プレストとの対話タイムはセッションで
ふと視線を人の気配を感じて扉の方を見ると、プレスト殿下とお兄様が立っていた。
ピアノの音色に惹かれたらしい。ひとまず適当なところで演奏を終えると、拍手をもらった。
「とても素晴らしい演奏だね。ボク達もピアノに接する機会はあったのだけど、ここまでは弾けないよ。本当にキミは素晴らしい才能があるね」
「ピアノの音色は私の心を慰めてくれます。私の中では欠かせない大切なものなんです」
「また今度じっくり聴かせてくれる?」
「よろこんで!」
嬉しくて意気込んで答えたら、どこかの居酒屋みたい?になってしまった。
「アンダンティーノ!次はオレとセイリーンの時間だぞ」
「分かってる」
去り際、アンダンティーノが私にウィンクしてくる。ウィンクが似合ってしまうアンダンティーノ殿下がキラキラして見える。全くイヤミがない。お兄様は隣の部屋に戻るようだ。
プレスト殿下が私の前に来ると、ピアノに手を触れた。プレスト殿下もピアノに興味があるのだろうか。先ほどのアンダンティーノ殿下の言葉からすると、ピアノの教養がありそうだけど。
「さて、アンダンティーノから散々また口説かれただろうが、心は奪われていないか?」
「奪われそうな破壊力をお持ちですよね、アンダンティーノ殿下は」
「む…オレはアンダンティーノとは違って、お前を喜ばせるような甘い言葉ばかり吐けない。だが、オレは常にお前が頼れる存在でありたいと思っている」
「頼れる存在ですか…?」
今までプレスト殿下と過ごした時間を振り返ると、頼れる存在というよりも振り回された感が強いのだが。突拍子もない行動をするプレスト殿下という人の全体をまだ掴みきれていない。
大胆なのに繊細なところがあって放っておけないタイプの方ではある。芯は優しくて面倒見の良いところもあると感じるが、強引なところが玉にキズ...。
「なんで疑問系なんだ?」
「プレスト様と一緒に過ごした時間を思い返してみたら、振り回されていることの方が多い気がしたものですから」
「何てこと言う。ダンス指導はだいぶ時間をかけて付き合っただろう!」
「そうでしたね、すみません」
ムキになるプレスト殿下が何となく可愛らしく思えて笑ってしまった。プレスト殿下は不満そうだけど。
「なぜ、オレだと軽口を叩いてくるんだ?明らかにアンダンティーノと話す時とは違う」
「申し訳ありません。プレスト様といると、思わず思ったことをそのままお伝えしてしまうのですよね」
「......自然でいられるということか?取り繕った言葉で無いのはいいが、なんか腑に落ちないな。まあ、オレもお前以外の女の前ではこんなに素は出さないしな」
「本当ですか?以前、イザベラ様に言った冷たい言葉は素であったような気がしますが?」
「その後、きちんとした態度でおもてなししただろ」
「おもてなし…」
「色々と思うところもあるが、お前がオレに気を許せているのならいい」
「…驚かせるような突然のアクションとはかしないでくださいね?」
やんわりと先日のハグ&キスについて注意を促す。しっかりとこの場で伝えておけば今後は大丈夫だろう。意味はきちんと伝わっていると思うが。
「…あー、すまない。お前の気持ちも考えずに突っ走って。イヤだったか?」
「…ビックリしましたよ。とても恥ずかしかったです」
「恥ずかしいってのは、イヤということか?」
「イヤというか...殿下は卑怯でしたよ」
「それはイヤなのか、イイのかどちらだ?」
この方は、イヤかイイの2択しかないのだろうか。もう脳筋!成績はトップクラスだと聞いているのに。
「卑怯とお伝えしている時点で、イヤということになるのではありませんか?」
「そうか...」
大きなプレスト殿下がシュンとすると、ギャップでとてもカワイイと思えてしまう。本人が聞いたら怒りそうだけど。
「気を付けてくださいね?」
「ああ。これからはお前の同意を得てからにする」
「そういう意味じゃないです…」
プレスト殿下の頭の中には、私がいいと言えばOKとインプットされたようだ。なぜ…うまく伝わらない?
「それにしても、お前のピアノ演奏はいいな。オレもピアノは得意な方なんだが、良かったら一緒に弾いてみないか?」
「え、プレスト様と一緒に?喜んで!」
これ以上プレスト殿下と頭が痛くなりそうな会話を続けるよりもピアノを弾く方が正直、楽しめそうだ。それにしてもプレスト殿下がピアノを弾けるなんて意外すぎる。剣ダコができている大きな手を見ると、繊細に鍵盤を押せるのかしらと思うが。
「“ノニア行進曲”は弾けるか?」
「はい、指導して頂いているピアノの先生から、名曲だから弾けた方が良いと習いました」
「なら、お前が上でオレが下のパート演奏な」
「はい!」
ワクワクしてくる。ノニア行進曲は英雄のために作られた勇ましい曲だ。プレスト殿下が弾きこなせるなんて!連弾したら絶対に盛り上がる曲だ。ピアノの椅子はベンチタイプなので、2人で座って弾くことができる。1つの椅子に座るのだから座る距離はかなり近くなるが、ピアノ演奏のためなら気にならない。
出だしのタイミングをお互いの目線で確認して演奏に入る。元気で勇ましいメロディが部屋の中に鳴り響いた。プレスト殿下のリズミカルな演奏が心地よい。
普段はオレ様なのに、ピアノの表現が繊細でビッックリしてしまった。プレスト殿下こそギフトを授けられているのではないかと感じるほどとてもお上手だ。緩急を付けながら私の演奏にバッチリ合わせてくれる。
感嘆しながらしばらくして弾いていると、ちょっとしたイタズラをしてみたくなった。
(転調してみたらついてこれるかしら?...いっちょ試してみよう)
曲の雰囲気を変えてみると、難なくプレスト殿下も合わせてくるのでたまげた。曲もエモくバッチリ決まっていく。しっかり緩急つけながら合わせてくれるし、プレスト殿下とのセッションが楽しすぎた。
テンション上がりながら弾いていると突然、プレスト殿下の右手が私の左手を越えてクロスしてきた。クロスしたまま演奏を続けていく。”こんな演奏までできるなんてスゴイ!”と私は演奏しながらプレスト殿下をリスペクトする気持ちを抱いた。
そして、呼吸を合わせながら曲の終盤へと向かって演奏をしていく。
演奏を終えた私達は、自然と笑顔でハイタッチを決めたのだった。
プレストの母もピアノ名手という裏設定があります。ピアノ弾けると楽しいですよねー聴くだけでも癒されます(*´꒳`*)
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