気付いた気持ち〈スワロウ視点〉
ようやく王都に戻ってきた。
帰りの馬車の中はそれぞれ疲れが出たのか行きほど賑やかになり過ぎず、穏やかな会話をしながら帰ってきた。
王子達と別れてホッとする。王子二人と妹とのデートに付いて行った自分はとんでもない妹バカに見えただろう。
セイリーンとそれぞれの王子が交流を図っている間、各王子からはセイリーンへの想いを熱心に語られた。特に、アンダンティーノ殿下からは暗に協力するように圧をかけられて困った。どうも本気でセイリーンを手に入れたいらしい。
王子達がこれほど惹きつけられるのが不思議だと思っていたが、実のところ自分でもセイリーンの魅力には気付いている。
セイリーンは忘れているが、自分とセイリーンは........セイリーンとは本当の兄妹ではない。
セイリーンが3歳の時に遠縁であった自分が養子に入ったのだ。本当の兄妹のように育てられ幼い頃は仲良く育ったが、ルバートという魔法オタクの友達ができてからあまり自分と接する時間が無くなってしまった。時折、勉強など見ていたがセイリーンが学園に入ってからはどんどん会話も減っていく一方だった。
セイリーンは元々、魔法以外のことにあまり関心を持たない子だった。最近は、魔法以外のことを話したことがなかったかもしれない。
そんな最中、突然、セイリーンが倒れたのだ。父に抱えられ自室に運ばれていくセイリーンを見た時、何が起きたのか分からなかった。
父によれば、実践室で倒れていたらしい。しばらく熱に浮かされていた姿を見た時は、心底心配した。もっと会話をしていれば妹の異変に気付いたかもしれないという気持ちがあった。幼い頃から本当の兄弟のように育ったのだ。兄としての責任を感じたのは言うまでもない。
セイリーンが目覚めると記憶が無いことでかなり戸惑っていたが、以前より明るくなり、疑問に思うことがあればすぐに聞いてくる素直さを持った少女に変わっていた。
常に不安そうで、必死で、目を離せなかった。兄であるオレを常に頼りにしてくれる姿にオレの中にあった庇護欲に火がついたのもある。“オレが守ってやるから”最初はそんな気持ちだったと思う。
だが、王子達が接近するようになると、自分の中でセイリーンへの認識が少しずつ変わってきたのを感じた。変わらずオレを頼りにしてくれるセイリーンから、“大切な存在”だと言われれば心から嬉しく思い、自分から離れていくのがイヤだと感じるようになったのだ。
(これは、もしからしたら...)
ほんのりと自分の気持を自覚しつつあったが、今まで兄として接してきた男が好意を持っていると知ったらセイリーンはどう思うだろうかと思うと、恐ろしくて自分の気持ちを隠した。
完全にセイリーンへの気持ちを認識したのは、プレスト殿下がセイリーンを抱きしめてキスしたと聞いた時だ。
ズキリと胸に痛みが走った。
伯爵令嬢の立場では王子達には強く逆らえない。
“オレがセイリーンを守らねば!”
はっきりとした思いが自分の中で芽生えた瞬間だった。そんな時だ。ルバートから荷物が届き、衝撃的なメモを見てしまったのは。
(セイリーンの中身は別人かもしれない...)
メモを読んで確信に近い思いを抱いた。セイリーンがどうなってしまったのかを心配すると共に、中身が別人であるならば、兄妹のようにして育った彼女を急に意識してしまってもおかしくなかったのではと思いが胸の中で渦巻いた。
スキルが突然備わったのも中身が別人であれば不思議なことではない。父上も母上も多少の違和感はあるはずなのに、コミュニケーションを積極的にとるようになった娘との団らんが楽しくて仕方がないようで疑う様子が見られない。
いずれにしても、真実を確かめるために本人に真意を確かめねばならないとは思っている。
どんな魔法を研究していたのかを知る必要があるが、今のセイリーンは何も知らない様子。どうすべきかと思いを巡らしていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「お兄様、少し良いですか?」
「ああ、どうかしたか?」
微笑んで部屋に入ってきたセイリーンは無邪気に話しかけてくる。
「もう片付けは済んだのか?」
「はい、と言ってもオランジェがテキパキと片付けてくれたので、片づけてくれている間、お風呂に入らせてもらいました。サッパリしていい気持ち!お兄様はまだ上着も着たままではないですか。窮屈でしょう?ほら脱いじゃいましょう!」
オレの上着を脱がそうとセイリーンがジャケットの前に手を伸ばす。慌ててセイリーンの手を止めた。普通は兄妹でもそんなことはしないだろう。やはり、この世界の常識を知らないように感じる。
「セイリーン、改めて話したいことがある。疲れているかもしれないが、夕食後に話せないか?」
「改めてって言われると何だか気になりますね。分かりました。では、後で」
セイリーンが出ていくと、部屋の中には甘い香りが残った。
セイリーンが別人だと判明したらオレはどうすればいいのだろう。彼女はオレをどう思っているのか気になる。やはり兄としてだけだろうか?義理の兄妹だと知ったら、男として見てもらえるのだろうか?......分からない。
いずれにせよ、真実を解き明かさねばならない。事情を知っていると思われるルバートには急ぎ手紙を書かねばならないだろう。
夕飯後の話し合いに向けて、気持ちを整理するべく1人で湯舟に浸かる。そういえば、この家には禁書の魔法本が代々受け継がれてきていると聞いたことがある。確か、書斎の金庫にしまわれているはずだ。鍵はおそらくあの場所に......。
やるべきことが一気に出てきたオレは深くタメ息をついたのだった。
スワロウは本当の兄ではないと予想していた方はいらっしゃるでしょうか?薄々感じていた方、確信していた方、大正解です!
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