




