気になる禁止魔法と両殿下の気遣い
パチパチと拍手が鳴り響いた。
またしても人を惹きつけたようだ。扉の方にはアンダンティーノ殿下とお兄様が立っている。
「プレストもなかなかやるね。セイリーンがこんなに楽しそうに弾くならボクも連弾したかったなあ」
「ハハ、お前はここまで弾けないだろう?オレの隠れた特技どうだ?」
「プレスト様!隠れた特技なんて言われてはもったいないです!」
つい、ピアノオタクの血が騒いで大きな声で会話に割り込んでしまった。いきなり大きな声を出した私にプレスト殿下達が振り返った。でも、関係ない。素晴らしいものはスバラシイんだもの!ピアノの美しい音色、リズムに私の心は高まったままだった。
「とっても楽しかったです!失礼ですけれど、プレスト様がピアノを弾けるとは思っていなかったので余計に楽しくて!」
「セイリーン!プレスト殿下に失礼なことを言うものではない。落ち着いてくれ」
「たしかに失礼だな。だが、オレも楽しかったから問題ない!」
「セイリーンには言葉よりもピアノだったかな…」
アンダンティーノ殿下のボヤキ声が聞こえるが、今はピアノを楽しめる良い相手を見つけてしまった喜びが大きくて聞き流してしまう。
この時、私は王子達と距離を取らなくてはならないことを完全に忘れてしまっていて、後でお兄様に叱られたのだが...。
「とりあえずランチにしよう」
アンダンティーノ殿下の言葉でランチ休憩をとることになった。食堂に向かう途中、プレスト殿下と私はまだピアノの話で盛り上がって話していたが、急にプレスト殿下が私の耳元に小声で囁いてきた。
「クロスして弾いた時、オレの腕がお前の胸に腕が当たったままで悪かったな」
「え、そんなことありましたか?夢中で気付いていませんでしたよ…」
(胸に当たっていた?全然気付いていなかったけど...)
「気づいてなかったなら言わない方が良かったかな。ワザとじゃないがイヤだったかもしれないと思ったから言ったが」
「それはご丁寧にどうも...」
「やわらかくて、なかなか良かった」
「え?.......イ、イヤらしいですね!!」
「何を勘違いしているんだ?オレはお前の柔軟性のある演奏のことを言ってんだぞ」
ニヤニヤした顔で言うプレスト殿下は絶対に私をからかっている。アンダンティーノ殿下は、私達の様子を見てタメ息をついており、お兄様は眉をひそめている。私達がすっかり仲良くなったように見えるのだろう。そんなつもりはないのだけど。
バタバタしつつも美味しいランチを頂いて皆が落ち着いた後、腹ごなしに散歩をすることになった。今はアンダンティーノ殿下と並んで歩いている。冷えないように、しっかりと防寒して湖のほとりを歩く。
「本当にピアノ好きなんだね」
「はい、先ほどは取り乱してすみませんでした。ピアノには目がないものですから」
「…魔法もでしょ?」
「そ、そうですね」
魔法はやらなきゃいけないことで、やりたいことではないのでつい答えがブレてしまう。
「あんなに素直な笑顔が見られるならばボクも連弾すれば良かったな。プレストほどは弾けないけどね」
「アンダンティーノ殿下とのセッションも楽しそうですね。機会があればぜひセッションしましょう。アンダンティーノ殿下のお得意なことはやはり魔法なのでしょうか?」
「そうだね。一般的な魔法だけでなく失われた古い魔法にも興味があるし、禁じられている召喚系魔法についても今一度、研究したいと思っているよ」
「き、禁じられている魔法ですか?」
「興味ある?魔法を学ぶ者にとっては誰でも気になるよね」
「...禁じられると気になるところはありますね」
アンダンティーノ殿下が私の知りたい分野にまで興味を抱いているとは思わなかった。すっかりプレスト殿下とピアノタイムを楽しんでしまったけど、アンダンティーノ殿下は魔法に詳しい方だ。禁止魔法について聞ける貴重な機会を逃したくない。
「なぜ、禁じられるようになったか分かるかい?」
「危険な要素があるからですよね?」
「どういう意味での危険か分かる?」
「危険な存在を呼び出したりしてしまう恐れがあるからですか?」
「危険なのはそういう意味じゃないんだ。昔は盛んに行われていたし、呼び出す魔法自体は問題じゃないんだ。呼び出した後が問題なんだ。違う世界の者が来れば秩序が乱れる危険性がある。それに、呼び出す人物の人生を変えてしまうという問題も発生するしね」
確かに。呼び出す相手によってはこちらの世界に影響を与えてしまうかも。それにしても、召喚魔法はもう以前から定着してきた魔法であったようだ。今は禁止されているけれど。
だから、召喚ではなく、意識だけが転移する魔法をセイリーンが開発したのだろうか?
「あの、今は召喚魔法に変わる魔法が開発されていたりするのでしょうか?」
「キミも気になっているようだね。ぜひ話したいところなんだけど、王族ではないキミには話せないこともあるんだ」
「そ、そうですよね」
「気になるなら、ぜひボクに嫁いでくればいい。あれ、脅してるみたいで卑怯だね。あんまりプレストとの連弾が楽しそうだったからイジワル言いたくなっちゃったみたいだ」
「...その、怒ってらっしゃいます?」
「怒ってなんかないよ。言ったでしょ。君が知りたいと思うこと、やりたいことの支えになりたいって」
「2人の時は、プレストと話す時みたいに素直に言葉を述べて欲しい」
「ありがとうございます...ちなみに、プレスト殿下と軽口を叩いてしまうのは、プレスト殿下がアンダンティーノ殿下ほど、私に気を使ってくださらないからなので」
「アイツの話し方はぶっきらぼうだからね。セイリーンはイヤじゃない?」
「いいえ、お言葉がキツイと感じる時もありますけれど」
「ボクは、イヤな思いをさせるのは主義じゃない。誰でも傷つくのはイヤなものだろう?」
「アンダンティーノ殿下は、お優しい方ですからね」
「そう思ってくれるなら、いつでもボクを頼ってほしい。力になるよ」
「いつもありがとうございます」
アンダンティーノ殿下は私に魔力があることで強く関心を抱いているのは間違いないけれど、私自身についても見てくれようとしているみたいだ。
穏やかな散歩時間を終えて別荘に戻ると、プレスト殿下とは冷える外ではなく、屋敷内の各部屋を巡ることになった。
「この別荘は、オレ達が小さい頃に夏になると遊びに来ていたんだ。湖で泳いだりしてな。子供の頃は気ままだったな」
「そうなのですね。両殿下のプライベートな部分を私に聞かせて頂けるなんて嬉しいです」
「なんだ、改まって。…お前は、過去についてはまだ思い出せないんだよな」
「ええ、記憶を取り戻すためにも魔法に力を入れたいと思っていて」
「不安だろう?」
「それはもちろん…」
プレスト殿下は私に手を伸ばしかけたが、途中でグっと握ると手を引っ込めた。
「いつでもオレを頼れ。お前の味方だから」
兄弟して同じことを言うところが、やはり兄弟なのかもしれない。両王子が私に強い関心を持つのはセイリーンの元々の魔力の高さや美しい容姿によるものがかなり大きいが、自分の意見を率直に言われるのも魅力に感じているようだ。
もし、私が元の世界に無事に戻れたら、相手が求めていることに対してもっと自分の意見をきちんと言えるようにしようと思ったのだった。
プレストはセイリーンの胸が意外とあるのに驚いて、内心ドキドキしながらピアノを弾いてました⁄(⁄ ⁄-⁄ω⁄-⁄ ⁄)⁄
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