別荘に到着
一通り学園の話や魔法のことなどの話をし終わると、馬車の中は静かになった。
目の前の王子達を見ると、それぞれの近くの窓の外を眺めている。なんだか2人共じっと何かを考えているようだ。王子達がそれぞれ思考にふけっているので、私とお兄様も静かにしている。
私も窓の外を眺めていると、朝の光に照らされた人家が白く輝いてキレイに見えた。元の世界のように電気というものはなく、魔法を使った道具を使用することが多いこの世界では、魔道具が普及してない地域はまだのどかな暮らしをしている者が多いようだ。
便利な道具が無ければ人々の暮らしははるかに大変になる。便利な暮らしに慣れた自分としては魔道具が普及していない地域に住む彼らの過ごす生活の大変さを想像しがたい。
(恵まれた人とそうではない人がいるのはどうにかできないのかな......)
目の前に座るアンダンティーノは将来的に王になる立場だ。彼のやることが国を変えることになる。私などに気を取られていていいのだろうかと思う。
「セイリーン、何か面白い物でも見つけたか?」
プレスト殿下に急に声を掛けられた。さっき思っていたことを話してみても良いものだろうか。
「人々の暮らしを見るのは興味深いですね」
「興味深い?」
「それぞれの場所に人々の暮らしがあるのを感じます」
「そうだな」
「それを見てどう感じたかな?」
アンダンティーノ殿下も会話に加わってきた。言っていいのかな?
「......魔道具が普及している場所とそうではない場所では生活のレベルがかなり違うように感じます」
ドキドキしたが正直に答えると、横に座っているお兄様が慌てる様子がした。
「そうなんだ。ボク達は恵まれた環境にいるから普段は恵まれていることさえ気付かない。だが、彼らがいればこそ国が成り立っているんだよね」
「そうですね......魔道具が普及していない地域も、便利に生活ができるような環境になればいいですね」
「セイリーン、出過ぎた意見は言うべきではない」
「スワロウ、なぜ止めるんだ。彼女は正しいよ。セイリーンは国母に向いているんじゃない?」
「おい、いきなり国母とは言い過ぎだろう。オレもセイリーンの意見には賛同するが」
「セイリーンがゆくゆくボクを支えてくれたら、もっと国は豊かにできるだろうね」
「押し付けるなよ。セイリーンのやりたいことも考えてやれよな」
「お!お前にしては的を得たことを言うじゃないか」
「両殿下、落ち着いて下さい。セイリーンを評価していただけるのは嬉しいことですが、まだまだセイリーンは子供ですよ」
「そうやってスワロウがいつまでもセイリーンをお子様扱いするから、デートについてくることになるんじゃないか。セイリーンはもう立派なレディだよ」
「立派かはどうか分からんが、心配になるのは分かるなオレは。こいつは意外と抜けてるところもあるしな?」
(え、私が抜けている?)
腑に落ちないなと思って"私はしっかりしている方だと思いますが?”と言ってみたが、プレスト殿下は微笑んでいるだけ。アンダンティーノ殿下は不満顔だ。
「何を分かったように言うのお前は。ちょっとダンスのレッスンをしてあげたからって全て知ったような言い方は良くないよ」
「あの......ケンカはなさらないでくださいね?」
「うるさくしたら気になるよね。では、セイリーンのためにもここは公平に別荘に着いたらセイリーンと2人で話せる時間をそれぞれつくらない?スワロウもそれぐらいなら問題ないよね?」
「姿が見える場所であれば構いません」
「じゃあ、順番を決めておこうか」
「オレは最後でいいよ」
「では、ボクがセイリーンと最初に話すよ」
「ああ、それでいい」
そんなやりとりをしていると郊外の王室が所有している別荘に到着した。王都の宮廷にある庭園とは違って素朴な庭園でリラックスできる雰囲気だ。別荘内も宮廷ほど広すぎないので、ちょっとした隠れ家感覚で過ごせそう。屋敷内は手入れがされており、執事やメイドもきちんと待機していた。
ランチまでの間にお茶を頂くことにし、さっそくアンダンティーノ殿下と2人で話すことになった。陽射しが気持ち良く入るサンルームで向かい合って座る。
「体調はどう?馬車に揺られているのも疲れるよね?」
「いえいえ、アンダンティーノ殿下も同じように馬車に乗られていたのです。殿下こそお疲れではないですか?」
「ボクは公務で移動も多いし、慣れているから大丈夫」
「セイリーンは大丈夫なの?」
「はい、快適な乗り心地でしたので」
「それは良かった。後でここの屋敷も案内するね」
「楽しそうですね」
お茶を一口飲むと、身体が温まるのを感じる。いくら暖かい日であるといってもやはり季節は冬なのだ。暖炉の火が暖かい。
「......さっき、馬車から見た人々の暮らしについて話してくれたよね。キミと落ち着いて真面目な話もしてみたかったから興味深かったよ。なかなかほかの令嬢とはこういう話にはならなくてね」
「そうなのですか?魔法は生活に欠かせないものですし、発展させることで人々の暮らしも変わりますよね」
「そのように考えられる令嬢は案外少ないものなんだよ。狭い世界しか知らないから」
(私は、ほかの世界から来たよそ者だからそれぐらいの考えに至っても当然なのだけど......)
「セイリーンが考える世の中の理想ってどんな世界?」
「難しい質問ですね......安心して暮らせる社会の仕組みでしょうか」
本当は身分なんてくくりなく公平に暮らせる世界と言いたいところだが、そんなことは言えるわけがない。
「ボクも同意見だ。だから、魔力に優れた者を国では重用するし、魔法産業にも力を入れている。セイリーンも力になってくれたら嬉しいのだけど」
「私がですか?人より魔法量が多いくらいで発明ができるわけではありませんよ」
「果たしてそうかな?キミはなぜ、ギフトを突然授けられたのだろうね?」
「それは......分かりません。ギフトと言ってもピアノがより弾けるようになっただけですし」
「選ばれた者しか与えられない能力だよ」
「......」
アンダンティーノ殿下の期待に、これは大変なことになったと感じたのだった。
アンダンティーノはセイリーンがいかに自分にとって特別なのかを力説したいがために"ギフト”を持ち出しています......
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