夜、国境の街にて1
宿に戻ると、先ほどからスワロウ様は受付の人と話している。夕食をとるために当然、宿の食堂へ行くのかと思っていたけれど、違うのだろうか。
スワロウ様が戻ってくると、私に1つの提案をしてくれた。受付の人の話では、運河クルーズから見えたテラス席のあるレストランが新鮮な野菜や魚料理を出すそうでおすすめなのだとか。せっかくならば、ぜひ行ってみないかという話だった。
「この街は豊かな食材を楽しめるのが魅力で、街中にはマルシェも数多くあるそうだ。川べりのレストランは雰囲気も良くていつも予約で埋まっているらしい。確認してもらったら本日はたまたま空いていたんだがどうする?」
「ぜひ行ってみましょう!あのステキなレストランで食事できるなんて楽しみです!」
長々と受付の人と話していると思ったら、おすすめのレストランについて聞いていてくれたなんて。さすがもう社会に出て働いている男性だなと思った。もしかしたら、こちらの世界の男性は、そんな気遣いもスムーズにできてしまうのかもしれないけど。
ふとあの王子2人なら当たり前のようにできてしまう気もした。特にアンダンティーノ殿下なら絶対、美味しい店をリサーチしてくれるに違いない。
”元の世界の男子もこういうことに気を配れるようになったら絶対モテるのに”と、勝手ながら思う。とりあえず、元の世界に戻ったら弟に女子にモテるコツとしてぜひ教えてあげよう。
それにしても、温暖で日が長い国境の街といえども夜は少し冷えた。ショールを羽織ってから再び街に出ると、メインの観光シーズンではないのもあり昼間に比べて人通りが少なくなっていた。
しばらく歩いて街の中央広場にある噴水前まで来ると、噴水まわりのベンチには愛を語らうカップルがチラホラいて昼とは違う雰囲気になっている。すっかり恋人達のための時間に変わってしまったようだ。何となく気マズくなり、向かっているレストランについての話をし始めた。
「先ほど運河クルーズで見かけたレストラン、ライトアップされてキレイそうですね。お料理も美味しいとのことですし、屋敷に帰ったらお父様達にも国境の街の旅をオススメできそう…」
私が少し早口で話しかけていると、スワロウ様が私の左手をそっと握ってきたので驚いた。突然、何事かと思いスワロウ様を見上げると、ちょっと真剣な顔をしている。
「...離れて歩いていると、危険そうだ。治安は良いとは聞いていたが、外国人が多いこの街の夜はそれなりに警戒した方がいい。あちらからセイラを見ているヤツがいる。念のために手をつないで歩こうか」
確かに街灯の影からイカツイ男性が私の方をジトっとした目で見ている。怖くなってスワロウ様につながれた手をギュッと握った。すると、スワロウ様も優しく握り返してくれる。それだけなのに安心した。
無事、目的の運河沿いのレストランに辿り着き中に入ると、レンガ作りの家庭的な雰囲気でくつろげる空間になっていた。美味しい料理をじっくりと堪能できそうだ。せっかくなので運河沿いのテラス席に座る。座席のそばには温かい空気が出る魔法道具らしきものが置かれていて寒くはない。
「海鮮や牛肉を使ったオーブン料理がおすすめだそうだ。頼んでみよう」
料理が来る間、スワロウ様は赤ワインを飲んでいた。私はお酒を飲めないので白ブドウのジュースを頂いている。ちょっと気分的にはワインを楽しんでいるつもりだ。
「手紙、スムーズに届けられそうで良かったな」
「ホントに。日頃の行いが良かったんですね」
「ヒゴロノオコナイ?セイラの世界の言い回しか?」
「そうです。普段から良い行動をしていると良いことが起きる、みたいな意味です」
「セイラとオレがそうだということか?」
「そうなりますね。先ほども言いましたけど、スワロウ様はいつも私を助けて下さいますからね。行いが良いに決まっています」
「これからこそが肝心だがな。セイリーンもどうしていることか」
「そうですね…もし、もしですけど、私とセイリーンが元に戻れなくてこのまま私がこちらの世界にいることになったらと、考えてしまうことがあるんです。そうなったら私は覚悟できるのかなと。セイリーンもだけど」
「...どうなるか分からないものを悩んでも仕方ない。だが、オレはいざとなったらセイラを生涯支えていくつもりでいるよ」
「生涯支えていくって?どういうことです?」
「オレの妻に迎える」
「え......私を妻に?」
「セイリーンとオレは結婚できる立場なのだから問題はない」
「それでは、スワロウ様の人生が犠牲になってしまうではないですか」
「セイラ、オレの気持ちが伝わっていないようだ。さっき、言っただろ?出会いは運命だったのではと」
さっきの言葉はそういう意味で言ったのかと今さらながら理解した。私を1人の女性として見てくれていたんだ...。
スワロウ様を見ると、手に持っていた赤ワインのグラスはとうに空だった。すでに3杯は飲んでいた気がする。もしかして、アルコールがスワロウ様を饒舌にさせている?酔っての戯言?
「酔ってます?」
「酔ってないよ。酒の勢いは借りているけど。真剣だ」
マジなスワロウ様の言葉に、私は飲んでもいないアルコールを飲んでいるような、全身が熱くなるのを感じたのだった。
とうとうスワロウ告白しました。セイラは驚きつつもちょっと安心してしまうのです。
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